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  2. 認定心理士の方
  3. ニューズレター 2016 年度 No.6

The Japanese Psychological Association News Letter

vol.072016 No.6

開会あいさつ
安藤 清志 先生(東洋大学)

今回のシンポジウムのテーマが選ばれた背景には、日本心理学会による復興支援の活動がある。5年前に発生した東日本大震災と原発事故について、心理学を何らかの形で役立てられないか、学会として何か役に立てないか、ということを考えた。

日本心理学会は 2011 年 4 月から、公益社団法人になる準備をして、社会貢献をする団体を目指した。
そんな折、3 月に大震災が発生し、学会として何ができるかを執行部として考えた。その結論として、様々な研究者や実践者による被災地へのサポートや、これを機会に研究プロジェクトを実施している方々など、そういった実践と研究を経済的な面でサポートする道を選んだ。これまでに 35 件のテーマについて、サポートを行ってきた。
きょうの話題提供者は、このいずれかで活動している方々である。

きょうは実践活動された方々のお話を伺いながら、参加されている認定心理士の方々、一般の方々が被災地のことを考え、自分自身で実践するヒントを得られればと考えている。

基調講演「被災者のマナー:被災地の日常生活という視点」
阿部 恒之 先生(東北大学)

私の任務は、2011年3月11日に何が生じたか、本日のすべての話に関係する“あの日”のことを、写真を通じて復習することだ。
当時、2004 年に大津波に襲われたタイのプーケットで調査を実施し、そのまとめを行っていたところで、震災が発生した。研究室の学生達が家から食料を持ち寄った。3 月下旬にはスーパーに 1キロ以上の“穏やかな長い列”ができた。床屋でシャンプーが 100 円だった。それまで抱いていた震災のイメージである、略奪や強奪とは無縁の穏やかに助け合う毎日だった。社会心理学で、“パニック神話”、“災害ユートピア”という言葉がある。
前者は「大災害が生じるとパニックや略奪などの逸脱行動が発生するという社会通念は誤りであり、災害時におけるパニックが稀である」、後者は「被災地において、略奪や暴力が支配した場所からわずかに離れた場所に、見ず知らずの人にも 声をかけ、いたわりあう、理想郷のようなコミュニティが形成される」、という、それまでの様々な事例研究の結果に基づく考え方である。

4 月以降、東北大学防災科学研究拠点で、被災の記録や被災者の日常生活を残すこと、被災状況の情報共有を行うことを話し合った。
被災地で過ごす人々の日常生活を記録するための様々な調査の結果、利他行為や秩序行為に関する記述が、逸脱行動よりも多かった。
別の調査の結果、被災時にあって良かったものは「懐中電灯、ラジオ、食料」、なくて困ったものは「飲料水、携帯型発電機、携帯型トイレ」、避難直後に困ったこととして、「入浴、洗濯、交通移動、情報収集」、といった結果が示された。

被災して実感したことは、“普通の暮らし”のありがたさだった。被災していても、お風呂に入りたいし、洗濯したいし、おいしいものだって食べたい。比較的早い時期から、“命”だけでなく“暮らし”を支える支援が必要である。

シンポジウム第 1 部
「メンタルヘルスとストレスケア」

話題提供「宮城県の乳幼児健診における心のケア事業の取り組みから」
青木 紀久代 先生(お茶の水女子大学)

乳幼児健診(1 歳半、3 歳対象)の際に臨床心理士による 子育て相談のブースを開いた。そこでの取り組みに基づいて、乳幼児健診において心理職がどのようなことをすればよいかをまとめた小冊子を作成した。

まず、登米市、多賀城市、名取市で、現地の小児科のグループをつないで、心理的なケアと調査を行うことのサポートを始めた。健診では、子どもの心の心配を相談に来る人はあまりいない。実際に健診の場で心理相談を行ってみると、登米市で 30%の利用があった。隠れたニーズが少なからずあったと言える。
健診に来た親子の関係性や情動調整について、身長・体重測定の様子を観察することで、その様子を見ることができた。ここで掴んだことが、保健師さんとのカンファレンスの際に役立った。

生活が非常に困難な場合、あるいは家族の離散など、ストレスが重なることで、長期的なストレスがトラウマになることがある。子どもが乳児期に獲得しなければならない、他者との間で情動を調整すること、というところをケアしていく必要がある。
母親のストレスについても話をした。当該地域をフォローする保健師に情報をつないでおく上では、母親からも了解を得ることが大切で、これがストレス長期化の予防的な効果に繋がった。

