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  3. ニューズレター 2020 年度 No.1

The Japanese Psychological Association News Letter

vol.07

昨年の6月より資格担当の常務理事を拝命しております津田彰(久留米大)です。もっと早い時期にご挨拶すべきところ、失礼していました。新型コロナウィルス感染拡大がなかなか収束しない中、会員の皆様におかれては大変困難な時期をお過ごし、対応に苦慮されているのではないでしょうか。心よりお見舞い申し上げます。

この未曾有の事態に対して、日本心理学会では流行の早い段階より、ホームページに「新型コロナウィルス対策」の特設ページを作成して対応に当たってきました。坂上理事長からのお見舞いメッセージをはじめ、世界各国の心理学会とも連携して、感染に伴って生じる諸問題への心理学的支援法の情報提供を行っています。また感染拡大に伴い、収入の減少等の理由によって、学会の年度会費ならびに認定心理士資格申請の認定料の納入が困難になった方には、納入期限延長などの措置をとりました。

認定心理士の資格制度は1990年に誕生しましたので、今年はちょうど30周年の記念すべき年です。この間、とくに近年は、毎年3,500名前後の資格を認定し続け、今年6月の時点の累計概算で64,000余名の認定心理士が誕生していることにとても喜ばしい思いがいたしております。と同時に、社会的責任の大きさも実感しています。認定心理士の会には、毎年500名前後の方々に会員登録をいただき、同時点での会員数は約4,400名となっています。

2017年度からは認定心理士(心理調査)の資格も新設され、これまでに156名の方が取得されています。心理調査士の資格については、先日の理事会において、すでに認定心理士の資格を有している人たちも申請できるように申請資格要件の変更が認められました。今後ますます有資格者が増加することが見込まれております。情報社会における多様化したニーズに対応できる調査手法とデータ分析のスキルを備えた専門家として、社会から認めてもらえる人材を学会が積極的に認定していくことができればと願っております。

名称独占となる国家資格である公認心理師が続々と誕生していく中にあっても、認定心理士の昨年度の審査件数はわずかに減少しただけでした。今後、公認心理師の国家資格と認定心理士及び認定心理士(心理調査)の資格をどのように差別化し、これらの資格を持続可能な形で発展させていくのか、心理学ワールドにおいて議論が始まっております。

このような動向の中で、認定心理士の会運営委員会委員長の高瀬堅吉先生を中心に運営委員と支部会幹事の皆さんが連携協働し合って、いろいろな事業を活発に展開されていることを大変心強く感じております。認定心理士資格認定制度設立30周年の節目ということで、全国各地でのイベント開催にあわせていろいろな記念行事を考えていましたが、残念ながらコロナの状況で中止などの変更を余儀なくされております。昨年の日本心理学会大会で好評だった社会連携セクションでの認定心理士の会員による学術ポスター発表(研究または活動実践などの報告)も中止せざる得なくなりました。

しかし、コロナ時代のシチズン・サイエンス活動として、IoT機器と情報通信ソフトを活用した新たなコミュニケーションが急速に普及拡大しました。この意味では、社会の至る処で認定心理士の活躍の場が拡大したとも考えられます。学会としましても、皆さんが取得された認定心理士及び認定心理士(心理調査)の資格が今後の新たなキャリアパスの一助となったり、省察的実践家としての自己実現につながったりするように全力で取り組んでいきたいと思っています。改めて、会員の皆様のご協力とご支援よろしくお願いします。

(日本心理学会資格担当常務理事:津田彰)

認定心理士の会会員の皆さまは、ご所属に関わらずいずれの支部会のイベントにもご参加いただけます。オンラインによるイベントなど、是非、他支部会のイベントにもご参加ください。

    • 嘘と正直さの認知神経科学
    • 阿部修士(京都大学こころの未来研究センター・准教授)
    • 11月1日(日) 13時〜14時(予定)
    • わたしたちは日々の生活の中で、嘘をつくことで利得を得られる状況にしばしば直面する。嘘をつくか正直に行動するかには、大きな個人差が存在するが、その意思決定の神経基盤は未だ明らかではない。本講演では主に、1) 正直さの個人差を規定する報酬感受性の神経基盤、2) 米国刑務所内のサイコパスにおける不正直さの特徴と神経基盤についての、講演者らによる脳機能画像研究の知見を紹介する。
    • 本イベントは、事前登録いただいた方に対してZoomのオンライン同時配信にて実施する予定です(要事前登録、先着200名)。認定心理士もしくは日本心理学会会員でしたら、どなたでも無料でご参加いただけます。参加申込方法については、下記の認定心理士の会イベントのホームページに記載予定ですのでご確認下さい。
      https://psych.or.jp/authorization/ninteinokaievent/

    (北海道支部会:小川健二)

