心理学 Q & A

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Q31.飲酒運転をする人が後を絶たないのはなぜ?

飲酒運転の危険性と悪質性・悲劇性が大きく取り上げられ,罰則も強化されているのに,飲酒運転をする人がいるのはなぜでしょうか。

A.鈴木由紀生

飲酒運転をする人には,遵法精神が希薄で,取り締まりに遭わず事故さえ起こさなければよいと考えてする人(タイプ1),飲酒して気が変わってする人(タイプ2),アルコール依存症またはそれに近く,飲酒と運転が切り離せないでする人(タイプ3)がいます。

タイプ1は,飲酒運転の危険性が本当にはわかっていないのです。

飲酒運転の危険性は,アルコールの運転にかかわる心身機能に及ぼす影響,交通事故統計,飲酒運転事故事例,酒運転実験の結果から示すことができます。

アルコールの影響については,丸山欣哉氏らが飲酒運転時の行動観察から次のようにまとめています:注意の範囲が狭くなる,速度感が狂う,動作が乱れる,動作優先になる,記憶が狂う,ふだんの欠点があらわになる,自己規制がゆるむ,ミスに対する自覚がなくなる。事故統計については,飲酒運転をすれば,100%事故を起こすわけではないので,自分だけは大丈夫という自己別在の心理が働いてしまいます。事故事例については2006年8月の福岡での事故のようにたくさんの悲惨な事例があり,当座は抑止効果が働くのですが,喉元過ぎれば熱さ忘れるで,いつのまにか抑止力が低下してしまいます。飲酒運転実験は,免許試験場のコースやシミュレーターなどを使って,飲酒前と飲酒後の運転行動を比較するのですが,同じことを2度やるので,飲酒後のほうが良くなるはずですが,ほとんどが飲酒前より成績が悪くなります。飲酒運転による心身機能の低下が実感できます。

タイプ2の飲酒運転の危険性がわかっていても飲酒運転をしてしまうのは,アルコールが抑制(マヒ)剤だからです。

ロータッカー(Rothacker, E.)は人格の成層説を提示していますが,アルコールは一番後に形成された自我の層の働きからマヒさせていきます。知性や教養をもち意志統御ができる大人がアルコールが入ると統御が効かなくなります。飲酒運転は危険だから今日は車を置いてタクシーで帰ろうと思っていても,飲んでしまうと,考えが変わり,このぐらいなら大丈夫と思って飲酒運転をしてしまうのです。飲んでいる人の判断は信用できません。飲酒運転を防ぐには飲酒している人が車を運転できないようにすることです。

タイプ3は生き方の問題で,重要なことですが,ここでは触れる余裕がありません。

文献

エーリヒ・ロータッカー(著) 北村晴朗(監訳)大久保幸郎・石川信一・針生 亨(訳)(1995).人格の成層論 叢書・ウニベルシタス471 法政大学出版局
(Rothacker, E.(1964).Die schichten der preso¨-nlichkeit. 6. Aufl. Bonn:Bouvier Verlag.)

すずき ゆきお
愛国学園大学人間文化学部教授。
専門は,認知心理学,交通心理学。
主な著書は,『日常生活からの心理学入門』(編著,教育出版),『刺激のない世界』(分担執筆,新曜社)など。

心理学ワールド第43号掲載
(2008年10月15日刊行)