刊行物のご案内
心理学研究 第94巻 第5号(2023年12月)
種類 | 原著論文 |
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タイトル | 日本人がんサバイバーが働くことの意味を見いだすプロセス |
著者 | 廣田 奈穂美・大塚 泰正 |
要約 | 本研究では,日本人がんサバイバーが,がん告知後のさまざまな心理的苦痛や精神的苦痛と向き合いながら,どのように身体や仕事に適応し,働くことの意味を見いだしていくのか,そのプロセスを明らかにすることを目的とした。就労するがんサバイバー16名に対して半構造化面接を行い,修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)による分析の結果,38の概念と12のサブカテゴリー,3つのカテゴリーを生成した。がんサバイバーが働くことの意味を見いだしていくプロセスは,「自己への問いかけ」,「人生の再起動」,「仕事と人生の一体化」という3つの段階を踏みながら,「がんサバイバー」として生きる大きな覚悟とともに歩み出していく,新たな人生の道程であることが明らかになった。このことは,日本人がんサバイバーが,がん罹患経験を通じて自ら生きることや働くことの意味を求め,それらの意味をひとつひとつ獲得しながら,あらためて自己のライフキャリアを醸成していくプロセスであるといえる。 |
キーワード | がんサバイバー,働くことの意味,人生の意味,キャリア,M-GTA |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal94-5#22017 |
種類 | 原著論文 |
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タイトル | 遠隔連想テストは何を測るか |
著者 | 西田 勇樹・服部 雅史・織田 涼 |
要約 | 本研究は,日本語版遠隔連想テスト(RAT)の洞察課題としての妥当性を検討するために実施された。実験1で参加者は,25題のRATに加え,洞察課題,創造性課題,語彙課題を実施した。参加者の語彙量を統制した分析では,RATの成績は洞察課題とも創造性課題とも相関が認められなかった。続いて,洞察問題に直面したときに思いつきやすい典型的な誤りの抑制に着目した実験2では,RATと認知熟考テスト(CRT)の関連性を検討した。CRTには,多くの解決者が陥る誤答があり,解決者は正解に至るためにそうした誤答を排除しなければならない。参加者の語彙量を統制した分析により,RATの成績とCRTの典型的誤答数の間に負の相関が認められた。本研究は,逆説的ながら,課題間の成績の相関に基づいて洞察課題としての妥当性を検討することの限界を明らかにした。同時に,RATが典型的誤答の抑制機能の強さを測定する課題になりうること,RATの成績が語彙量に強く依存することを示した。 |
キーワード | 洞察問題解決,遠隔連想テスト,認知熟考テスト,創造性 |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal94-5#22024 |
種類 | 原著論文 |
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タイトル | 成功時の誇り・羞恥経験の文化差に対する関係流動性の媒介効果 |
著者 | 前田 友吾・結城 雅樹 |
要約 | 先行研究では,成功場面において,東アジア人は欧米人よりも誇りを感じない一方,羞恥をより強く感じることが明らかにされてきた。本研究は,社会生態学的観点から,これらの文化差を,両者が暮らす社会間の関係流動性の違いと,成功者に対する賞罰信念の違いによって説明することを試みる。関係流動性の違いは,成功者に対する社会からの報酬または罰についての社会的信念の違いを通じて,成功時の感情経験に影響するだろう。以上の仮説を日米比較調査により検討した結果,(a) 成功場面での羞恥は日本人の方がアメリカ人よりも感じやすかった一方で、成功場面での誇りはアメリカ人の方が感じやすかった。(b) 羞恥の文化差は関係流動性と成功者への罰信念によって媒介された。(c) 関係性流動性と成功者への報酬信念が誇りに及ぼす間接効果は予測した方向であったが,有意でなかった。 |
キーワード | 関係流動性,誇り,羞恥,自己意識的感情,文化 |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal94-5#22032 |
種類 | 研究資料 |
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タイトル | 遺族の死後世界観と解剖や臓器提供に対する態度――死後世界観尺度(2人称)を用いた検討―― |
著者 | 白岩 祐子 |
要約 | 研究1では,ウェブ調査(n = 719)を行い,死後世界観尺度(2人称)を開発した。因子分析の結果,尺度は魂との共生,良き他界,生まれ変わり,大きな存在への統合,そして記憶・記録の5因子構造となった。すべての因子が喪失感などと関連していた。研究2では,研究1の参加者を対象に再度ウェブ調査(n = 332)を実施し,尺度の信頼性を検証するとともに,解剖や臓器提供に対する遺族の態度との関連性を検討した。死後世界観のうち,魂との共生は解剖と臓器提供の拒否と,大きな存在への統合は臓器提供の受容と関連することが確認された。日本人による故人の遺体保全の重視は,死後世界に対するイメージと関連していることが議論された。 |
キーワード | 死別,臓器移植,犯罪被害,司法解剖,心身一元論 |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal94-5#22219 |
種類 | 研究資料 |
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タイトル | マインドワンダリングに関する暗黙理論尺度日本語版の作成とその信頼性・妥当性の検討 |
著者 | 服部 陽介・小林 正法・松本 昇・川口 潤 |
要約 | マインドワンダリングの制御の可否に関する信念は,マインドワンダリングに関する暗黙理論と呼ばれ,マインドワンダリングの頻度やマインドワンダリングに対する反応と関連することが示されている。本研究では,マインドワンダリングに関する暗黙理論を測定する尺度であるThe theories of mind wandering scale (TOMW) を邦訳し,その信頼性と妥当性を検討することを目的とした。その結果,TOMWの日本語版は,原版と同様の一因子構造の尺度であり,内的一貫性 (研究1) と再検査信頼性 (研究2) が高いことが示された。さらに,TOMW得点は,マインドワンダリングの頻度 (研究1から4),思考の制御能力の自己評価 (研究2),思考の制御方略やマインドワンダリングの感情強度 (研究3),持続的注意課題中のマインドワンダリングの頻度 (研究4) と関連することが示され,TOMWの日本語版が一定の妥当性を有することが示された。 |
キーワード | マインドワンダリング,マインドワンダリングに関する暗黙理論,the Theories of Mind Wandering Scale (TOMW) |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal94-5#22221 |
種類 | 研究資料 |
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タイトル | 日本語版Peer Conflict Scaleの開発 |
著者 | 渡邉 健蔵・濱口 佳和 |
要約 | 本研究の目的は,高校生を対象にPeer Conflict Scaleの日本語版を作成し,信頼性及び妥当性を検討することであった。確認的因子分析の結果,原版とは異なり,日本語版Peer Conflict Scaleは3因子構造であり,十分な内的整合性,性別の強測定不変性が確認された。更に,妥当性は,攻撃行動の形態面及び機能面に関連する変数及び不安との相関により検討された。その結果,日本語版Peer Conflict Scaleは妥当性を有しており,高校生に適用可能であることが示された。 |
キーワード | 能動的攻撃,反応的攻撃,外顕的攻撃,関係性攻撃,青年期 |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal94-5#22223 |