被災地における日常的なストレスとして、1)日常生活の変化、2)災害、事故に対する誹謗、中傷、うわさなど、3)過剰な報道活動、が挙げられる。
最後に、活動の実践の特徴をまとめる。“「心」のケア”については、子ども、親、保健師の継続的な支援を続けていく、中に入った支援者を外から支える、そういうケアのシステムを作っていく。“地域の個別性(現場性)に配慮した支援”につ いては、現場の力をさらに発揮できるよう、支援の計画を立てていくことが大事である。“持続的エンパワメント”については、支援者の視点に立って、地域的な適合に十分配慮したアプローチをとる必要がある。

話題提供「福島が直面する放射能汚染と心理学的問題」
筒井 雄二 先生(福島大学)

福島と原子力災害、そして心の問題についてお話ししたい。

WHO など国連機関や、ウクライナ、ロシアなどチェルノブイリ原発事故の被災国はチェルノブイリフォーラムという組織を形成し、チェルノブイリ原発事故後の総括を 2006 年に行った。そこでは原発事故の最大の公衆衛生上の問題が心理的健康への影響だと結論づけられた。
また、我々の現地調査の結果、事故から 30 年経過した今も、心理的影響(victim’s syndrome)は続いており、事故後の影響は今後 20 年以上続くという調査結果を得た。

災害と心理的影響との関係について調べた研究は、過去の蓄積がある。しかし、原子力災害がひきおこす心への影響については、まだ、十分にわかっていない。地震や津波などの災害が PTSD に結びつくことは知られているが、原子力災害は、それとは別の心の問題を引き起こす。

そのことを、我々は心理学的手法を用いた研究により明らかにした。福島県で生活している母子を対象に、放射線不安、ストレス、放射線リスク認知について、事故直後から継続して調査を行ってきた。その結果、福島の母親や子どもたちの放射線不安やストレスは他県に比べて著しく高いことがわかった。
これらの影響は、事故からの時間経過とともに低下してきたが、しかし、現在でもその影響が続いている。

また、原発事故の影響は、単に不安やストレスの問題にとどまらず、子どもたちの心の発達の問題を引き起こしつつある。

原子力災害による心理的影響は、今後、長期間に渡って人々の生活に影響を及ぼし続けると予想される。

これまで心理学者は福島における原発事故の問題にあまり関わろうとしてこなかった。しかし、福島の多くの母子がこの事故によって心に痛手を受け、その影響がこれからも続くことが明らかである以上、心理学者はこの問題にもっと積極的に取り組む必要があるだろう。

話題提供:「被災地における外部からの臨床的心理支援のあり方について」
松井 豊 先生(筑波大学)

被災地の中で臨床的な活動をする上での注意点を申し上げたい。もし南海トラフ地震が起きた時に、 臨床心理士の専門家として、すぐに被災地に行かないでほしい、という話をしたい。

阪神・淡路大震災の 1 か月後に現地に入ったら、カウンセラー担当おばあちゃんがいて、その人が、カウンセラーの相手を務めた。2011 年の東日本大震災では、「カウンセラーお断り」の張り紙が出された避難所があった。つまり、心理支援ボランティアの申し出が断られることもあった。何故このような状況になったのか。被災地を訪れた臨床家が、被災者への臨床的心理支援のあり方を知らない、現地に対する情報不足、活動団体相互の情報共有のなさ、Psychological First Aid(PFA)の誤解、などが挙げられる。被災地内の臨床家と外部の臨床家では、役割が異なる。被災地内に住む臨床家の活動を優先すべきであり、外部の臨床家は、自分たちの使う物資を確保した上で、組織・団体間の調整をしてから現地に入る必要がある。

被災地以外の人間が介入する前の準備として、被災者心理を理解する必要がある。否認が長く続くことで、悲嘆への直面化が遅れること、精神科やカウンセリングに対して感じる敷居の高さ、被災地内で自己開示が抑制されることなどである。

心理支援の前に、身体からのアプローチ(足湯、リンパマッサージなど)から始めると良い。初期介入の原則(配布資料に詳細あり)に基づいて介入を行う。長期支援においては、7 日間の連続介入より、週 1 回、同じ曜日に 7 週間、行ってほしい。支援を受けた人が「次に誰が見てくれるのだ