    • ものづくり心理学のすすめ
    • 神宮英夫(金沢工業大学・教授)
    • 12月5日(土)午後(開始時間は後日決定)
    • Zoom オンライン会場
    • 心理学を応用して、お客様の心を動かすものづくりを目指すのが、ものづくり心理学です。心の動きを測定・評価することは、心理学にとって基本的なことです。何気ない身の回りの製品やイベントなどが、ものづくり心理学では刺激になります。心の動きがわかり、その動きをもたらしている品質を特定することができれば、よりよいものづくりにつなげることができます。製品開発やイベントプロヂュースなどの事例を交えてお話しします。

    本年度の北陸支部会では、北陸在住の研究者によるオンラインでの講演会を開催していきます。オンラインでの交流会も開催予定ですので、北陸在住の方はもちろん、多くの方のご参加をお待ちしております。

    (北陸支部会:松井三枝・伏島あゆみ)

  • 近畿支部会では、昨年度にCovid-19の影響で開催が叶わなかった「SNS等の功罪を心理学から考える」をテーマとしたセミナーを今年度こそは実現したいと準備を進めています。リモートでの会議・授業・飲み会やオンライン帰省などが活発化した今だからこそ、皆様とともに考えておきたいテーマだと感じています。

    講師に変更はなく、綿村英一郎先生(大阪大学大学院 人間科学研究科 准教授)と笹原和俊先生(名古屋大学大学院 情報学研究科 講師)がお引き受けくださっています。いずれも社会心理学・情報行動学をご専門に、今回のテーマにまつわるご研究を精力的になされている先生方です。

    2月から3月にかけた時期に、立命館大学大阪いばらきキャンパスでの開催を想定していますが、現状の世情にて現時点で開催日時を決定することが難しい状況です。場合によっては、皆様と一堂に会してではなく、オンライン上で開催することも視野に入れています。もう少し予定時期が近づきましたら詳細決定し、ホームページやメーリングリストにて告知させていただきます。

    (近畿支部会:佐藤隆夫・田中芳幸)

【関東】関東支部会イベント開催報告1:第3回公開セミナー「眠りの謎に挑む心理学」

セミナー会場の様子(上田駅前ビル パレオ)
セミナー会場の様子(上田駅前ビル パレオ)

関東支部会では、2019年度の3回目のイベントとして、昨年11月4日(月・祝日)に、長野県上田市の「駅前ビル パレオ」において、長野大学との共催により、公開セミナー「眠りの謎に挑む心理学」を開催しました。当日は、31名の方にご参加いただきました。この中で、認定心理士資格をお持ちの方は13名でした。一般公開でしたので、地元の市民の方にもご参加いただきました。本セミナー開催に先立つ昨年10月には、台風19号により、長野県内におきましても千曲川流域などで浸水の被害があり、長野市などでの水害が全国的に報道されました。被害に遭われた全国の皆さまには心よりお見舞い申し上げますとともに、一日も早い復旧をお祈り申し上げます。本セミナー会場付近では、幸い、浸水被害はなかったものの、千曲川に架かっていた地元のローカル鉄道の鉄橋が崩落する被害がありました。新聞等でも報道されましたように、北陸新幹線の多くの車両が長野市の車両基地で水没して使用できなくなった影響で、セミナー開催時点で北陸新幹線の運行本数が平常時より減っており、遠方から上田市内の会場にご移動くださった参加者の方には、ご不便をおかけしたのではないかと思います。セミナー開催前には、災害の影響をご心配くださった会員の方もいらっしゃったと聞き及びました。そうした事情もあってか、一昨年に上田の同じ会場でシンポジウムを開催したときよりも、ご参加の人数が若干減っておりましたものの、おかげさまで無事に開催できましたことを、ここにご報告させていただきます。

昨年に引き続き、今年もJR北陸新幹線の上田駅から徒歩1、2分程度という交通至便の会場を利用しました。紅葉シーズンに合わせて開催時期を選んだつもりでしたが、昨秋の上田は比較的気温が高く、紅葉がまだ、あまり見られない状況であったのは残念でしたけれども、当日は天候にも恵まれましたので、遠方からご来場くださった皆さまには、心理学の学びと合わせて、信州の美しい緑の山々の景観もお楽しみいただけたのではないでしょうか。シンポジウム終了後に開催した懇親会は、上田駅近くの郷土料理のお店で行いました。このお店では、千曲川のアユやコイなどの川魚の料理を出していただき、参加者の方には、信州の味覚をお楽しみいただきながら、講演者の先生方とご歓談いただけたのではないかと思います。

セミナーのタイトルは、「眠りの謎に挑む心理学」でした。睡眠は、私たちがほぼ毎日経験しておりますが、科学的に十分解明されていない部分もまだ多くあります。睡眠の問題を心理学で扱うのか?と疑問に思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、われわれ人間の脳機能を支える基盤であって、認知や感情の機能にも多大な影響を与えうる問題であり、臨床心理学ではもちろん、基礎心理学でも重要な研究テーマです。

