刊行物のご案内
心理学研究 第93巻 第5号(2022年12月)
種類 | 原著論文 |
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タイトル | 新型コロナウイルス感染症予防行動と行動基準との関連性――羞恥を媒介した検討―― |
著者 | 薊 理津子 |
要約 | 本研究は,日本人の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)予防行動と行動基準との関連を調べ,これらの間に羞恥が媒介しているか検討した。2020年5月下旬にクラウドソーシングを利用したweb調査が実施され,510名(平均年齢41.42,SD = 10.00,範囲20―81)が調査に参加した。多母集団同時分析の結果,男女ともに,仲間的セケンは3密回避を抑制した。男性では,地域的セケン・他者配慮は3密回避だけでなくマスク・消毒といった予防行動を直接的に促進し,さらに,羞恥を媒介して,これらの予防行動を促進した。一方,女性では地域的セケン・他者配慮はマスク・消毒といった予防行動を直接的に促進したが,行動基準と予防行動との間に羞恥は媒介しなかった。行動基準とCOVID-19予防行動との関連性および,羞恥がこの予防行動に及ぼす影響が議論された。 |
キーワード | 新型コロナウイルス感染症(COVID-19),新型コロナウイルス感染症予防行動,行動基準,羞恥 |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal93-5#20079 |
種類 | 原著論文 |
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タイトル | COVID-19拡大が高校運動部員のストレス反応に及ぼす影響とライフスキルの緩和効果 |
著者 | 山田 弥生子・片上 絵梨子・守屋 麻樹・山口 香・土屋 裕睦 |
要約 | 本研究の目的は(a) COVID-19拡大状況下における高校運動部員の精神健康度の実態把握ならびにCOVID-19拡大に起因するストレッサー認知度,ストレス反応及びライフスキルの属性による違い,(b) ストレッサー認知度とストレス反応との関連及びライフスキルの調整効果を明らかにすることであった。2020年8月から11月に大阪府,兵庫県,三重県の高校に通う生徒を対象とした質問紙調査を実施し,運動部員1348名を主な分析対象とした。その結果,運動部員の精神健康度はCOVID-19拡大状況下において悪化しており,ストレッサー認知度及びストレス反応は男性より女性,下級生より上級生,競技レベル低群より高群の方が有意に高かった。ライフスキルは下級生より上級生,競技レベル低群より高群の方が有意に高かった。また,ストレッサー認知度とストレス反応には有意な正の関連が見られ,ライフスキルはその関連を有意に緩和していた。COVID-19拡大状況下でのストレス対処におけるライフスキルの有用性が示唆された。 |
キーワード | 新型コロナウイルス感染症,K6,学生アスリート,課外活動,スポーツ |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal93-5#20094 |
種類 | 原著論文 |
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タイトル | 単位制高等学校における学校生活満足度の縦断的変化 |
著者 | 藤原 和政・川俣 理恵・粕谷 貴志 |
要約 | 本研究では,単位制高等学校の生徒の学校生活満足度の縦断的変化を検討することを目的とした。調査対象は315名 (男子141名,女子174名)であり,1年次から3年次まで年に1回ずつ,質問紙調査が実施された。潜在成長曲線モデルによる検討の結果,全体的な傾向として,他者からの受容や承認と関連している承認感は年々増加する一方で,いじめや冷やかしの被害と関連している被侵害感は減少傾向にあることが示された。さらに,承認感と被侵害感の変化は連動していることも示された。また,成長混合分布モデルの結果,3つのプロフィールが抽出され,全体的な傾向と同様のプロフィール,承認感には変化は認められず,被侵害感が年々増加するプロフィール,そして,承認感,被侵害感ともに縦断的な変化が認められないプロフィールであった。以上の結果を踏まえ,単位制高等学校における教育的援助の方向性と,今後の展望について議論された。 |
キーワード | 学校生活満足度,潜在成長曲線モデル,成長混合分布モデル,縦断調査,単位制高等学校 |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal93-5#21036 |
種類 | 原著論文 |
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タイトル | 視覚統計学習に基づいた他人種効果の発達的変化 |