ろう」と不安にさせないよう、自分が行けない場合は、後続の臨床家に伝達事項をきちんと伝える。地元の臨床家につないでおくことも必要である。 阪神・淡路大震災のときには、加賀乙彦氏(精神科医)がたくさんの花をかごに入れて、被災地の病院を回って花を自ら届けた。これも心理支援である。

支援者も 2 次ストレス、3 次ストレスを受けることがある。東日本大震災で被災した臨床家こそ、次の災害が起きたら、支援者を支えてほしい。被災経験のある臨床家こそ、被災者がしてもらいたいことと、してもらいたくないことがわかるはず。
ただし、「私も同じです」、「わかります」と軽々に話すべきではない。被災や喪失の経験は、個人によって異なる。被災地に入る前に事前学習する、(学会などの)組織や団体によるコントロールを受ける、などの事前準備が必要である。

指定討論 上埜 高志 先生(東北大学)

睡眠を専門としている。一(いち)精神科医としての感想を述べたい。キーワードとして、PTSD、PTG、多職種連携を挙げる。

PTSD について、アメリカの9.11の後の調査があった。医学的な厳密なものではないが、PTSDで専門機関が関わらなければならないのは2割くらい。1割は精神科で治療やカウンセリングを受け、残りの1割は治療はいらないがケアは必要だった。今回の被災地に行ってみて、2/3は何とかなっている。1割は治療、1 割は経過観察。残りの8割の人々はどう乗り越えたのか。

PTG(Post Traumatic Growth)とは、「外傷性成長」と訳すのだろうか。こういう言葉や現象に該当する人がいる。私の研究で、10 年くらいやっていて不思議だと思っていたことがある。小児外科の手術の際、不安などで QOL が悪いかと思ったら、意外と悪くない。抑うつと不安は普通の人と同じくらい、QOL は良い。データミスかと思ったが、何年やっても同じであった。そこで PTG という発想が出てきた。人間はつらい思いをばねにして乗り越えられる人がいるようだ。PTG の中で3 つの話がある。

一つは、同じような発想で、「Resilience(レジリエンス)」を挙げる、同じ過酷な状況でもへこまない。日本語で訳しにくい。無理やり訳すと精神回復力、復元力か。もう一つは、「Disability gap」、障がい者の方のズレ、ギャップ。障がい者や慢性疾患の方が意外と幸福感が高い。こちらの予想と逆だから、Disability gap として研究が進んでいる。もう一つは「Recovery(回復)」。統合失調症やうつ病の患者がある程度よくなると、社会復帰できる。そういう人たちを何とかリカバリーできないか。昔は病気になるともう治らないという発想だったが、今は違って、リカバリーさせようという発想になる。整形外科で骨折や筋肉の病気になったとき、手術後にすぐリハビリテーションを行う。医者としては良い面をあまり見ないが、その良い面を見ると、ネガティブなことを直して、ポジティブなことを伸ばせる効果が期待できる。

青木先生の活動は多職種連携そのものではないか。保健師、小児科に心理士が関わっていて、非常に良い取り組みである。筒井先生は必ずしも多職種ではないが、目に見えない不安を心理調査している。松井先生は、必ずしも多職種ではないが、同じ職種であっても、災害の現地にいる人と、現地以外にいる人など、いくつか異なる段階がある。
松井先生の講演が一番驚いた。当時思っていたことをきれいにまとめていただいた。背中に「心のケアチーム」と入れた服を着て現地に入ったら、誰も声をかけてくれない。看護師や保健師が無理なく現場に入れるが、心理士は辛い立場かもしれない。長期的に見て、1 か月後、1年後に心理士の出番が出てくる。頑張っている人を見ていて、ある時、いろいろ疲れが出てきたときに、サポートする出番が出てくる。

薬の供給は危ぶまれた。ある先生が早く製薬会社に問い合わせて、大量に送ってもらった。仕訳に困った。そこで多職種、そういう薬を整理する方が必要だとわかった。

足立先生の論文では、お子さんの PTSD が 2 年後で 1/3 ある。成人と子どもとでは状況は千差万別だから何とも言えないが、私の考えではきっちり治療していれば大丈夫である。

これからいろんな職種の人の力が必要で、それをコーディネートする必要がある。

シンポジウム第 2 部
「コミュニティづくりへの支援」

話題提供「子育て世代避難家族の地域におけるネ ットワーク形成をめざして―ある自主避難家族の事例検討」
持田 隆平 先生(早稲田大学)