今回のセミナーでは、日中の眠気や夢見などの睡眠に関連した問題にお詳しい3名の先生方(広島大学の林光緒先生、江戸川大学の福田一彦先生、および東洋大学の松田英子先生)にご講演をいただきました。この3名の先生方は、日本における睡眠の心理学研究をリードなさっておられる方々です。私自身も睡眠を研究テーマのひとつにしており、平素からご指導いただいている先生方でもありました。

最初に、林光緒先生からは、「日中の眠気と居眠りの謎」というタイトルで、日中の眠気に関連した要因や、昼寝の効用などについてお話をいただきました。昼寝の時間の長さと、さまざまな病気のリスクとの関連についても、たいへん興味深く拝聴しました。眠りから目覚めた後に強い眠気が続き、覚醒水準の低い状態が続くことを睡眠慣性と呼びますが、仮眠から目覚めた後の睡眠慣性を下げる方法もご紹介いただきました。時間がもったいないからと言って、睡眠時間を削って睡眠不足の状態でいると、覚醒水準が低下して、一日がかえって短く感じるというお話は、私自身も心当たりがあり、自らの生活を反省するところが大いにございました。

続いて、福田一彦先生からは、「金縛りや夢の不思議現象とレム睡眠の謎」というタイトルで、ご講演いただきました。AserinskyとKleitmanによるレム睡眠の発見と、それ以後に明らかにされた、夢や金縛りに関連した脳研究のさまざまな知見を紹介していただきました。夢や金縛りを脳活動に関連した生理現象として扱い、脳研究に基づいて解明するアプローチであり、フロイト以前からの不可解な心の謎のひとつが、かなりの程度まで解き明かされようとしているように感じました。私自身は金縛りを過去に2度ほど経験したことがありましたが、特に初めて経験したときは、それが金縛りであるということもわからず、とにかく強い恐怖を感じました。かつては妖怪のような、超自然的で、なおかつ、人間に何らかの害を及ぼすような悪意ある存在と関連づけて考えられたこともあったようで、これは金縛りを経験する際に、私に限らず、恐怖感情を伴う場合が多いこととも関係がありそうですが、今後の脳研究の進展に大いに期待したいと思いました。

最後に、松田英子先生から、「夢にあらわれる個性と悪夢の謎」のタイトルでご講演いただきました。夢の内容に関する発達的な変化やパーソナリティの関連など、夢に関する一般的な特徴についてのお話も興味深かったのですが、それと合わせて、私が特に関心を持ったのは、悪夢の話題でした。その中でも、悪夢の類型化や、その治療といったお話は、平常時だけでなく、災害後の被災地支援でも重要なのではないかと感じました。私自身、悪夢を見た経験は、さほど多く記憶に残っていないように感じましたが、あらためて思い起こしてみれば、朝に目覚めて「ああ、夢だったか、良かった」と、ほっとした経験も何度かあったように思い出されます。こうした悪夢も、一回かぎりで済めば良いのですが、これを繰り返し経験したら…と考えますと、悪夢の生起するメカニズムや治療法の研究の大切さを痛感いたしました。

先生方のご講演の後、質疑の時間には、会場から多くのご質問を寄せていただき、先生方から丁寧なご回答をいただきました。比較的小規模の会場ではございましたが、皆さまの知的好奇心を刺激するホットな講演会になったと感じます。たいへん好評でしたので、同様のセミナーを首都圏でもいずれ開催できればと考えております。主催側の一員として、ご講演の先生方と、ご参加くださった皆さまに心より御礼申し上げます。

(関東支部会:佐藤俊彦)

【関東】関東支部会イベント開催報告2:第4回公開セミナー「意識と行動のサイエンス~心理学は人間をどこまで理解できるか?~」

セミナー会場の様子(高千穂大学 タカチホホール)
セミナー会場の様子(高千穂大学 タカチホホール)

関東支部会では、2019年度の4回目のイベント(セミナー)として、昨年11月9日(土)に、東京都杉並区の高千穂大学において、第4回公開セミナー「意識と行動のサイエンス~心理学は人間をどこまで理解できるか?~」を開催しました。実は、一昨年にも同じタイトルにて、同じ講演者、指定討論者の先生方にお願いして、長野県上田市でシンポジウムを開催いたしましたが、一昨年の開催後のアンケート等でたいへん好評でしたので、昨年には、首都圏での開催を企画いたしました。当日は、96名の方にご参加いただきました。そのうち、認定心理士資格をお持ちの方は77名だったとのことです。日本心理学会の会員の先生もお越しくださっていました。学会の事務局からは、首都圏での開催ということもあって、参加人数100名という目標値を開催前にいただいており、これを達成できるかどうか、少し不安でしたが、多くの皆さまにご参加いただき、目標人数をおおよそ達成することができました。これもひとえに、講演者および指定討論の先生方と、ご参加くださった皆さまのおかげです。主催側を代表して、この場をお借りして御礼申し上げます。

