心理学の歴史

みてみて実感! 心理学史 -第24回-

サトウタツヤ
立命館大学文学部教授。

ヴント(Wundt, W. M.)の回に,ほかの心理学者のお墓の写真を募集したところ,星野命先生からオルポートのお墓に行ったという話をいただきました。ほかの心理学者のお墓の写真も募集してます!

ゴードン・オルポートとその墓石

ゴードン・オルポート(Allport, G. W.)は1897年アメリカ・インディアナ州で生まれました。3人の兄がおり2番目の兄フロイド・オルポート(Allport, F. H.)も心理学者になっています。ハーバード大学の学部生時代にはミュンスターバーグ(Munsterberg, H.)に学び,大学院に進学,第一次大戦にも応召されました。学位取得後,第一次世界大戦後のドイツへ留学。ベルリン大学で,老大家となっていたシュトゥンプ(Stumpf, C.),当時,新進気鋭の若手としてゲシュタルト心理学を唱えていたウェルトハイマー(Wertheimer, M.),ケーラー(Kohler, W.)たちに学びました。ハンブルグ大学ではシュテルン(Stern, W.)やウェルナー(Werner, H.)の影響も受けました。1924年冬からハーバード大学で教職につき,アメリカで初めてのパーソナリティに関する講義を行うなど,積極的に活躍していくことになります。

オルポートの人生や業績について書こうとすると,いったい何から書けばいいのか,何を書かずにすませればいいのか,という絶望的な気持ちにさせられます。いくつか紹介してみると……。性格研究を統合化し,性格の定義づけを行ったこと,特に特性論の提唱者だということが第1に挙げられます。流言の研究における「R~I×A」の提唱(流言の流布はその情報の重要さと曖昧さの積に比例する)も行いました。また『ジェニーからの手紙』における個人的文書を活用した人間像の描写をめざしたことは質的研究にとって大きな貢献をなしたといえるでしょう。さらに,『社会心理学ハンドブック』の第一章「現代社会心理学の歴史的背景」における社会心理学の成立年を1908年においたことは,現代の心理学史にとっても重要な見解として受け継がれています。

そして,彼が亡くなったのは1967年10月9日,肺ガンでした。遺体はマサチューセッツ州ケンブリッジのマウント・オーバーン(Mount Auburn)墓地に埋葬されました。この墓地はハーバード大学歴代の総長をはじめ多くの大学関係者の墓があるといい,心理学者では1990年に亡くなったスキナー(Skinner, B. F.)もこの墓地に眠っています。

星野命先生(国際基督教大学名誉教授)は,1976年9月に墓地を訪れました。ゴードン・オルポートの長男夫人に連絡をとり同行していただいたとのことです。軽装でも汗の噴き出る気候の中,北端に近い墓石に到着。その墓石は「さほど目立たない高さの淡いピンクの珪岩をあまり削らず自然石の趣きを残して,ただ一語ALLPORTと記した直方体の金属板をはめ込んだもの……中略……その簡素にして暖かく,謙遜にして個性的な墓標とたたずまいには,思わず頭を垂れて遺徳を偲び心打たれるものがあった」。星野先生による「オルポート博士の墓所を訪ねて」は『心理学における人間』に所収されています。

文献

オルポート, G. W. 依田 新・星野命・宮本美沙子(訳)(1977).心理学における人間 培風館
(Allport, G. W.(1968). The person in psychology: Selected essays by Gordon W. Allport. Boston, MA: Beacon Press.)

関連サイト

マウント・オーバーン墓地
http://www.mountauburn.org/

心理学ワールド第49号掲載
(2010年4月15日刊行)