私たちの研究室では、福島県外へ避難された家族への調査や支援をしてきた。避難家族の問題は複合的で、家族の集合離散、子どもにとっての父親不在と再会、父親にとっての子不在と再会、夫婦双方にとっての配偶者不在と再会を繰り返しながら生活している。それと同時に、旧地域ネットワークから離脱して、新しい地域に移転している方もいる。震災前に描いていた人生プランを、震災を機に描き直し、再構築しなければならない状況におかれて、人生の展望を失ってしまったご家族がいる。
そういう家族に多面的な支援が必要ではないかと考え、院生 4 名と教員 1 名とで、“かささぎプロジェクト”の活動を行ってきた。

埼玉県は東京に次いで 2 番目に避難者が多い。そうした方々に対して、市町村と民間が支援の在り方を模索してきた。その一環として、避難者の交流会が行われている。2013 年度時点で、一度でも交流会を利用したことがある人は 3~4 割程度であった。

私たちは、子ども達が主役になれるような活動の場の創出、地域活動に参加できていない家族を支援する目的で、避難家族による人形劇団を立ち上げ、そこに子どもだけでなく大人も巻き込んで、地域の人にも手伝ってもらいながら活動してきた。
人形劇を選んだ理由は、子どもが無理なく主体的に参与でき、家族や地域を巻き込みやすいこと、研究室に人形劇団の主宰者が在籍していたからである。

この劇団に、福島県南相馬市から避難してきたY 家が参加してくれた。募集を見て、子ども達が参加したいと声を上げた。人形劇に求めたのは、休日に子どもが過ごす場所が欲しい、避難先で人間関係を広めたい、といったことだった。池袋や長野県飯田市で開催されるイベントに出場することを目標に、人形作りや台本作り、稽古を行ってきた。

結果的に、この活動は Y 家のニーズにピンポイントで応えることができた。ソーシャルネットワーク質問票を使って、人間関係について回答を求めた。その結果、子ども達の人間関係の広がりが確認できた。また、最も人間関係を作る機会を必要としていたのは、母親だったかもしれない。人形劇以外にもいくつかの交流会があったが、“お客様扱い”を受け、母親は息詰まる思いがしたそうだ。主体的に活動できる場として、Y 家のニッチなニーズにピンポイントで応えるよう我々は活動を展開し、避難に伴う人間関係再編の渦中における状況をサポートできたのではないか。

話題提供「被災地はどのように復興したか?千年希望の復興を目指した岩沼市の復興のプロセスを見守って」
水田 恵三 先生(尚絅学院大学)

宮城県岩沼市は、死者が 181 人であり、幸いにも比較的少なかった。ピーク時には人口の 6,700人(市の人口は約40,000 人)が、26か所の避難所に身を寄せた。死者が少なかったのは避難がよく訓練されていたことのあらわれであると考えられる。しかし、当日は消防団が避難をかなり呼び掛けていて、消防団でも死者が多かった。そのため、被害状況は必ずしも死者の数だけで測れるものではないことがわかる。

私は基本的には支援活動行っていない。月に一回、水曜日の午後、仮設住宅で開催される連絡会に参加した。振り返ってみて、こうしたらいいのか、と尋ねられたこともない。2015 年に推薦があり、岩沼市の地方創生委員長になった。今回はどのように支援をしたのかを語るのではなく、どのように復興を見守ったのかを報告したい。

「地域と職場で支える被災地支援」という自著で述べたかった点は、1)フィールドワークでも、傍にいることで復興支援になる(と思いたい)、2)話をするだけでも被災者の気分が落ち着く(と思いたい)ということである。しかし、これらは、

被災者と支援者の関係がしっかりしていることが前提である。

フィールドワークとは、調査者が自分の目で見、耳で聞き、肌で感じた体験を基にした資料である。
東日本大震災の後に、宗教家の間で評価されていたのは、宮沢賢治の「雨にも負けず」の詩の中の「行ッテ」という部分だ。地域の復興支援でも、「行く」ことが必要なのではないか。

フィールドワークでは、作業観察を行う。地震後 2 年くらいで、住民の心境に変化が現れた。自立への心意気、2 年目から物資は断ろう、と返していた。この頃には、玉浦西で復興の計画が完成していた。

