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心理学研究 第97巻 第3号(2025年8月)

種類 原著論文
タイトル マスク着用の向社会的動機と主観的幸福感および孤独感――2つの短期縦断調査による検討――
著者 宮崎 弦太
要約 本研究の目的は,感染予防行動であるマスク着用について,マスク着用の向社会的動機と本人の主観的幸福感および孤独感との関連,そして,その関連を媒介する心理プロセスについて,影響の方向性を明確にすることであった。そのために,2つの短期縦断調査(週に1回×4時点)を実施した。研究1は2024年の1月から2月に実施し,1,301名の日本人成人のデータが分析対象となった。研究2は2025年の1月から2月に実施し,1,231名の未婚の日本人労働者のデータが分析対象となった。ランダム交差遅延パネルモデルを用いた分析では,マスク着用の向社会的動機の交差遅延効果は認められなかった。一方,交差遅延パネルモデルを用いた分析から,過去1週間の向社会的動機から次の時点の関係性欲求充足への交差遅延効果が認められた。そして,関係性欲求の充足が,次の時点でのポジティブ感情経験(研究1と2)と孤独感(研究2)に影響する,という有意な弱い間接効果が認められた。RI-CLPMとCLPMの結果の比較を通じて,マスク着用の向社会的動機が感情の側面での幸福と対人関係の経験に及ぼす影響を考察した。
キーワード マスク着用の向社会的動機,主観的幸福感,孤独感,関係性欲求充足,短期縦断調査
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal97-3#25005
種類 原著論文 [方法・開発]
タイトル 日本語版 Cooper-Norcross 選好尺度の作成
著者 鈴木 孝・栗山 七重・佐々木 淳
要約 クライエントの選好を考慮したテーラーメイドな心理療法は,さまざまな肯定的効果につながっている。しかし,クライエントの選好を評価する方法は,日本ではまだ開発されていない。本研究の目的は,心理療法に対するクライエントの選好を効果的に評価するための日本語版Cooper-Norcross Inventory of Preferences(C-NIP)を作成し,その因子構造,信頼性,妥当性を検討することであった。大学生・大学院生240名(研究1)と社会人663名(研究2)を対象に,2回のオンライン質問紙調査を実施した。確認的因子分析および相関分析の結果,日本語版C-NIPは4因子構造を有し,許容可能な内的一貫性,再検査信頼性および小程度の収束的妥当性を有することが確認された。最後に,尺度の心理測定学的特性や,臨床現場における今後の研究のための視点について論じた。
キーワード 心理療法,クライエントの選好,Cooper-Norcross選好尺度
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal97-3#24234
種類 原著論文 [方法・開発]
タイトル 就寝先延ばし尺度の開発――就寝先延ばしにおける行動パターンの多様性――
著者 外山 美樹・高橋 弘文
要約 就寝先延ばしとは,潜在的な悪影響を認識しながらも,就寝時刻を遅らせる行動を指す。既存の尺度は,就寝の遅れを測定するものの,その背後にある意図や動機を捉えることができなかった。本研究の目的は,就寝先延ばし行動の背景にある多様な行動パターンや動機を反映する新たな尺度を開発し,この尺度を用いて,異なる行動パターンを示す人々がどのような睡眠衛生行動をとり,結果としてどのような睡眠関連の問題を引き起こすのかを検討することであった。研究1(n = 408)および研究2(n = 453)を通じて,報酬型先延ばし,無意図的な先延ばし,戦略的な先延ばしという3つのパターンを測定する「就寝先延ばし尺度」が作成され,一定の妥当性(一般化可能性の側面,構造的側面および外的側面の証拠)が確認された。また,研究3(n = 406)より,これら3つのパターンがそれぞれ異なるメカニズムを通じて,睡眠衛生行動や睡眠関連の問題に関連していることが明らかとなった。最後に,本尺度を用いた今後の研究の展望が議論された。
