刊行物のご案内
心理学研究 第89巻 第2号(2018年6月)
ページ | 119-129 |
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種類 | 原著論文 |
タイトル | 青年の時間的展望とアイデンティティ形成過程の5側面との関連 |
著者 | 石井 僚 |
要約 | 本研究の目的は,時間的展望とアイデンティティ形成過程の5側面との関連について,アイデンティティ形成の二重サイクルモデルに基づいて検討することであった。時間的展望については,過去,現在,未来それぞれについての時間的展望と,時間的展望プロフィールの両側面について検討を行った。大学生196名を対象として質問紙調査を行った。重回帰分析の結果,未来に対する時間的展望はアイデンティティ形成の全側面と,過去に対する時間的展望は探求の側面と,現在に対する時間的展望はコミットメント形成と関連することが明らかになった。また,時間的展望プロフィールについての分散分析の結果,全ての時間に対して肯定的な全肯定型,過去のみについて否定的な過去のみ否定型が,アイデンティティ形成の適応的な側面を最も持つことが示唆された。本研究は時間的展望と二重サイクルモデルに基づくアイデンティティ形成の各側面との関連を明らかにしたものであり,今後は,それらがどのように相互作用するのかについて縦断的に検討していくことが課題である。 |
キーワード | 時間的展望,アイデンティティ,青年期 |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal89-2#16046 |
ページ | 130-138 |
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種類 | 原著論文 |
タイトル | 妊娠期,産後における睡眠,不安,抑うつの違いと各時期における関連 |
著者 | 渡辺 綾子・眞鍋 えみ子・和泉 美枝・植松 紗代・田中 秀樹 |
要約 | 本研究では,妊娠中期,末期,産後1ヵ月にかけての睡眠の特徴,不安,抑うつの違いを明らかにすること,各時期における睡眠の特徴と不安,抑うつとの関連を検討することを目的とした。その結果,妊娠中期,末期に比べ産後1ヵ月では,睡眠が障害され,睡眠時間が短く,睡眠効率も低いことがわかった。一方,睡眠困難感は妊娠中期,末期より産後1ヵ月の方が良好であった。不安,抑うつについては妊娠期,産後1ヵ月で有意な差は認められなかった。時期ごとに睡眠,不安,抑うつの関連を検討したところ,妊娠中期は睡眠障害,睡眠の質と不安や抑うつが関連していることが明らかになった。また,合併症の有無と不安が関連しており,合併症により高不安リスクが高まることが分かった。一方,産後1ヵ月では,睡眠の質が不安と関連し,抑うつは,睡眠障害,睡眠の質,日中の覚醒困難と関連していた。以上の結果から,妊婦や産後の母親の睡眠の特徴を把握することが,不安や抑うつを予測する一助となる可能性が示唆された。 |
キーワード | 妊娠期,産後,睡眠,不安,抑うつ |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal89-2#16065 |
ページ | 139-149 |
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種類 | 研究資料 |
タイトル | 公募型Web調査における複数回答形式の有効性評価 |
著者 | 江利川 滋・山田 一成 |
要約 | 本研究では公募型Web調査の複数回答形式における最小限化回答の抑制要因について検討した。分析の対象となったのは一都三県における2つの公募型Web調査である(第1調査は成人2,257名を対象に2014年3月に実施,第2調査は成人519人を対象に2017年10月に実施)。分析の結果,(a)複数回答(MA)形式では個別強制選択回答(FC)形式よりも,項目選択率が著しく低く,回答時間が短かった。また,(b)FC形式の回答に黙従傾向は認められず,(c)項目数と項目特性による最小限化回答の抑制は認められなかった。(a)および(b)の結果はMA形式における最小限化回答の発生を示していると考えられた。さらに,これらの回答傾向は,判断によって回答される意識質問だけでなく,想起によって回答される行動質問でも同様に認められた。以上の結果から,MA形式における最小限化の頑健性の高さが示され,Web調査の複数回答質問にはFC形式の採用が推奨された。 |
キーワード | 複数回答形式,個別強制選択形式,最小限化,黙従傾向,Web調査 |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal89-2#16224 |
ページ | 150-159 |
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種類 | 研究資料 |
タイトル | 看護師を対象としたProQOL日本語版(ProQOL-JN)の作成 |
著者 | 福森 崇貴・後藤 豊実・佐藤 寛 |
要約 |
本研究は,看護師を対象とした Professional Quality of Life Scale 日本語版(ProQOL-JN)の作成を目的として行われた。原版は,対人援助職の QOL 評価のために開発されたものであり,「共感疲労/二次的トラウマティック・ストレス」,「共感満足」,「バーンアウト」という3つの下位尺度から構成される。本研究では,日本の医療施設に勤務する看護師618名のデータに基づき, ProQOL-JN の信頼性および妥当性の検証が行われた。その結果,本尺度は3因子構造をもつこと,高い内的整合性および再検査信頼性を有することが示された。また,改訂出来事インパクト尺度(IES-R),日本語版外傷後成長尺度(PTGI-J),日本版バーンアウト尺度との相関は,理論による予測と一致したものであり,本尺度の収束的妥当性も確認された。以上より,今回作成された ProQOL-JN は,看護師の QOL に関する測定尺度として,一定の信頼性および妥当性を有すると考えられる。 |