高千穂大学は、京王井の頭線の西永福駅から徒歩10分程度の距離にある、閑静で落ち着いた雰囲気のキャンパスでした。会場となった教室は、キャンパスの入り口からすぐのところにある、新しい建物の中にありました。シンポジウム終了後に開催した懇親会は、西永福駅近くのレストランで行い、10名の会員の方が参加くださいましたが、参加者の方には、鶏肉を中心とした美味しいお料理とともに、ご講演くださった先生方との歓談の時間をお楽しみいただけたかと思います。

セミナーのタイトルは、一昨年と同様に、「意識と行動のサイエンス~心理学は人間をどこまで理解できるか?~」とさせていただきました。心理学の基礎領域から、意識研究と行動研究の最先端で活躍なさっておられる中堅の研究者お二人(東京大学の本吉勇先生と藤田医科大学の宮川剛先生)からご講演をいただきました。私にとっては、大学院生の頃から存じ上げているお二人であり、いつか、じっくりとお話を伺ってみたいと思っておりました。昨年もお二人のご講演を拝聴し、さまざまなことを学ばせていただきましたが、今回のセミナーであらためてお話を伺いながら、新たに学べたことも多くございました。いずれのご講演も、意識や行動の問題について、種々の実験データに基づいて、知見を丹念に積み上げながら、最終的な結論へと収斂させておられて、かなり奥行きのある充実したご講演であったと感じました。

最初に、本吉先生から、「知覚と意識の心理学~意思決定とクオリアの謎~」というタイトルで、知覚の問題を中心に、今年もさまざまな興味深いお話をいただきました。意識、ないしクオリアの生起する過程には、ずいぶんと意外なものがありそうです。視知覚のメカニズムを考えるとき、われわれの目に映ずる構成要素の単純な総和によって、体験する内容が決まるわけではないようです。例えば、私たちがものを見るときに感じる透明感や、金属のメタリックの質感が、どういった刺激の条件から作り出されるのかを、デモを通して解説いただいたときには、前回も同じデモを拝見して、今回2回目であったにもかかわらず、あらためて驚きを覚えました。

次いで、宮川先生から、「脳内中間表現型~遺伝子と行動をつなぐためのキーコンセプト~」とのタイトルで、ご講演をいただきました。遺伝子の特徴と行動の特徴との関係性を解明するためには、その中間にある過程を解明することも重要な課題であり、その中間過程の有力な候補として、ある種の脳の解剖学的特徴が関わっている可能性をご教示いただきました。「脳の脱成熟化」ないし「未成熟脳」という特徴であり、遺伝的に変異したマウスの膨大な行動データを整理する中で新たに見出された、いわば「脳の若返り」とでも呼べそうな現象ですが、残念ながら、「若返り」という言葉から連想されるように、われわれの脳や行動にポジティブな影響を与えてくれるわけではないようです。むしろ、精神や神経の疾患に関わっている可能性があるというお話でした。

シンポジウムの後半には、討論の時間を設けて、ベテランの研究者お二人(立命館大学の佐藤隆夫先生と東北大学の阿部恒之先生)に指定討論をお願いし、ご講演内容の問題点を整理し、議論していただきました。

実は、このセミナーの冒頭におきまして、企画者である私(佐藤俊彦)から心理学の歴史についての簡単な説明と、ちょっとした問題提起をさせていただいておりました。簡単な説明と申しますのは、今回のタイトルにもございますが、心理学における意識と行動の研究に関する歴史的背景について、心理学の概論レベルの知識について、ごく簡単にまとめたつもりでした。佐藤隆夫先生の指定討論の折に、この意識研究と行動研究の流れを、あらためて解説していただき、私の説明で不足していた部分も補足してくださって、私もたいへん勉強になりました。

次いで、阿部先生の指定討論の際には、阿部先生が所属なさっている東北大学で所蔵されているWilhelm Wundtの蔵書(ヴント文庫)について、ある種の謎解きの過程をご紹介いただきました。同大学の大学院生のときにヴント文庫を何冊か借り出していた私も、当時を思い出しながら、たいへん懐かしく、楽しく拝聴いたしました。

今回のセミナーのテーマは、まさに心理学の科学的基礎をなす領域であり、心理学の学問としての根幹部分、つまり、人間の意識が生まれるメカニズムや、行動の背後にある生物学的なメカニズムに関わる部分でした。こうした心理学の基礎的なテーマについて、国内外で活躍する先生方をお招きしてシンポジウムを開催できたことは、たいへんありがたく思いました。当日の受講アンケートの結果を拝見したところ、全体的に、たいへん好評でした。これはひとえに、4名のスピーカーの先生方の周到なご準備とご配慮によるところと思います。会場の皆さまからは、ご講演内容について、多くのご質問をいただき、それに対して、先生方からもご丁寧にお答えいただきました。懇親会の席でも、「基礎心理学の話題のほうが興味がある、これからもやってほしい」というご要望もいただきました。また、いずれかの機会に、基礎心理学のテーマで、セミナーを開催したいと考えております。

