心理学 Q & A

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Q9.「ウソ発見」は本当にウソを発見しているのでしょうか?

「ウソ発見」というものがときどき新聞やテレビなどマスコミで取り上げられたり,最近ではコマーシャルでウソ発見器が使われたりしています。また,実際にウソ発見器を用いて芸能人相手に針の振れを見せる番組を見たことがあるのですが,警察で行われているという「ウソ発見」も,このようなものなのでしょうか?

A.廣田昭久

いわゆるウソ発見は,警察の実務ではポリグラフ検査と呼んでおり,検査で用いる装置のことをポリグラフ装置と称しています。もともとポリグラフとは複数の生理反応を同時に記録する装置のことをさしますが,検査でも皮膚電気活動や呼吸,心拍などを同時に測定するので,ポリグラフ検査と呼ばれているのです。

ところでご質問に対する回答ですが,単刀直入にいうと,ポリグラフ検査はウソをついているかどうかを調べる検査ではありません。検査するのは,真犯人しか知らない,犯罪に関する事実を「知っているかどうか」なのです。

「女性がネクタイで首を絞められて殺害された」という事件を例にして説明してみましょう。マスコミは「ネクタイ」が殺害に使用されたことは報道していないとします。この事件に関して,ポリグラフ検査を実施することになった場合,真犯人しか知らない情報,逆にいえば,もしその人がそれを知っているならば,その人が真犯人である可能性が高い情報である,使用された凶器について質問を行います。たとえば「ベルト」「ストッキング」「ネクタイ」「スカーフ」「電気コード」を質問項目として,「首を絞めるのに使ったものは~ですか」と質問し,生理反応を記録します。質問項目は,凶器のネクタイと同様に首を絞めるのに使用することができるもので構成されます。真犯人であれば使われた凶器がネクタイであることを知っているので,この質問に対して生理反応が集中して生じます。しかし,無実の人であれば実際の凶器がわからないので,どの質問に対しても反応はランダムに発生することになります。この反応の違いが,その人が犯罪事実について知っているか否かを鑑別する手がかりになります。

さて,この生理反応は,ウソをついたから起こるというわけではありません。通常の検査では,各質問に対してすべて「いいえ」と返答してもらうため,真犯人はネクタイにも「いいえ」と返答します。この意味では確かに「ウソ」をついているのですが,すべての質問に「はい」と答えても,また,すべてに何も返答しなくても,やはりネクタイにほかの質問とは異なる反応が生起することが明らかになっています。つまり,生理反応は,質問に対して「ウソをつくから」生じるのではなく,それが実際の犯行に関連した内容であると認識するから生じると考えられます。このようなことから,現在はポリグラフ検査は「ウソを発見する」ものではなく,一種の記憶の検査であるとされています。

文献

高澤則美・廣田昭久(2004).ポリグラフ検査 高取健彦(編)捜査のための法科学 第一部(法生物学・法心理学・文書鑑定)令文社 pp.171-189.

ひろた あきひさ
科学警察研究所法科学第四部情報科学第一研究室長。
専門は,心理生理学。
主な著書は,『現代心理学25章』(八千代出版)など。

心理学ワールド第30号掲載
(2005年7月15日刊行)