著者 | 馬 書悦・金沢 創・山口 真美 |
要約 | 他人種効果とは,他人種顔と比較して自人種顔の認識が優れている現象のことをさす。潜在的に系列順序の統計的規則性を学習する視覚統計学習 (visual statistical learning: VSL) においては,他人種効果はまだ検討されていない。本研究は2つの実験を通じて,視覚統計学習における他人種効果を検討した。実験1では,生後6―8ヵ月児を対象として親近化法を用い,自人種顔と他人種顔におけるVSLを検討した。その結果,先行研究で6ヵ月から他人種効果が生じた乳児は,自人種顔でも他人種顔でも同様のVSLが成立し,他人種効果が生じなかった。実験2では,成人を対象に,自人種顔と他人種顔でVSLを検討し,VSLの他人種効果の般化も含めて検討した。その結果,成人は自人種顔でも他人種顔でも般化できなかったが,VSLにおける他人種効果が生じた。これらの結果から,VSLにおける他人種効果の発達的変化が示された。 |
キーワード | 視覚統計学習,他人種効果,顔認知,乳児 |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal93-5#21037 |
種類 | 研究資料 |
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タイトル | 対人的好奇心尺度の開発――人の感情・秘密・属性に関する好奇心探索―― |
著者 | 西川 一二・雨宮 俊彦・楠見 孝 |
要約 | 本研究は,対人的好奇心尺度の開発を行った。研究1では,対人的好奇心にかかわる56項目を作成し,そこから大学生を対象に予備調査を行い,11項目を選定した。本調査では,11項目の因子構造を確認するため大学生調査(n = 839)と全国web調査(n = 1,500)を実施し,因子分析を行った。その結果,人の「感情」への好奇心,人の「秘密」への好奇心と人の「属性」への好奇心の3因子構造の確認ができ,各下位尺度の信頼性も高かった。研究2では,対人的好奇心尺度の妥当性を確認するため,好奇心5次元尺度と刺激欲求尺度と多次元共感性尺度と心理的well-being尺度を用いた。相関分析の結果,妥当性が確認できた。最後に,対人的好奇心尺度の含意と今後の研究の展望について議論がなされた。 |
キーワード | 好奇心,動機づけ,探索行動,共感性,ウェルビーイング |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal93-5#21208 |
種類 | 研究資料 |
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タイトル | 仕事切り替え困難尺度の開発 |
著者 | 内村 慶士 |
要約 | 私生活の時間も仕事について考えてしまう「仕事切り替え困難」が,ワーク・ライフ・バランスを阻害する一つの要因となっている。しかし,生起要因についての実証的研究が不足しており,効果的な支援方策は明らかにされていない。この背景には,「仕事切り替え困難」を測定する尺度が存在しないことが挙げられる。本研究では,「仕事切り替え困難尺度」を開発することを目的とした。横断的調査を行い,正規雇用者416名のデータを得た。因子分析の結果,「感情想起」(α = .89),「職能悲観」(α = .94),「問題解決」(α = .90)からなる3因子構造が示された。メンタルヘルス不調や,近接する概念である心理的距離,否定的な反復性思考と有意な相関が見られた。近接する概念を統制した場合でも,メンタルヘルス不調との偏相関が残存した。さらに,仕事の負担からメンタルヘルス不調を説明するモデルにおける媒介効果についても仮説を支持する結果が得られた。総じて「仕事切り替え困難尺度」の信頼性と構成概念妥当性を支持する結果が得られたと言える。 |
キーワード | ワーク・ライフ・バランス,仕事切り替え困難,心理的距離,否定的な反復性思考 |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal93-5#20211 |
種類 | 研究資料 |
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タイトル | 子どもの感情に対する親の対他感情制御方略尺度の作成および信頼性・妥当性の検討 |
著者 | 則近 千尋 |
要約 | 本研究では,3―7歳児を子どもに持つ親1200名を対象に調査を行い,子どもの感情に対する親の対他感情制御方略尺度を作成した。この尺度では,子どもの恐れ/不安と怒りという2つのネガティブ感情を,親がどのように制御するのかを測定する。先行研究を参考に,感情場面ごとに,5つの下位尺度(状況選択・状況修正・注意の方向づけ・再評価・表出抑制)を作成した。参加者の半数には,怖がり不安がる子どもに対して各対他感情制御方略をどの程度使用するか回答を求め,もう半分の参加者には怒る子どもに対する対他感情制御方略の使用について回答を求めた。確認的因子分析の結果,仮説通りの5因子モデルが得られ,また十分な内的整合性も示された。さらに,状況修正・再評価と子どもの適応との間には,有意な正の相関が得られた。概ね仮説通りの下位尺度間相関および他概念との関連が得られ,本尺度は十分な信頼性および妥当性を持つことが示された。 |