キーワード | 専門職のQOL,看護師,共感疲労,共感満足,バーンアウト |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal89-2#17202 |
ページ | 160-170 |
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種類 | 研究資料 |
タイトル | 親密な関係破綻後のストーカー的行為のリスク要因に関する尺度作成とその予測力 |
著者 | 金政 祐司・荒井 崇史・島田 貴仁・石田 仁・山本 功 |
要約 | 本研究の目的は,パーソナリティ特性(愛着不安と自己愛傾向),交際時の関係性,関係破綻後の思考や感情といった観点を踏まえ,親密な関係破綻後のストーカー的行為の加害リスク要因を明らかにすることであった。研究1では,交際時の関係性の測定尺度ならびに関係破綻後の思考や感情の測定尺度を作成するため,189名の女性と165名の男性を対象にWeb調査が実施された。研究2では,層化2段無作為抽出法による全国調査が実施され,過去5年間に親密な関係の破綻を経験し,かつ一番最近の恋愛関係の破綻時に相手から別れを切り出されたとする者,女性106名,男性110名が分析の対象となった。多母集団同時分析の結果,男女共通で,パーソナリティ特性の愛着不安と過去の交際時の唯一性が,関係破綻後の思考や感情である独善的執着を高め,さらに,その独善的執着がストーカー的行為を増大させることが示された。 |
キーワード | ストーカー的行為,愛着不安,自己愛,恋愛関係,関係破綻 |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal89-2#17207 |
ページ | 171-178 |
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種類 | 研究資料 |
タイトル | 科学的基礎知識とハザードへの不安との関係 |
著者 | 中谷内 一也・長谷 和久・横山 広美 |
要約 |
本研究は基礎的科学知識が広範なハザードへの不安を説明しうるのかどうかを検討するものであった。層化二段階無作為抽出法による全国調査を実施し,データを収集した(N = 1,073)。調査参加者は51 種類のハザードに対する不安,それぞれのハザードを管理する組織への信頼,さらに,基礎的科学知識についての質問に回答した。階層的重回帰分析の結果,性別や年齢の影響をコントロールした上でも,基礎的科学知識が高いほどハザードに対する不安が低いことが明らかにされた。ただし,その説明力は小さなものに過ぎなかった。また,すべてのハザード領域において管理組織への信頼が高いほど不安が低いことも確認された。これらの知見を科学コミュニケーションにおける欠如モデルや社会経済的要因を軸に考察した。 |
キーワード |
科学コミュニケーション,科学リテラシー,リスク認知,欠如モデル |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal89-2#17215 |
ページ | 179-185 |
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種類 | 研究報告 |
タイトル | 東日本大震災の復興活動に対する感情の地域差――距離・被害程度・災害史の影響―― |
著者 | ウィワッタナーパンツウォン ジュターチップ・本多 明生・阿部 恒之 |
要約 | 復興活動を阻害する心理的な要因を明らかにするため,東日本大震災の被害程度・災害史の異なる 8区域の男女779名を対象にインターネット調査を行い,復興活動促進者2タイプと阻害者4タイプに対する感情評価の地域差を検討した。その結果,全タイプに共通して肯定的感情・否定的感情の2因子が確認された。復興促進者については地域差なく肯定的な感情が強く否定的な感情が低かった。復興阻害者については地域差が認められ,被災地からの距離よりも,被害の程度と過去の災害経験(災害史)という共感材料の多寡が感情評価に影響していることが示唆された。 |
キーワード | 放射能汚染,共感,社会的カテゴリー化,風評被害 |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal89-2#17310 |
ページ | 186-202 |
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種類 | 展望論文 |
タイトル | Cryptomnesiaに関する研究の動向 |
著者 | 谷上 亜紀 |
要約 | 人は,以前に経験したアイデアを,誤って自分自身が作り出したとみなすことがある。この現象はcryptomnesiaと呼ばれる。本論文の目的は,Brown and Murphy (1989)に始まる,cryptomnesiaに関する実験的研究を概観することである。先行研究によって,cryptomnesiaを増加させたり減少させたりする要因の特定がなされた。また、そうした研究から,cryptomnesiaを生じさせる認知過程が,記憶痕跡の強度,記憶表象の性質,本来の製作者の信頼性などと関わる複雑なものであることが見出されてきた。こうした知見は,cryptomnesiaを減少させる方法の探索や,将来の研究についての示唆をもまた提供している。 |
キーワード | 記憶,cryptomnesia,不注意な剽窃,創造性 |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal89-2#17401 |