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心理学研究 第91巻 第5号(2020年12月)

ページ 303-311
種類 原著論文
タイトル 隠匿情報検査における生理変化の時間的推移
著者 小川 時洋・松田 いづみ・常岡 充子
要約 本研究では,隠匿情報検査(CIT)時の試行内の生理活動の時間的変化に注目した。実験参加者を,刺激間間隔が 50s もしくは 25s の2つの群に割り当てた。模擬窃盗課題を実施し,実験参加者が盗んだアクセサリーをCITの関連項目とした。生理測度には,皮膚伝導度水準(SCL),皮膚伝導度反応(SCR),心拍数(HR),規準化脈波容積(NPV),自己報告測度として覚醒度と驚きの評定を含めた。実験の結果,非関連項目提示に対する生理的変化は 25s 以内に刺激前レベルに戻ることが分かった。関連項目提示時の生理的回復は,SCLとHRでは非関連項目よりも遅く,NPVではより早かった。刺激前生理活動水準は,関連項目提示までは維持されたが,その後には減少し,緊張最高点効果と類似するパターンを示した。参加者の自己報告測度も,生理測度と一致した。以上の結果について,実務的・理論的意義について考察した。
キーワード 隠匿情報検査,系列内変動,刺激間間隔,持続性活動,一過性反応
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal91-5#19016
ページ 312-322
種類 原著論文
タイトル 現代青年の友人集団における「空気」を読めない言動への対処行動
著者 小岩 広平・小松 眞峰・若島 孔文
要約 現代青年の友人関係において,「空気」を読めなかった者への攻撃行動が問題となっている。本研究では,Batesonのコミュニケーション・モードの概念をもとに,友人が「空気」を読むことに失敗した場面を4つ設定し,その青年が友人集団との間に築いている関係性により,その場面で選択される対処行動に違いがあるかについて調査した。大学生226名に対して,質問紙調査を実施した。その結果,「空気」を読めない言動への対処行動は,「放置」「叱責」「いじり・からかい」「フォロー」に分類された。また,友人集団との関係性が「空気」を読めない言動への対処行動と関連することが示された。友人集団との間に回避的な関係性を築いている青年は,対処行動として「放置」を選択する傾向があることが示された。一方で,群れとしての関係性を築いている青年は「いじり・からかい」を行うことが示された。以上の結果から,集団としての友人関係を志向する現代青年ほど,空気を読めない言動に過敏になる可能性について議論された。
キーワード 現代青年,空気を読むこと,コミュニケーション・モード,友人関係,対処行動
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal91-5#19032
ページ 323-331
種類 原著論文
タイトル 日本における外国人居住者に対する寛容性と Big Five の関連――社会生態による調整効果――
著者 吉野 伸哉・小塩 真司
要約 本研究の目的は,第1に Big Five パーソナリティと外国人居住者に対する寛容性との関連を明らかにすること,第2にパーソナリティ特性と寛容性の関連における居住地域での外国人居住者割合の調整要因としての役割を検討することである。日本人18,656名 (女性9,097名,平均年齢47.80歳) を対象にした全国調査のデータに対し,重回帰分析による検討をおこなった。分析の結果,寛容性との間に外向性,協調性,開放性が正,勤勉性,神経症傾向が負の関連を示した。また,居住地域の外国人居住者割合と勤勉性との間に有意な交互作用が見られた。単純傾斜検定の結果,外国人居住者の多い地域の方が少ない地域よりも,勤勉性が高いほど寛容性が低くなることが示唆された。これらの関連について考察した。
キーワード 寛容性,ビッグファイブ・パーソナリティ,外国人居住者・移民,社会生態
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal91-5#19041
ページ 332-338
種類 研究報告
タイトル 自伝的記憶における想起された出来事の特性と忘却への懸念との関係
著者 堤 聖月・清水 寛之
要約 本研究では,過去に経験した出来事をいつか忘れてしまうだろうという見通しに伴う意思や感情を「忘却への懸念」と呼ぶ。研究1では,忘却への懸念尺度を作成し,信頼性と妥当性を検討した。探索的因子分析の結果,忘却への懸念は1因子構造であることが確認された。TALE (Thinking About Life Experiences)尺度,自伝的推論尺度,アイデンティティ尺度との間に十分な相関がみられ,尺度の妥当性が確認された。研究2では,出来事の記憶特性と忘却への懸念との関連を検討した。調査協力者は,高校時代に経験した行事に関する出来事を一つ想起し,その出来事の記憶特性と忘却への懸念に関する質問紙に回答した。出来事が自らにとって重要で,ポジティブなものだと認識されるほど,忘却への懸念が高いことが示された。こうした調査結果は,自伝的推論が過去の経験と自己とを結びつける内省的な思考であることに関連づけて議論された。
キーワード 自伝的記憶,忘却への懸念,自伝的推論,記憶特性
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal91-5#19325
ページ 339-349
種類 展望論文
タイトル アタッチメント理論におけるケアギビング研究の現在
著者 大久保 圭介
要約 ケアギビング行動はアタッチメント理論における重要な要素の一つであるにも関わらず,これまでの研究では看過されてきた。そこで本論では,先行研究の結果や議論を整理し,軽視されてきた原因と展望を探ることを目的として,レビューを行った。まず,乳幼児期の親子関係や青年期以降のピアレベルの二者関係の研究知見を踏まえて,「ケアギビング」がアタッチメント理論の範疇で指すものを定義した。続いて,行動システムや内的作業モデル(Internal working model: IWM)というケアギビング研究の基盤となるアタッチメント理論の重要な概念について整理し,それを踏まえて,ケアギビング行動システムおよびケアギビングに関するIWMの形成・発達プロセスについての研究を概観した。そして,アタッチメント理論においてケアギビング研究が等閑視されてきた原因として,アタッチメントに関するIWMの世代間伝達研究と青年期の二者関係研究が孕む問題点を提示した。また,もう一つの重大な原因としてケアギビング行動の至近的な生起機序が明らかになっていないことも指摘し,これまでの研究や論考を統合することで,ケアギビング行動システムの活性化から行動の表出,結果のフィードバックまでを含むモデルを示した。
キーワード ケアギビング,アタッチメント,行動システム,内的作業モデル
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal91-5#19401