キーワード 就寝先延ばし,報酬型先延ばし,無意図的な先延ばし,戦略的な先延ばし,睡眠衛生行動
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal97-3#25201
種類 研究報告
タイトル 高進捗段階で動機づけを高めるには?――サブゴールと進捗モニタリングに着目して――
著者 大澤 かりん・清水 登大・外山 美樹
要約 サブゴールとは,最終目標の達成に必要な行動を細分化した下位の目標である。本研究では,サブゴールを設定した場合に高進捗段階で動機づけが低くなる課題を解決するために,サブゴールの参照点としての機能に着目した。参照点を用いて目標追求中の現在地を把握する過程は,進捗モニタリングと呼ばれる。進捗モニタリングには,開始状態を参照点とするto-dateフレームと,最終状態を参照点とするto-goフレームの2つの枠組みがあり,参照点からの距離が近いほど動機づけは高くなる。実験室実験でサブゴール(なし,あり)と進捗モニタリング(to-date,to-go)の2要因を操作したところ,高進捗段階ではサブゴールありの場合,to-date条件よりもto-go条件の方が動機づけは高かった。よって,サブゴールを設定した場合はto-goフレームでこれから取り組むべき行動に注目することで動機づけ低下を防げることが示された。
キーワード サブゴール,進捗モニタリング,目標追求,動機づけ,参照点
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal97-3#24330
種類 研究報告
タイトル ダンスの創造的プロセスが不安と抑うつに及ぼす影響──即興創作と模倣の比較──
著者 酒井 美鳥・清河 幸子・溝川 藍
要約 ンスは不安や抑うつを軽減することが示されていることに加えて,自転車こぎ運動等の他の運動,音楽を聴く,そして運動と音楽を組み合わせた活動よりも効果があることが示されている。しかしながら,その効果がどのような要因によって生み出されているのかは十分に明らかになっていない。本研究はその要因として創造的プロセスに着目し,ダンスにおける創造的プロセスが不安および抑うつを軽減するという仮説を検証した。大学生109名が即興創作ダンスまたは模倣ダンスをオンラインで個別に約20分間行い,その前後で不安および抑うつ状態を自己評定した。その結果,どちらのダンスも不安および抑うつを有意に軽減させたが,ダンス間の改善に有意差は見られず,仮説は支持されなかった。結果から,創造的プロセスは不安および抑うつの軽減に影響しない可能性が示唆されるものの,参加者の創造的経験の不足や異なるメカニズムの可能性について議論した。
キーワード ダンス,不安,抑うつ,即興,模倣
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal97-3#25306
種類 研究報告
タイトル 良性妬みを抱きやすい人はなぜパフォーマンスが高いのか?――達成目標理論に基づく検討――
著者 澤田 匡人・ 鈴木 雅之・稲垣 勉
要約 本研究では,良性妬みの抱きやすさが学業パフォーマンスを高めるプロセスについて,達成目標理論に着目して検討した。調査1では女子大生297名,調査2では女子高生232名を対象に縦断調査を行った。まず,日本語版BeMaSが,調査1の大学生を対象とした分析において澤田・藤井(2016)と同様の因子構造が再現され,調査2の高校生を対象とした確認的因子分析等でも同様の構造と妥当性が確認されたことから,高校生にも本尺度が適用可能であることが示された。次に,構造方程式モデリングによる分析を行い,達成目標を媒介変数として,妬みと試験得点との関連を検討した。その結果,特性としての良性妬みは遂行接近目標を介して試験得点と正の関連を持つことが示された。また,いずれの調査でも,特性としての悪性妬みは達成目標と関連を示さなかった。これらの結果から,良性妬みを抱きやすい者は,他者を上回ろうとする傾向により,高い学業パフォーマンスを示す可能性が示唆された。
キーワード 良性妬み,悪性妬み,達成目標理論,パフォーマンス
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal97-3#25001