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心理学研究 第95巻 第5号(2024年12月)

種類 原著論文
タイトル 物語における登場人物の創作に及ぼす登場人物と書き手の類似性の影響
著者 西口 美穂・楠見 孝
要約 物語において,登場人物は欠かせない要素である。近年,いくつかの研究が物語の登場人物と視点を共有することが物語産出に重要な役割を果たすことを示唆しているが,登場人物の情報がどのように書き手の認知過程に影響を与えるかについてはまだ不明な点が多い。本研究では,架空の登場人物の創作に焦点を当て,書き手と登場人物の関係性が登場人物の創作の困難度に影響を与えるかを検討した。物語理解における読者と主人公の相互作用の研究をもとに,506名の成人参加者に外向的または内向的な登場人物を作成させた上で,その性格的特徴(たとえば,その人物の趣味や宝物など)を記述させ,登場人物作成の困難度を評価させた。その結果,特に外向性の低い参加者は,内向的な登場人物の方が外向的な登場人物よりも創作がしやすいと感じることが示された。このことから,書き手は登場人物の心的シミュレーションを行っており,書き手と登場人物の関係性が登場人物の創作に重要な役割を果たすことが示唆された。
キーワード 登場人物創作,類似性,主観的困難度,物語産出,心的シミュレーション
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal95-5#23015
種類 研究資料
タイトル 加齢に係る変化意識尺度10項目短縮版の日本語版開発と信頼性・妥当性の検討
著者 白石 奈津栄・堀内 孝・Allyson Brothers
要約 本研究の目的はAARC-10 SFの日本語版を開発し,その信頼性と妥当性を検討することである。40歳以上の男女1200名に調査を実施した。有効回答者898名に対して探索的因子分析と確証的因子分析を行った結果,2因子構造(獲得・喪失)が確認された。多母集団同時分析を行ったところ,世代については部分弱測定不変モデル,性別と学歴については構造不変モデルが支持された。内的一貫性も十分であった。妥当性検討尺度との相関は原版と概ね同じパターンを示した。さらに,階層的重回帰分析によって,「獲得」と「喪失」が「老いに対する態度」や「主観的年齢」とは異なる新しい構成概念を測定していることを確認した。以上の結果から,AARC-10 SFの日本語版が,原版と同等の信頼性と妥当性を有することが示された。
キーワード 加齢に係る変化意識,AARC-10 SF,尺度開発,信頼性・妥当性
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal95-5#23203
種類 研究資料
タイトル 日本語版Attitudes to Chocolate Questionnaireの作成
著者 福田 実奈・伊藤 雅隆
要約 チョコレートは欧米圏において最も頻繁に渇望される食品である。過剰な摂取に伴うリスクを鑑みると,チョコレートへの渇望の適切な評価尺度が必要であるが,Attitudes to Chocolate Questionnaire (ACQ)の日本語訳はまだ存在しない。本研究では,ACQの日本語訳を作成し,その妥当性と信頼性を検討した。630名の成人 (男性272名,女性358名,平均年齢38.94歳) を対象に,オンライン調査を実施した。また,再検査信頼性の検討のために,88名 (男性47名,女性41名) に追加調査を実施した。その結果,日本語版ACQは,先行研究が示した2因子構造を有し,高い内的一貫性と再検査信頼性を有することがわかった。これらの結果から,日本語版ACQは原版,ドイツ語版,オランダ語版と同様の特性を持ち,妥当性と信頼性の高いチョコレート渇望評価尺度であることが示唆された。
キーワード チョコレート態度尺度,チョコレート渇望,確認的因子分析,食物渇望
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal95-5#23207
種類 研究資料
タイトル 安全性の知覚尺度の作成と信頼性・妥当性の検証
著者 日道 俊之
