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常務理事会から

新しい世紀を迎えて

「新しい世紀を迎えました」。子どものころ『暮らしの手帖』という雑誌の101号の編集後記にこう記されていて,胸が躍ったことを思い出しながら,雑誌『心理学ワールド』の新しい世紀をお届けします。新しい世紀はどのような世紀になるのか,「予測がつかない」というのが正直な気持ちですが,しかし日本心理学会が心理学研究者とそれを目指す人々,また社会の中で心理学の研究とその成果を受け止めて役立てていきたいとお考えのすべての皆様にとって,少しでも有益で,楽しく,豊かな世界をもたらしていけることを目標に精進していきたい,そう思いながらこの号の編集に携わらせていただきました。

また新しい世紀にふさわしく,表紙のみならず,装丁全体にも統一性を持たせていただくよう,新たにデザインをお願いしました。いかがでしょうか? 今後,記事内容に加え,デザインについてもぜひご意見をお聞かせください。

学会と編集活動を取り巻く環境

前段で思わず「予測がつかない」と本音をこぼしてしまいましたが,2023年4月を迎える今,世界は様々な課題に直面しています。COVID-19パンデミック,異常気象と災害そして環境問題,社会分断化の兆しと「平和と逆行する」動き。これらが「普通の生活」を営む一人一人の暮らしに密接に繋がっていることを思い知らされる毎日が続いています。

心理学が「人間理解の要の学問領域」である以上,これらは無視しえない問題であり,考えるべき課題が山積みになっているといえましょう。同時にそれらは,学会運営活動にも直接的に,例えば物価の大幅上昇の形で押し寄せ,学会活動にも影を落としてきています。

とりわけ編集関連業務では,紙へ印刷・製本をしてお手元にお届けしていることを,どう考え,どのような見通しをもって,いつ意思決定をしていくか,具体的かつ難しい問題を抱えています。

紙 vs. オンライン,あなたはどうお考えですか?

こうした現状の中,日本心理学会が発行する機関学術誌のオンライン化をめぐって議論が活発になってきています。ご存じのように,『心理学研究』誌と“Japanese Psychological Research” 誌のいずれも,完全公開のオンライン版と紙の冊子体を並行して発行しています。この「リッチな体制」をいつまで続けるのか,また紙媒体を廃止するとしたらどのような対策が必要か,考え始めると「単純ではない事々」が次々と出てきます。私自身,認知心理学を背景に,人と外界の人工物(ここでの雑誌)との相互作用が人の認知過程にどのような影響をもたらすかを考えているだけに,一足飛びな大胆な方向転換には少々躊躇いがあります。しかし確かに,世界の潮流はオンライン化に向かっています。個々の読者・利用者に「自由で負担のない使い方」を保証しつつ,より多くの会員(潜在的な会員予備群も含め)にとって,bestでなくともbetterな形とは何なのか,機関誌編集委員会で堅実に議論を重ねていきたいと考えています。会員の皆様からの,建設的なご意見をお待ちしています。

なお,本誌『心理学ワールド』は,学術雑誌とは一味違うミッションを担った存在です。こちらもフルオンライン化の可能性の議論は出ておりますが,学会広報全体と併せての検討が必要なため,少し別に考えていきます。

次の1世紀,4号換算で25年後にどう変わっているのか,まずは(少しの強がりも含めて)「楽しみですね!」と言いながら,皆様との共創の中で幸せな変化を着実に形にしていければと思います。今後ともよろしくお願いいたします。

(編集担当常務理事/筑波大学教授 原田悦子)

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