(関東支部会:佐藤俊彦)

【北陸】北陸支部会イベント開催報告:“オンライン講演会 in 石川”

当日の様子
当日の様子

今回は「心理学を地域社会で活用する試み」というテーマでした。渡邊伸行先生(金沢工業大学)には、(1)観光用ポスターの評価、(2)似顔絵捜査、(3)心理学に関する学生プロジェクトの話題を、井戸啓介先生(富山県立大学)には企業との共同研究の取りくみの概要をご紹介いただきました。特に、地域の観光用ポスターごとに、「親しみやすさ」や「派手さ」などの評価が大きく異なるという話題に興味を持った方が多かったようで、様々な質問をいただきました。

オンラインお茶会では、様々な地域の認定心理士の方に、どのような場面で資格を活用され、何を感じていらっしゃるのかをお話しいただきました。「資格を社会の中で生かしたい」と多くの方が思っていること、様々な課題はあるが、そのためには、自分の出来ることを積極的にアピールしたり、他の資格を取得して相乗効果を上げることが必要ではないか、といった意見が挙がりました。

講演会の参加者は46名、その後のお茶会の参加者は30名ほどで、北海道から沖縄、海外まで、多くの地域の方にご参加いただきました。特に、幹事が個人的に印象に残っているのは、自分や家族のために資格を取ったことや、コロナ禍においてもオンラインでのつながりがあることを、本当に嬉しそうに報告してくださった方のお話しです。実生活の中で学びを楽しんでいることがひしひしと伝わり、こちらも暖かい気持ちになりました。

今回は、北陸支部会主催では初のオンラインイベントということで、不慣れな部分もあり、無事にできるかと少し(とても?)不安でしたが、参加者の皆様のご協力のおかげで無事に終了いたしました。本当にありがとうございました。

(北陸支部会:松井三枝・伏島あゆみ)

【中国・四国】中国・四国支部会イベント開催報告:中国・四国支部会公開セミナー

セミナーの様子
セミナーの様子

2020年2月15日(土)13時より、中国・四国支部会公開セミナーを、広島市の広島大学・東千田未来創生センターにて開催しました。今回のテーマは「ワーキングメモリからみた発達障がいと児童生徒の学習支援」。認定心理士23名を含む56名の方々にご参加いただきました。

セミナーは2部構成で、まずは広島大学教育学研究科教授・湯澤正通先生より「学習障がい等を抱えた児童生徒のワーキングメモリアセスメント」と題しての講演をいただきました。ご講演では、湯澤先生の研究チームにより開発された、子どものワーキングメモリのアセスメントツール「HUCRoW(フクロウ)」の紹介もありました(子どもがパソコン画面を見ながらマウスを操作してゲーム課題を行います。小中学生の教育・療育の関係者は無料で利用可能です)。途中に質疑応答や参加者での話し合いを数回はさみながら、ワーキングメモリの理解を深めていくことができました。

続いて、発達ルームそら代表・河村暁先生より「児童のワーキングメモリの問題に対応した読み書き算数の支援」と題しての講演をいただきました。河村先生のご講演でも、ワーキングメモリの特性を生かしたオリジナルの学習支援ツールを実演いただきました。それとともに、先生ご自身の数々のユニークな体験や、子どもとの関わりの様子が生き生きと語られ、パソコン教材の支援の具体例が興味深く示されました。

今回のセミナーには、日頃より子どもと関わる臨床現場に携わっている方々、学校の先生方、そしてまさに子育て中の親御さんなど、当日参加も含め、たいへん多くの出席をいただきました。ありがとうございました。講演後の懇親会にも多数の方が出席され、講師の先生方や参加者同士との交流を楽しんでいただいている様子でした。

セミナーの様子
セミナーの様子

(中国・四国支部会:宮谷真人・山崎理央・森岡陽介、前幹事:松尾浩一郎)

【オンライン支部会】オンライン支部会会長:坂田省吾先生 ご挨拶

6月22日(月)幹事お茶会の様子
6月22日(月)幹事お茶会の様子 
参加者:坂田省吾(左上)、石川裕美子(中央上)、竹中あかり(右上)、池田琴世(中左)、目片晃子(真中)、浅野良雄(右中)、片山勝己(下中)