岩沼市の復興計画の特徴は、避難当初から、地区単位を意識した避難であったことだ。大都市以外のところでは、考えても良いことだと思う。震災直後、3 つの地区ごとに、別個の避難所へ避難した。
仮設住宅も東、西、南の地区ごとに居住し、ここでは、月一回の連絡会があった。社会福祉協議会を中心に仮設住宅、借り上げ住宅住民を支援していた。仮設住宅だけでなく、借り上げ住宅からの集団移転も多かった。他の地域では、借り上げ住宅からの集団移転はなかった。岩沼市では、行政と住民と支援者を含めた三位一体の行動であった。第一部の指定討論でレジリエンスが出てきた。地域のレジリエンスが必要だと感じた。

指定討論 安藤 清志 先生(東洋大学)

感想を述べる程度にしておきたい。お二人のご発表を伺って、共通点というか、実際、それぞれの方のスライドに出てきた言葉だが、「見守る」、あるいは「寄り添う」、という形の支援について、大変重要だと改めて認識した。もちろん、こちらから積極的に出かけて行って支援しなければならない地域、人、時期があるのは確かである。
ただ、長期的な支援を考えた時に、あまり目立たない支援というのも重要である。社会心理学では援助行動の研究だけでなく、援助を受ける心理の研究もある。援助を受けることで自尊心が傷ついたり、悩んだり、お返しをしなければならないのではないか、ということを様々な研究者が指摘している。
松井先生は「下方比較」という言葉を使われていたが、自分が援助を受けるのに適格かどうか、自分より大変な人にお先にどうぞ、逆に言えば自分が優位になることの後ろめたさが出てくる。援助を受けることを控えてしまう傾向がある。そういう状況の中で、あまり目立たず、さりげなく寄り添うのが重要ではないか。

持田先生の人形劇の活動についてはYさんに良かったね、と思いたいくらい影響を与えたのではないかと思う。たまたま1つの家族だったが、むしろ家族にはラッキーで、オーダーメイドの援助を受けたのではないか。良い援助ではないかと思った。

水田先生は普段から謙虚な方だが、それこそ重要なことである。いつも見に来てくれる人がいる、見守ることの大切さ、重要性を再認識した。東京にいていつも、被災地のことを考えているわけではない。そういう中で、被災地を忘れない、そういう声を聴いた。被災地の外側にいる私たちが忘れない、というのは、心理学的な研究もあって、基礎的な目立たない研究である寄り添う研究、見えないガジュマルの研究もできるのではないかと密かに考えている。

指定討論 野崎 瑞樹 先生(東北文化学園大学)

仙台で生活して、3 年目になる。私自身も東松島市で活動している。私は心理学を元々勉強していて、現在は社会福祉学を教えている。

社会福祉学と心理学を明確に分ける必要がないかな、ということを感じた。個人、人に対する支援、ということに限らず、環境に働きかける、その人と環境との間のうまくいかないものを、周りから調整をしていく、というのが、ソーシャルワークや社会福祉学の手法である。そういう実践に心理学の理論が生かされている。心理学の理論を活かした実践が、社会福祉学の実践にたくさん入っている。

持田先生は活動していくことを支援する支援、水田先生は地域活動の支援を行っている。コミュニティの捉え方は研究上ではどのように捉えるかによって違う。そういう視点から分けて考えたい。

持田先生の講演で紹介されたのは、活動のコミュニティである。Y 家の方々、お子さんたちにとっては、巻き込んだり活動に参加することで、役割や居場所といったものができてきて、活動を楽しんで参加する、という主体的な、やらされ感なく参加する、ということで心理学がいろいろ活かされている。活動を支援していく、というのはグループのダイナミクスという意味では心理学の理論が活かされている。それを継続していく上で心理学が活かされている感じがした。

水田先生の講演で紹介されたのは、集団移転のコミュニティである。私自身も東松島市で集団移転のコミュニティに入り込んでいる。そういう入り方には、関係づくり、通って通って顔を出して、何もしなくても行って顔を見せることが大事である。そういうことが地域の方には大事である。かっこよく支援することは地域ではありえない。泥臭い活動がとても大事なことになる。
その中で関係を構築していくことは、研究者と住民だけでなく住民の方々同士も知らない人同士だったりするので、そういう中でコミュニケーションをとっていて、コミュニティが成長していくことを感じている。そういう実践が素晴らしいと感じた

閉会あいさつ
佐藤 隆夫 先生(立命館大学)

(注)第 2 部の最後に参加者から質問が挙がり、その回答を兼ねて、佐藤先生の閉会あいさつが始まった。
(参加者からの質問)

今年も熊本、鳥取など、たくさんの災害があった。認定心理士は全国にたくさんおられる。そういう地元の方が核になって、私も認定心理士として被災地のお手伝いに伺えたら、と考えている。
認定心理士の枠で援助隊のグループを作れるような、そういう検討ができないか。

