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心理学研究 第98巻 第3号(2027年8月)

種類 原著論文
タイトル 幼児は援助をどのように続けるか
著者 廣戸 健悟
要約 本研究の目的は,他者の困難が一度の援助では解消しない状況において,幼児がどのように向社会的行動を続けるかを検討することであった。保育園に通う3歳児58名と5歳児59名 (計117名) を対象に,ボタン型スピーカーを通じて元気が出ないと訴え続けるパペットへの援助場面を設定し,幼児がどのように向社会的行動を続けるかを検討した。援助時間,方略の使用数,方略の切替率を指標として年齢差を分析した結果,5歳児は3歳児よりも援助時間が長かった。また,5歳児はニーズ確認・分配行動・慰め行動・その他の方略を有意に多く用い,方略の切替についても,別の方略へ切り替える割合が高いことが示された。これらの結果は,幼児期後半にかけて,他者への関与を繰り返し続けようとする粘り強さと,状況が改善しない中で方略を切り替える傾向が高まる可能性を示唆する。向社会的行動を,一度の援助の成否ではなく,失敗を含み込んだ一連のプロセスとして捉えることの意義が示された。
キーワード 向社会的行動,ボタン型スピーカー,粘り強さ,方略の切替,幼児
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal98-3#25071
種類 原著論文 [方法・開発]
タイトル 環境配慮型消費行動への価値観を測定する日本語版GREEN尺度の作成
著者 山田 真緒・伊藤 資浩・宮崎 由樹
要約 近年,消費者には,環境に配慮した持続可能な消費・購買行動 (環境配慮型消費行動) が求められている。本研究の目的は,環境配慮型消費行動の価値観を測定するGREEN尺度の日本語版を作成することであった。まず,研究1 (n = 301) では,日本語版GREEN尺度を作成し,原版と同様に1因子構造を有することを確認した。そして研究2 (n = 184) では収束的妥当性が確認され,予測的妥当性については限定的な支持が得られた。研究3 (n = 168) では再検査信頼性を確認した。これらの研究の結果から,本研究で作成した日本語版GREEN尺度は,主として因子的妥当性,収束的妥当性,および信頼性の面で支持が得られ,環境配慮型消費行動の価値観を6項目で測定可能な簡潔な尺度であることが示された。ただし,予測的妥当性については,より妥当な外的基準を用いた再検証が必要である。
キーワード サステナビリティ,尺度開発,グリーンマーケティング,SDGs
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal98-3#25031
種類 原著論文 [方法・開発]
タイトル 日本語版改訂5次元好奇心尺度(5DCR)の開発
著者 西川 一二・楠見 孝・雨宮 俊彦
要約 本研究では,好奇心のさまざまな種類を包括的に測定するために,改訂5次元好奇心尺度(The Five-Dimensional Curiosity Scale Revised: 5DCR)の日本語版(5DCR-J)を開発し,その因子構造,信頼性および妥当性を検証した。全国の成人を対象に調査を実施した。探索的・確認的因子分析の結果,原版5DCRと同様の6因子構造(探究の喜び,欠乏の感受性,ストレス耐性,スリル探求,公然型社会的好奇心,内密型社会的好奇心)が確認された。各下位尺度の信頼性は十分に高く,関連する既存尺度(好奇心探索尺度,状態-特性不安尺度,ならびに知的好奇心,対人的好奇心,刺激欲求,Big Fiveの各尺度)との相関分析により妥当性も支持された。5DCR-Jは,好奇心の多様な側面を網羅的に評価できる尺度として,教育・メンタルヘルス領域における応用や国際比較研究に有用であることが期待される。
キーワード 好奇心,改訂5次元好奇心尺度,因子分析,信頼性,妥当性
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal98-3#26011
種類 原著論文 [方法・開発]
タイトル 自由記述文のデータ駆動型モデリング――BERT系モデルとベイジアンネットワークの統合――
著者 財津 亘・緒方 康介
要約 本研究は,自由記述文に関するデータ駆動型モデリングの提案をすべく,bidirectional encoder representations from transformers(BERT)に基づく意味的言語埋め込み,埋め込み文のクラスタリング分析,およびベイジアンネットワークモデリングの統合を実施した。そこで,その試みとして,学童期から青年期にかけた「発達過程と攻撃性」をテーマに記述をもとめた自由記述回文を,BERT系モデルを用いて文脈を考慮した文埋め込み(contextualized sentence embeddings)へ変換し,その後クラスタリングを行うことで,解釈可能なテキスト類型を生成した。続いて,これらの類型に加えて,性別,年齢,およびBuss–Perry Aggression Questionnaire に基づく4つの攻撃性因子を条件付きガウシアン・ベイジアンネットワークに組み込んだ。モデルの性能は,leave-one-out cross-validation(LOOCV)を用いて評価し,正解率(accuracy),マクロ平均の適合率(precision),再現率(recall),およびF1スコアを指標として用いた。その結果,AICに基づく山登り法によるモデルが最も高い予測性能を示すとともに,学童期から青年期にかけての経験との間に,攻撃性4因子それぞれが異なる発達段階との関連性を示唆した。本提案手法の枠組みは,自由記述文のテキストデータに対して,恣意的解釈に依存する質的研究を用いずとも,一貫性や再現性を保ちながら,意味情報を考慮した形でモデリングすることを可能にする。
キーワード 自由記述のテキストデータ,BERT,条件付きガウシアン・ベイジアンネットワーク,k-meansクラスタリング,攻撃性
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal98-3#26023