今年の4月からオンライン支部会長に就任しました坂田省吾(広島大学)と申します。ニューズレター初登場ですので、一言ご挨拶を申し上げます。日本心理学会の中に認定心理士の会があることは知っていたのですが、その認定心理士の会が中心となってオンライン支部会というのが存在することを浅学菲才にも知りませんでした。2019年のシチズン・サイコロジスト奨励賞受賞者である池田琴世さんのパワフルなリーダーシップの下、オンライン支部会は着実な活動をしています。今年は特にCOVID-19のこともあり、対面の集会開催が難しく、インターネット集会が注目されています。「Net de 交流!」も既に14回を数えています。認定心理士の方が話題提供いただいた、「日本心理学会第83回大会社会連携セクション・ポスター発表オンライン再現イベント」の3回分を含めて、今回の報告だけでも6回分あります。それを支えているのが5人の幹事である浅野良雄(群馬)、石川裕美子(イングランド)、片山勝己(広島)、竹中あかり(京都)、目片晃子(京都)(50音順)です。初めてZoomで参加したときにいきなり@イングランドと表示されているのを見て、さすがworld wide webと実感しました。地域を越えて多くの認定心理士の方々と繋がれるといいなと思っています。

(オンライン支部会:坂田省吾)

【オンライン支部会】オンライン支部会イベント開催報告1:第12回 Net de 交流! 認定心理士

講師:光藤宏行先生
講師:光藤宏行先生

【テーマ】こんな研究したいけど大丈夫?? 心理研究倫理「再入門」
【講師】光藤宏行先生(九州大学、認定心理士の会運営委員会委員)
【開催日】2020年2月22日

参加者は18名でした。始めに、私たちが「人間」という特殊なものを扱うという点で必要となる、倫理的配慮を気にすべき対象者について示して頂き、その後、心理学に関わる研究で倫理的に「してはいけないこと」には何がありえるのか?というテーマでグループに分かれてディスカッションをしました。

参加者の皆さんからは、「事前の同意は必要であるが、一方で事前にお知らせしてしまうと実験が成立しない場合がある、それを人権侵害にならない方法を考え出すことも心理学の研究の一つではないか」という意見や、「オンライン実験による疑念」についても議論されました。それに対し光藤先生は、時代とともに必要な倫理も変化してゆくこと、そして心理学研究を進める上で、「私達研究者自身がしっかりと考えなければならない」ことの重要性をお話くださいました。

その後、日本心理学会倫理規定、心理学実験による倫理の原則、出版の倫理についてデータの改ざんや捏造等について、過去の有名な実例を示しながら私達が身近に感じられる事例をいくつかご紹介くださいました。最後に「研究は人類の知的なチャレンジであるとともに、一人に一度しかない人生の醍醐味である。困難や限界を感じても、トラブルも楽しんで取り組もう!」と締めくくられ、今回、とても重要であるにも関わらず、普段なかなか講義として受ける機会がないテーマに、このように短時間で原点に立ち返り考えるご講義となりました。

(オンライン支部会:目片晃子)

【オンライン支部会】オンライン支部会イベント開催報告2:第13回 Net de 交流! 認定心理士

講師:本園大介氏
講師:本園大介氏

【テーマ】グラレコ×認定心理士×会社員、パラレルキャリアとしての資格の活かし方
【講師】本園大介氏(通信関連会社勤務、グラフィックレコーダー、認定心理士)
【開催日】2020年4月10日

参加者は46名でした。本園氏(ぞのさん)のお話はまず、3.11の震災の時に職場の天井が落ちてきて、間一髪で難を逃れたことで、命のはかなさを実感し、今ある時間を大切にし、会社の外の人々と積極的に関わることを始めたこと。認定心理士、グラフィックレコーダー(グラレコ)、ファシリテーション、漫画家、ワークショップデザイナと、次々と知識・資格を取得して、パラレルキャリアをはじめた経緯をホワイトボードにグラレコをしながら説明してくださいました。そして人より少し出来ること、例えば100人に1人程度の能力を4つかけ合わせれば、1億人にひとりの価値のスキルを持つことができること、認定心理士を学んだ知識は現在の仕事や、他のスキルにも役に立っていることをお話いただきました。

ぞのさんのお話の後グループに分かれ、それぞれが心理学を仕事や生活の場面で使っている事例を話していただきました(図を参照ください)。 副業をお金にするにはどうしたらよいですか?という質問へのぞのさんの答えは「人が喜ぶことをすれば最終的に嬉しいこととしてお金という形にもなって自分に返ってきます」。

参加された方のコメント:「心理学的説明が殆どなかったのが残念です。交流出来たことは良かったです」。「心理学的知識を活かした体験ではなく、資格保有していることで何か職業やビジネスに活かしている事例をもう少し聞きたかった(効力があるのか、ないのかも含めて)」。

(オンライン支部会:池田琴世)