認定心理士として、こうやっていろいろと研修を受けさせていただいて、考えることはできる。
被災地支援などをやりたいと思うが、実際にどうやって参加させていただいたらいいのか。「被災地の方の心に寄り添って」、そういうようなお話もあった。行って、支える、その場にいるだけでいい、というお話があった。そういうことも含めて、今後、認定心理士がどのように進んでいくのか、ご検討いただきたいと思っている。
(佐藤隆夫先生)

おっしゃることはすごくわかります。認定心理 士の会を今年スタートさせたが、今日すごく感動したのが、凄く大勢の方がお集まりいただけた。東京と大阪で、今年からスタートさせて、キックオフミーティングをやって、あとは福岡と札幌の公開シンポジウムの後に懇談会をやったりしてきたが、独立しての開催は初めてかな、という気がする。これからもっと動いていこうと思っている。とりあえず地域の連携、領域ごとの連携について、いろいろな形で動いていこうと思っている。その一環として、そういう被災地でのお手伝いの際に認定心理士の方々に加わっていただくとか、独自の活動を展開していくということも、考えていけると思っているが、ちょっと時間をいただきたい。
ご意見があれば、どんどんメールでいいのでください。またゆっくり懇親会でお話ししましょう。

ご登壇いただいた先生方には、原稿をご確認の上、加筆修正していただきました。また先生方へのご連絡や編集作業において、東北公開シンポジウムの企画者の佐藤俊彦先生のご尽力を賜りました。ここに記して心より御礼申し上げます。

(渡邊 伸行)

認定心理士の会の春の活動は、こちらのイベントからスタートします。講演会、懇親会に参加したいけれど、なかなか会場に行くことが難しい・・・そんな方でも参加できる機会を提供したいということで、今回「ウェブ会議システムを利用した、オンラインでの交流会」を開催することにしました。

初回は講師として、認定心理士の会幹事の大崎博史先生が「特別支援教育の動向と心理職の役割」をテーマにお話しくださいます。そのお話を中心に参加の皆様とディスカッションをします。その後に大崎先生も交えて、参加者同士で自由にトークしていきます。

インターネット環境とパソコン、タブレット、スマホ等があればご自宅やオフィスから参加可能ですので、お気軽にご参加ください。(接続条件の詳細は【必要機器】をご確認ください)

  • 参加希望の方は事前に申し込みが必要です。
  • システムの都合でご参加いただけるのが 8 名までです。先着順とさせていただきます。
  • 会議に参加いただく際、通信環境等によっては接続できない可能性もございます。接続の状況を確認させていただきますが、状況によっては参加をご遠慮いただく場合もございますので、あらかじめご了承ください。
  • -
  • ウェブ会議システム“V-CUBE ミーティング”のバーチャル会議室
      1. a)インターネットに接続しているパソコン(Flash Player のダウンロード済)
        または、タブレット、スマホ(iPad、iPhone、Android 端末の場合、「V-CUBE モバイル」のアプリのダウンロード済)
      2. b)ヘッドセットとビデオカメラ
      3. 3)テーマ:「最近の特別支援教育の動向と心理職の役割-インクルーシブ教育システムの構築と推進-」
      4. 4)ゲスト講師:大崎 博史 先生国立特別支援教育総合研究所 主任研究員
        http://www.nise.go.jp/cms/
      5. 5)進行:池田 琴世(認定心理士の会幹事)
      6. 6)参加費:無料
      7. 7)参加申込方法:次の情報を添えて、件名「Netde 交流 4/22 申し込み」として、メールアドレス(jpa-ninnokai-event@psych.or.jp)に参加申し込み願います。
        1. 1. 認定心理士登録番号(認定番号)
        2. 2. 氏名
        3. 3. メールアドレス
        4. 4. バーチャル会議の経験:あり、なし

参加申し込みをされた方には、当日参加するための URL をメールでご連絡いたします。

(池田 琴世)