要約 自分の生活が安全でないと知覚することはストレスやネガティブな帰結と関連する。安全性の知覚を測定することは安全にかかわる問題の影響を検証するために重要であるが,安全性の知覚を網羅的に測定する尺度は未だ開発されていない。本研究は安全性の知覚尺度を作成し,その信頼性や妥当性を検証した。事前研究で自由記述を基に項目群を作成し,研究1でそのプレ尺度を用いて項目の選定と因子の探索的検討を行った。その結果,8因子が抽出された。研究2では研究1で示された因子構造を確証し,再検査信頼性を検討した。双因子モデルが最適であること,全ての因子が十分な再検査信頼性を有することを確認した。研究3では併存妥当性と構成概念妥当性を検証した。仮説として挙げたほとんどの相関関係が有意であり,効果量も中程度以上であった。ゆえに,併存妥当性と構成概念妥当性が確認された。「他者からの受容因子」の独自性に限界はみられるものの,本研究から安全性の知覚尺度は十分な信頼性と妥当性を有することが示された。
キーワード 安全性の知覚,ストレス,信頼性,妥当性
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal95-5#23209
種類 研究報告
タイトル 中学生の社会経済的地位と向社会的行動との関連――向社会的動機づけを介する間接効果の検討――
著者 山本 琢俟・上淵 寿
要約 本研究は日本の中学生における社会経済的地位 (SES) と向社会的行動との関連を検討したものである。また,これら2者の関連における向社会的動機づけの間接効果についても検討した。回答に同意した996名の中学生を対象にインターネット上での質問紙調査を行った。相関分析の結果,SESは向社会的行動と有意な負の関連を示していた。媒介モデルを用いた構造方程式モデリングの結果,SESと向社会的行動との関連に対して自律的な向社会的動機づけの有意な間接効果が確認された。以上の結果より,日本の中学生におけるSESと向社会的行動との関連について議論がなされた。さらに,本研究の結果が学校教育へ与え得る示唆についてもまとめられた。
キーワード 社会経済的地位,向社会的行動,向社会的動機づけ,日本の中学生,構造方程式モデリング
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal95-5#22319
種類 研究報告
タイトル 青年期女子の実利主義的恋愛観の規定因――ファンタジー物語との接触の影響――
著者 麻生 奈央子・坂元 章
要約 本研究は,実利主義的恋愛観の規定因を検討するため, ファンタジー物語との接触の影響を検討した。大学生女子を対象に2つの実験を行った。その結果,仮説支持の方向で,シンデレラ物語群はヘレン・ケラー物語群と比べ,結婚相手の社会経済的地位や身体的魅力を重視する傾向,結婚相手の年収希望額,ロマンティック幻想 (理想のパートナーをファンタジー物語の王子様と重ね合わせる恋愛観),間接的勢力志向(結婚相手の高い社会経済的地位を通じて自己の価値を高めようとする傾向)が有意に高かった。本研究の結果,パートナーの地位を通じて自己の勢力を拡大しようとする実利主義的な恋愛観は,物語を含むメディアなど社会環境に影響を受けうることが示された。今後メディアなど社会環境とジェンダー間格差等の社会構造の変化によっては,実利主義的恋愛観が可変する可能性が示唆されたといえる。
キーワード 実利志向,恋愛観,ジェンダー間格差,ファンタジー物語,ロマンティック幻想
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal95-5#22329
種類 研究報告
タイトル 名前の好みと既存の自尊心測度との関連
著者 中井 彩香・大江 朋子・泉 明宏・沼崎 誠
要約 本研究では,日本において自分の名前の好みが潜在自尊心の指標となりうるかについて検討した。6つの研究において,796名の参加者は,2種類の自尊心IAT(1つは一般的な刺激語を用いたもの,もう1つは参加者の名前を刺激語として用いたもの)の実施とRosenbergの自尊心尺度・ネームレター課題(NLT)・名前の好みの回答を行った。メタ分析の結果,名前の好みと,Rosenbergの自尊心尺度・NLTとの正の相関は見られたが,2種類の自尊心IATとの有意な相関は見られなかった。名前の好みとNLTとの正の相関は,Rosenbergの自尊心尺度を統制しても残った。これらの知見から,名前の好みは顕在自尊心とともに潜在自尊心の一側面を測定している可能性が示唆された。
キーワード 顕在自尊心,潜在自尊心,潜在連合テスト,ネームレター課題,名前の好み
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal95-5#23312