キーワード | 対他感情制御,感情制御,親,恐れ/不安,怒り |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal93-5#21223 |
種類 | 研究報告 |
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タイトル | 名前の好みは潜在自尊心の指標となりうるか? |
著者 | 中井 彩香・泉 明宏・沼崎 誠 |
要約 | 潜在自尊心を測定する新たな方法として,自分の名前の好みを尋ねるという方法が提唱された。主に西洋の参加者を対象とした先行研究では,名前の好みと,自尊心IATとネームレター課題によって測定された潜在自尊心・自己報告によって測定された顕在自尊心に正の相関が見られることなどが示され,名前の好みの有効性が主張されている。本研究では,日本においても名前の好みが潜在自尊心の指標になりうるかについて検討した。6つの研究において,646名の参加者は自尊心IATの実施とRosenbergの自尊心尺度・名前の好みの回答を行った。メタ分析の結果,名前の好みと,Rosenbergの自尊心尺度との正の相関は見られたが,自尊心IATとの有意な相関は見られなかった。先行研究では潜在自尊心の指標として自尊心IATが多く用いられているが,本研究の結果から少なくとも日本において名前の好みを自尊心IATの代わりとして使用することはできないといえるだろう。 |
キーワード | 顕在自尊心,潜在自尊心,潜在連合テスト,名前の好み |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal93-5#21318 |
種類 | 研究報告 |
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タイトル | 感情・覚醒チェックリスト(EACL)を用いた1ヵ月の心理状態の測定の信頼性・妥当性の検討 |
著者 | 織田 弥生・菊地 賢一 |
要約 | 感情・覚醒チェックリスト(Emotion and Arousal Checklist: EACL)は,「今」と「ここ1週間」の心理状態を測定するために開発された,33項目からなる質問紙である。この質問紙について,「ここ1ヵ月」の心理状態の測定に使用可能かどうかを検討した。研究1では確認的因子分析により,「今」,「ここ1週間」の心理状態を測定した先行研究と同様の9尺度が確認され,α係数により内的整合性が示された。研究2では1週間間隔の測定により,再検査信頼性を確認した。研究3では「ここ1週間」の心理状態を1週間間隔で4回測定し,4回目に「ここ1ヵ月」の心理状態を測定した。「ここ1週間」の4回の測定の平均値と「ここ1ヵ月」の測定の相関から,信頼性が示された。研究4ではストレス度の高い人と低い人で各尺度の差が示され,基準関連妥当性が示された。これらの研究によりEACLを「ここ1ヵ月」の心理状態の測定に用いる際の信頼性と妥当性が示された。 |
キーワード | 感情,覚醒,チェックリスト,過去1ヵ月 |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal93-5#21313 |
種類 | 研究報告 |
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タイトル | 若年・中年・高齢期の母娘における制御焦点の類似性 |
著者 | 田渕 恵 |
要約 | 本研究では,制御焦点傾向の2側面(促進・予防)が,若年・中年・高齢期の母娘間で類似しているかを検討することを目的とした。Promotion/prevention focus scale 邦訳版の短縮版10項目を使用した調査を実施し,77組の祖母(平均年齢77.79 ± 5.61歳),母(平均年齢49.26 ± 4.12歳),孫娘(平均年齢20.17 ± 3.89歳)を分析対象者とした。分析の結果,若年期の娘と母親の間では,促進焦点と予防焦点いずれの類似性も認められたのに対し,中年期以降の娘と母親の間では,予防焦点のみ類似性が認められた。本研究の結果から,喪失やリスクに焦点を当てた加齢変化への適応方略において,娘は母と類似した方法をとる可能性が示された。 |
キーワード | 制御焦点,促進/予防焦点,中・高齢期,親子,母娘 |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal93-5#21328 |