  • 「障がいのある人もない人も“共に生きる”社会を目指して
    -Diversity in Harmony(調和の中の多様性):心理学が社会に貢献できること-」
    昨年の 7 月 26 日、神奈川県の障がい者施設で起きた大変痛ましい凄惨な事件は、日本のみならず世界の人々に大きな衝撃を与えました。
    日本心理学会及びその中の一組織である、認定心理士の会では、障がい者の基本的人権を侵害する今回の事件に遺憾の意を表し、このような悲しい出来事が起きない社会を構築するために努力を重ねていきたいと思っています。
    また、2014 年 1 月に、日本は、障害者の権利に関する条約を批准しました。さらに昨年 4 月からは「障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律(障害者差別解消法)」が施行されています。
    このような昨今の社会情勢等を鑑み、今回は前述のテーマを設定し、障がいのある人もない人も“共に生きる”社会(共生社会)の実現を目指して、私たちが学んできた心理学が社会に貢献できることは何かについて考え、議論を進めていきたいと思います。
  • -の時間帯を予定)
  • 東広島芸術文化ホール「くらら」
    (JR 山陽本線 西条駅下車、徒歩 4 分)

昨年同様に、今年度も認定心理士の会では各地でさまざまなイベントを開催する予定です。その第 1 弾として、来る 2017 年 5 月 20 日(土)に本会主催の中国四国セミナーを開催します。会場は、広島大学のある東広島市の東広島芸術文化ホール「くらら」です。中国四国地域での開催は認定心理士の会としては初の開催となります。このセミナーの後半では、あらためて「日本心理学会認定心理士とは?」という説明もさせていただきます。
また、セミナー終了後には、JR 西条駅近くで懇親会も開催する予定です。中国・四国地域の会員の皆様をはじめ、近畿や九州北部地域の会員の皆様等の多数のご参加をお待ちしております。なお、このイベントは、会員以外の方でもご参加いただけます。手話通訳や要約筆記等が必要な方にも対応させていただきます。皆様、是非、ご参加ください。


    1. 開会
      • 広島大学教育学部 准教授
        「障がいのある人もない人も“共に生きる”社会-教育の今-(仮)」
        竹林地 毅 氏
      • 追手門学院大学心理学部 教授
        「障がいのある人もない人も“共に生きる”社会-ソーシャルサポートの心理学-(仮)」
        浦 光博 氏
      • 「障がいのある人もない人も“共に生きる”社会を目指して
        -Diversity in Harmony(調和の中の多様性):心理学が社会に貢献できること-」
      • 上記話題提供者
      • 認定心理士の会幹事(金沢工業大学 准 教授)
        渡邊 伸行 氏
      • 日本心理学会常務理事(日本大学 教授)
        「日本心理学会認定心理士とは?(仮)」
        横田 正夫 氏
    2. 閉会
    3. 大崎 博史(国立特別支援教育総合研究所)
      ※セミナー終了後には、JR 西条駅近くで懇親会を開催する予定です。場所は未定です。懇親会参加費は 4,000 円程度を想定しております。
  • (参加される方は、事前のお申込 みをお願いいたします。)
    • ・宛先:jpa-ninnokai-event@psych.or.jp
    • ・件名を「中四国セミナー参加希望」としてください。
    • ・以下の項目を本文に記入してご送信ください。
      1. 1. 認定心理士の方は認定心理士登録番号(認定心理士でない方は、記入不要)
      2. 2. 氏名
      3. 3. メールアドレス
      4. 4. 懇親会参加希望の有無
      5. 5. その他

      本セミナーへの参加に当たり、誘導、手話通訳、要約筆記、車いす等の配慮を必要とする場合は、申込時にその旨お知らせ願います。
    • ・シンポジウムの定員は 240 名です。(先着順で受付)

    ※なお、当日、空席がある場合のみ参加受付を行います。(事前の申し込みの方が確実です。)
  • シンポジウム開催当日に会場運営をお手伝いくださるボランティアの方を募集いたします。参加者の誘導等にご協力いただけましたら幸いです(先着5名様)。
    お申し込みは、上記のメールアドレスまで、件名は「中四国セミナー運営ボランティア希望」でお願いします。

※なお、このテーマの第 2 弾として、今年 9月9日(土)にも構成や内容等を変えて、関東地区(会場は、神奈川県横須賀市にある、国立特別支援教育総合研究所を予定)においてもセミナーを開催することを計画中です。

中国四国セミナー、関東セミナーのどちらのセミナーも奮ってご参加ください。

(大崎 博史)

「認定心理士の仲間たち」では、認定心理士資格を持つ方たちに寄稿して頂き、会員同士が“つながるきっかけ”を作りたいと考えています。寄稿して頂いた方への連絡方法は、「寄稿された方へのご連絡」をご参照ください。

