心理学の歴史

みてみて実感! 心理学史 -第14回-

サトウタツヤ
立命館大学文学部教授。

歴史研究の基本は捨てないこと。本格的な資料保存のために皆さんの協力をお願いします。

アーカイブズとは何か?

前号(心理学ワールド38号)の当コーナーの隣には,立教大学の長田佳久先生たちによる「古典的実験機器の保存及び情報収集について」という記事がありました。 長田先生たちのグループによって始められた心理学機器の保存に関する初めての本格的な取り組みです。私もその末席に連なっています。

心理学史の研究にとって何よりも大事なのは,史資料の保存です。多くの場合は手紙や論文・著書の一次稿,日記などがそれに当たりますが,心理学などの実験科学の場合には,実験機器も重要な資料となることは論をまちません。そして保存した史資料を収蔵し整理し活用できるようにするのがアーカイブズという組織なのです。アーカイブズは史資料館と訳されることが多いですが,単に建物のことをさすのではなく,システム全体のことをさす言葉です。

現在,心理学に関するアーカイブズは世界中にいくつか存在します(表1)。

このうち最も歴史が古いのがアクロン大学のアーカイブズです。ポップルストーン夫妻(Popplestone,J.A.& McPherson, M.W.)によって世界に先駆けて1965年に開設されたこのアーカイブズは,初期のころには維持・拡大のための苦労が絶えなかったようですが,その存在が知れ渡った現在では心理学者本人や遺族からの寄付が安定的に得られるようになってきているようです。このアーカイブズに保存されている史資料についてはポップルストーンとマクファーソン(Popplestone & McPherson, 1994)によってその一端を知ることができます。ポップルストーン教授が定年で引退したあとは二代目のべーカー准教授(Baker, D. B.)がディレクターに就任し,ウェブサイト公開なども精力的に展開されるようになってきました(図1)。オンライン検索も可能です。

パッサウ大学のアーカイブズはまだ知られていませんが,ヴェルトハイマー(Wertheimer, M.)がファイ現象の研究に使った機器(図2)であるとか,精神医学者・クレペリン(Kraepelin, E.)の実験室で用いられた各種心理学実験機器などがあります。

日本では独自の収集整理機能をもった心理学史アーカイブズはまだありませんから,今後が期待されます(ただし,オンラインではありますが京都大学文学部心理学古典機器博物館が利用可能です)。

文献

Popplestone, J. A., & McPherson, M. W.(1994). An illustrated history of American psychology. Akron, Ohio : University of Akron Press.
(ポップルストーン, J. A.・マクファーソン, M. W. 大山 正(監訳)(2001). 写真で読むアメリカ心理学のあゆみ 新曜社)

関連ウェブサイト

  • The Archives of the History of American Psychology(アクロン大学心理学史資料館)
    http://www3.uakron.edu/ahap/
  • Museum of the Institute for the History of Psychology(パッサウ大学心理学博物館)
    http://mysite.verizon.net/donrae19/passau.htm
  • 京都大学文学部心理学古典機器博物館
    http://face.psy.bun.kyoto-u. ac.jp/museum/

心理学ワールド第39号掲載
(2007年10月15日刊行)