【オンライン支部会】オンライン支部会イベント開催報告3:第14回 Net de 交流! 認定心理士

講師と参加者の皆様
講師と参加者の皆様

【テーマ】認知心理学からみた 気づく・気づかない広告表示
【講師】河原純一郎先生(北海道大学、認定心理士の会 北海道支部会会長)
【開催日】2020年6月28日

参加者は58名でした。認知心理学の知見に基づくさまざまな視点から、インパクトのある広告とスルーされる広告の違いや、消費者として注意すべき点などを解説していただきました。

はじめに、心の二重構造という観点から、認識に時間がかかる「意識システム」、直感的にわかるが衝動的な傾向のある「無意識システム」について、実例を示しながら解説いただいたあと、気づく広告・気づかない広告表示について3つの要因について説明いただきました。

「モノの要因」には、色や形などの物理的な差分があるが、目立つ・目立たないについての絶対的な数値や基準はないということ、ただし、一般に、文字が多すぎると目立たなくなる(顕著さのインフレ)とのことでした。「意図の要因」として、ひとは、意識的に構えていないものは見落とす傾向があること、そこには、注意の負荷や作業記憶の容量が関係しているとのことでした。「過去の要因」として、ひとは、近い過去の経験に影響されやすいこと(文脈効果・プライミングなど)、また、価値を持つもの、たとえば、金銭・報酬に直結する情報に注意が向きやすいというお話がありました。

その後、「身の回りの広告や案内で線路がひかれている例を考える」というテーマで、グループに分かれて意見交換をしました。その中で、「広告には、使用前・使用後を動画で示すなど、ストーリーが作られている」「具体的なことを示さないで、単なるイメージだけでワクワク感を喚起する広告もある」など、多くの意見が出ました。

(オンライン支部会:浅野良雄)

【オンライン支部会】オンライン支部会イベント開催報告4:日本心理学会第83回大会社会連携セクション・ポスター発表オンライン再現イベント(第1回)

荻野貴美子氏
荻野貴美子氏

【テーマ】認定心理士の資格をもつ医療職が学校現場で活動することの意義
【話題提供者】荻野貴美子氏(星槎大学大学院 客員研究員、認定心理士)
【開催日】2020年3月23日

参加者は36名でした。荻野さんは、20代前半に看護師として仕事を始められました。そして、その経験を活かし、小中学校で特別支援教育支援員として活動されています。

今回、公立中学校の特別支援学級に在籍する中学生の支援に関わったことを報告されました。その生徒は身体に障害を持ち、発達的な障害も抱え、荻野さんは教員の指導の基でその生徒を支援しました。荻野さんは、その生徒が「白」といった漢字が上手に書けないこと等を踏まえると空間認知が不足していることに気付きました。そこで教員は、小学校1年レベルの点繋ぎや、平仮名なぞり書きの学習課題を出しました。

支援中にその生徒は、注意力が散漫になり、眠そうにしていたそうです。そこで、看護師の経験を活かし、血液中の酸素飽和度の測定をしました。そのデータから医療的配慮が施されました。そうした支援の結果、その生徒は3年生の3学期に修学旅行の感想文を、原稿用紙のマス目にキチンと入る文字で書けるまで成長しました。

荻野さんの発表、質疑応答に続き、全参加者を3~5人の7グループに分け、小グループでの意見交換時間を持ちました。そして、それが終了後、全員で共有化するための発表時間を設けました。認定心理士という共通基盤を持つ様々な経歴・職種の方が、同じ話題について多角的な意見を交換することで、相互刺激を受け、新たな気づき・学びを得ることができました。

(オンライン支部会:片山勝己)

【オンライン支部会】オンライン支部会イベント開催報告5:日本心理学会第83回大会社会連携セクション・ポスター発表オンライン再現イベント(第2回)

講師:中嶋克成氏
講師:中嶋克成氏

【テーマ】スポーツ愛好者の“倫理感”を考える
【話題提供者】中嶋克成氏(徳山大学情報学部特任講師、アクティブラーニング研究所ALプロデューサー、認定心理士)
【開催日】2020年5月13日

参加者は19名でした。最初に中嶋氏から「スポーツ種目によってスポーツ愛好者の倫理観への影響の仕方が変わる」という仮説を検証するための調査計画と検証の途中経過についてお話いただきました。その後、3グループに分かれて意見交換を行いました。実際にスポーツをしている、観戦を楽しんでいる、子どもの保護者、学校で指導しているなど、スポーツに対する立場の多様さから様々な意見が交わされました。

参加者のコメント:「自宅にいてこのような会に参加できる時代になって本当に良かったと実感しました。国や文化の違い、指導者やそのチームカラー(組織の求める姿)などの影響も大きいのだろうと感じていましたが、勝ちを意識するしない、ドーピングも含めた国や組織の倫理観の違いの大きさにも話が出て、なるほどと思いました。人との接触の度合い、指導者との関りや依存度、集団への所属意識のレベルあるなし、勝敗の重要度、などいろんな取り方出来そうだし面白そうだなぁと思いました。発達段階や年齢の積み重ねで、人はいつどこからルールを違反していくのか、倫理観や人間性よりも勝ち負けなどの別の価値観にいつから切り替わっていくのかも、興味深いです。また機会あればお話聞かせていただければと思いました。今回はありがとうございました。」