天野靖信様

「キャリアの羅針盤となった認定心理士の資格」

私は、理科系の大学院博士前期課程を修了後、ソニー株式会社で 17 年間は研究・開発・設計、その後 17 年間は経営・管理・人事・サービス系の業務に従事しています。その間、50 歳を過ぎてからキャリアというものに興味を持ち、キャリアカウンセラー・コンサルタントの資格を取得しました。
そして、次のステップは臨床心理士と考え、まずはその前段階の準備の勉強として、認定心理士の資格を取得いたしました。

認定心理士の資格取得には放送大学で単位を取ることで、1 年半かかりました。その過程で広く心理学を学ぶなかで、社会心理学に強く惹かれるものがあり、進路変更をしました。そして、放送大学の大学院で 2 年間学び、この 3 月に修士課程を修了いたします。生涯で 2 つ目となった修論のテーマは、自動性の観点からのヒューマンエラーの研究でした。6年前に対人サービスの業務に携わったときからヒューマンエラーによるインシデントの低減に取り組み、毎年発生件数を半減させ、現在では約 1/30 まで減少しています。その実績の原動力の 1 つになっている研究でもあります。この研究を通して、認知心理学の領域に踏み込むことになり、次の研究テーマでは、意思決定に関することを考えています。

思えば自分自身の性格は保守的な傾向が強く、物理学だけではなく心理学においても、一つの専門性にのめり込む傾向があると感じています。しかし、認定心理士の資格取得の際に広い心理学領域で学べたことが、別の領域へ遷移するハードルを下げているように思えます。またそれが一過性のものではなく、認定心理士の会のイベント等で、モチベーションも継続され、広い領域への興味を維持することにつながっているのは、ありがたい限りです。今後、認定心理士の会の活動が、ますます盛んになっていくことを期待しております。
これからも宜しくお願いいたします。

堀江 貴久子 様

「認定心理士を取得して」

専業主婦から一念発起し、国立大学の教務事務の仕事に就いて 10 数年が経ちました。入学直後の学生から博士課程、また社会経験のある学生も含めて、多岐にわたる相談と向き合いながら、心理学の必要性を痛感しておりました。そこで社会人入学が可能な大学を探し、心理学の基礎を学びました。学んだ大学の通信課程の第一期生ということもあり、諸先生方の熱意や事務の方々のサポートによって、仕事との両立で挫折しそうな時期も、無事に乗り越える事ができました。そして何より心理学の深さに触れ、学び、昨春には心理学学位とともに、認定心理士を取得しました。

その後、上司の勧めから、学生総合支援センターのキャリアサポートルームへ異動しました。現在では、学生の就職活動や大学生活に関連したあらゆる相談業務に従事しております。例えば、浪人や留年に悩む学生からは、自己肯定感の低下や社会に対する不安が、大人には想像もつかないほど大きく、心中を占拠しているように感じるときがあります。そのようなときには、私も模索しながら、必要な心理的知識を得ている証として「認定心理士」という基盤が支えとなっております。

昨年は認定心理士の会に入会し、関西でのシンポジウムも、知り合いも居ないまま一人で参加しました。不安もありましたが、実際には参加者の皆さまと会談し、職場だけでは感じ取れない価値観に刺激を受け、また、異業種の方との繋がりが出来たことも私自身を見つめる機会となりました。

職場における学生支援では、障がい者支援やカウンセリング業務へのリファーが困難に思われるケースや課題もありますが、学ぶ気持ちを持続させながら、今後も認定心理士の会で多様な方たちとの分かち合いや意見交換などから、学生への支援をより充実させていきたいと思っております。

(担当 中村 由美)

寄稿された方へのご連絡

この欄に掲載された方に連絡を取りたい方は、jpa-ninnteinokai-contact@psych.or.jpまで、件名を「○○様」として、メールをお送りください。

事務局より責任をもってご本人に転送いたします。

今号は、東北公開シンポジウム講演録を中心に、新しい試みである「Net de 交流! 認定心理士」、そして、中国四国地区で初めて開催される認定心理士の会企画「2017 認定心理士の会 中国四国セミナー」についての開催宣伝と内容が盛りだくさんでした。

「認定心理士の仲間たち」でも引き続き執筆のご希望をお待ちしております。盛んな交流を展開していきましょう。

(高瀬 堅吉)

  • 認定心理士の会幹事会〒113-0033 東京都文京区本郷5-23-13 田村ビル内公益社団法人日本心理学会事務局jpa-ninteinokai@psych.or.jp
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