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Keeping fresh eyes 心理学研究 最先端

孤独は本当に深刻化しているのか?

本間 萌々
中央大学大学院文学研究科心理学専攻博士前期課程

本間 萌々(ほんま もも)

Profile─本間 萌々
専門は発達心理学。連名発表に「母親の育児不安低減を目的としたAI保育士・潜在保育士を基盤とする育児支援システム『トモイクプラットフォーム』の開発」日本心理学会大会発表論文集,896,2024,など。

孤独・孤立の問題は「深刻化している」と言われてきた。地縁・血縁の希薄化や非正規雇用への移行,スマートフォンの普及といった社会環境の変化により,人々の社会的つながりは次第に弱まりつつある。とりわけ,新型コロナウイルス感染症の拡大により対面でのコミュニケーションが急激に制限されたことで,「孤独感」は個人の問題にとどまらず,社会全体の課題として広く認識されるようになった。

孤独感(loneliness)とは,対人関係における「理想」と「現実」のギャップから生じる,主観的で否定的な感情である[1]。孤独感は主観的な感情であるにもかかわらず,さまざまな精神的・身体的健康リスクを高め,さらには早期死亡率との関連も報告されている[2, 3]。そのため,人々の健康な生活を脅かす孤独感の解消は喫緊の課題とされており,内閣府をはじめとして総合的な対策が推進されている。

一方で,孤独感が「実際に」深刻化しているのかどうかは明らかにされておらず,「孤独は深刻化している」という流布された社会的言説と実証的エビデンスの間にはギャップが存在していた。そこで私の研究では,「孤独は本当に深刻化しているのか?」をリサーチ・クエスチョンとして,日本社会における孤独感の経年変化を検証した。

本研究では,時間横断的メタ分析(cross-temporal meta-analysis)を実施した。メタ分析とは,既存の研究で得られた定量的データを統合する,エビデンスレベルの高い研究手法である。今回は,孤独感を定量的に測定する日本語版UCLA孤独感尺度を使用した研究を対象に,メタ分析を実施した。最終的には,81件の文献から183件のデータを抽出し,統計解析を行った。

その結果,1983年から2023年にかけてUCLA孤独感尺度得点の有意な上昇が見られた[4](図1)。ここから,日本社会における孤独感が40年間にわたり深刻化していたことが確認された。また,その他の解析からは,青年期および女性において孤独感が上昇していたこと,婚姻率といった社会指標が孤独感と共変していたことを明らかにした。

図1 日本における孤独感得点の経年変化 文献4
図1 日本における孤独感得点の経年変化[4]

本研究は,日本社会における長期的な孤独感の経年変化を検討した初めての研究である。結果からは,日本において孤独感が深刻化している状況が明らかになった。これは孤独感の解消が喫緊の社会課題であることを示しており,今後の科学的研究や政策的介入の必要性を裏づける重要なエビデンスを提供している。

現在,私は「誰もが孤独を抱え込まない社会」の実現を目指し,孤独感の要因探索や介入手法の開発に取り組む一方で,大学院の公認心理師資格の取得に向けた課程に在籍している。1949年に米国で開かれたボルダー会議において,科学者-実践家モデル(scientist-practitioner model)が採択され,エビデンスに基づいた実践が求められている。個人から社会まで広くアセスメントを行い,必要とされる科学的研究が行えるよう,これからも日々精進していきたい。

文献

  • 1.Peplau, L. A., & Perlman, D. (1979) Blueprint for a social psychological theory of loneliness. In M. Cook & G. Wilson (Eds.), Love and attraction (pp.101–110). Pergamon.
  • 2.Holt-Lunstad, J. et al. (2015) Perspect Psychol Sci, 10(2), 227–237.
  • 3.Hawkley, L. C. (2022) Nat Rev Dis Primers, 8(1), 22.
  • 4.Homma, M., & Takase, K. (submitted).

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