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常務理事会から

これからのイベントのあり方とは

学術担当常務理事は6つの小委員会と協力してさまざまな仕事をしていますが,今回は,講演・出版等企画小委員会と進めている講演会の企画,実施,特にコロナ下でのイベントのオンライン化についてお話をしたいと思います。

日本心理学会が実施している講演会やシンポジウムは,大きく分けて,公開シンポジウム,高校生のための心理学講座,認定心理士の会が実施する講演会やセミナーの3種類があります。公開シンポジウムは,最新の研究成果を広めるため一般向けに開催されているもので,「社会のための心理学シリーズ」「科学としての心理学シリーズ」の2つがあります。2021年度は,「社会のための~」が2テーマ×3回,「科学としての~」が1テーマ×1回実施されました。すべてオンライン実施であり,現在公開中のものもあります。詳細は学会ホームページ(https://psych.or.jp/event)を参照して下さい。ただ,2つのシリーズを設けることにあまり意味がないという考えから,来年度からはシリーズ分けはやめることになりました。決まってから思い出したのは,「社会のための~」は,一般向け=外向けの企画,「科学としての~」は心理学関係者=学会内部向けという意味だったのではなかったかということ。遅かった。

コロナ以前にはこうしたイベントをオンライン実施することは考えもしなかったのですが,昨年度から,新型コロナ感染症のために,否応なくオンライン実施になりました。やってみたらメリットもあり,今後,コロナ問題が収束した後もどういう実施形態がよいのか,議論していく必要があると思います。対面形式でやれば,会場に赴ける方は講師の話を直説聞き,会場の雰囲気に触れることもでき,効果的なものですが,一方,多くのイベントを企画しても,その恩恵を享受できるのは開催地付近の方だけということになります。また,企画,実施の手間や費用に比し,参加者の数が非常に少ないということも起こり得ます。他方,オンライン実施では,すべてのイベントが日本全国で,いや世界中で聴取可能になります。また,事前に録音・録画した素材をいつでも聴取可能な形で置いておく,オンデマンド型配信も可能になります。つまり,空間的,時間的制約を乗り越えた講演会が実施可能になり,聴衆の数もかなり多く見込むことができます。その意味では効果的ですが,直接的なインパクトはなく,講演そのものやイベントとしての効果は限定されます。さらに,終了後,講師と,また参加者間で懇親の場を設けるというようなこともできません。

2年に及ぶコロナ下での経験の蓄積によって,オンライン,対面の両者を組み合わせるような試みも提案されています。ひとつは,オンライン型のイベントに対面型の要素を持ち込む努力。例えば,オンデマンド型の講演とリアルタイムの質疑応答を組み合わせる。加えて,懇親会的な場も設けることも試みられています。講演はオンデマンド型で,ある期間,聴取可能な形にしておいて,質疑応答,ディスカッション,さらには懇親会をある特定の日時に設定すれば,固定された日時での制約を少なくした形で(会場に行き来する時間も要りませんし)効果的な学び,議論の場になるのかもしれません。また,対面型のイベントでも,当日の講演を録音・録画しておき,オンデマンド型で提供する,さらには,一定時間後にオンライン型の質疑,討論の場を提供するという形もみかけるようになりました。

高校生のための心理学講座は,希望を募り,選定された主催大学に近隣他大学と組んで講座を開催していただいていました。各地のさまざまな大学にその地域の特色を発揮していただく,さらには,地元の高校生に大学という場に足を踏み入れる機会を与えるという目的も兼ねて実施してきています。そのため,ローカルに実施するオンラインイベントというのもどうか,中央集権的にネット配信で行うのもどうかと悩みつつ,実際には昨年度から実施せずに来ており,そのかわり,YouTube上に高校生向けのコンテンツを蓄積する努力をしております。

このように,コロナを機に学会のイベントのあり方が制約され,また新たな可能性が浮上して来ていますが,はっきりとした「あるべき姿」は提示しきれない状況にあります。これからのイベントのあり方について,会員のみなさまからのご意見をお寄せいただければ幸いです。

(学術担当常務理事/東京大学名誉教授・人間環境大学教授 佐藤隆夫)

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