(オンライン支部会:竹中あかり)

【オンライン支部会】オンライン支部会イベント開催報告6:日本心理学会第83回大会社会連携セクション・ポスター発表オンライン再現イベント(第3回)

鍋島まゆみ氏
鍋島まゆみ氏

【テーマ】薬物依存者の面接経験から学ぶこと
【話題提供者】鍋島まゆみ氏(看護教員、薬物事犯者処遇カウンセラー、保護司、認定心理士)
【開催日】2020年6月13日

参加者は45名でした。鍋島氏のお話は薬物事犯者の再犯率の高さと現在の薬物依存症の専門医療機関の様子についてから始まり、薬物事犯者処遇カウンセラーとしての職務内容、実際の刑務所内で行われている面接の様子、面接内容等の説明が行われました。更に、カウンセラーとして薬物事犯者の心理をどう捉えているかを紹介していただき、面接での薬物事犯者との関わり合い方を詳細に説明していただきました。お話の最後にはご研究中の薬物をやめる動機付けの質問内容の一部をお披露目いただき、鍋島氏ご自身の今後の目標である地域連携での認定心理士の在り方をお話してくださいました。

後半は小グループに分かれて話し合い、その後は分かち合いの時間となりました。薬物依存に至るまでの経緯やその後のサポートの在り方についてあらゆる意見が出され、自分を知る事の大切さ、自分の脆弱性を如何に理解し、それを社会で生かす難しさ等についての意見があげられました。また、刑務所内での面接時間30分という時間制限の中で薬物事犯者が刑務所内で話せるというのはとても良い事であるが、通常の依存症の自助会でも場を和やかにつなげていく風潮があり、きちんと参加者が本音を打ちあけることが出来ないという事があるという意見、もっと、当事者の本音を打ち明けられる場の提供が必要であるという意見等があがりました。

(オンライン支部会:石川裕美子)

日本心理学会第84回大会において、認定心理士の会は、日本心理学会企画シンポジウムとして「社会のための心理学~心理学高等教育の入口と出口~」というテーマのシンポジウムを開催します。 現代社会では、心理学が疑似科学としての域を出ない学問と認識されている事実があります。このような誤解は、大学での心理学の意欲的な学びを阻害するだけでなく、心理学の学びを活かした卒業後のキャリアパス形成にも悪影響を及ぼしています。心理学に対する誤ったイメージの形成は、公認心理師資格の誕生により、さらに異なる方向へと拍車がかかることが予想されます。すなわち、心理学高等教育が心理的支援の実践家養成のためだけにあるという誤解です。心理学に対する誤ったイメージに端を発する様々な問題を解決するためには、心理学の正しい知見や、心理学の応用領域への貢献について、社会的な理解を深める必要があります。そこで、今回のシンポジウムでは、中等教育から心理学高等教育へ進む「入口」、心理学高等教育から社会へ進む「出口」に存在する「心理学への誤解」を浮き彫りにすべく、各フィールドで活躍する実践家に話題提供頂きます。さらに、心理学を学んだ人材が(心理的)支援以外のキャリアパスを構築する際のロールモデルとして、社会で活躍する認定心理士に話題提供頂きます。日本心理学会が資格審査を行う認定心理士は、大学での心理学の学びを修めた人材の代表的なモデルです。シンポジウムを通じて、心理学の入口と出口の現状を浮き彫りにし、それらを適正化するための課題を抽出します。さらに社会で活躍する認定心理士有資格者の実践例から、心理学を学んだ人材のキャリアパスの多様性を示します。

話題提供者(※敬称略)と発表テーマは以下の通りです。

  • 木村和貴(郁文館グローバル高等学校)
    「心理学高等教育に対するイメージ~入口から」
  • 増本全(リクルートキャリア 就職みらい研究所)
    「心理学高等教育に対するイメージ~出口から」
  • 本園大介(認定心理士の会)
    「心理学を学んだ人材のキャリアパス-実践例」

また、シンポジウムの最後に以下のお二人の先生から指定討論頂きます。

  • 丹野義彦(東京大学)
    「心理学を学んだ人材の多様なキャリアパス」
  • 河原純一郎(北海道大学)
    「基礎心理学の学びと社会接続」

今回は、新型コロナウイルスの影響でオンライ開催となりましたが、新しいかたちでの開催形態を採ることで、参加される皆様と、これまでにない交流が展開できればと考えております。

(認定心理士の会運営委員会委員長:髙瀨堅吉)

本年度も開催の方向で企画を検討していました、第2回社会連携セクションですが、日本心理学会第84回大会のオンライン実施に伴い、ポスター発表形式による本企画の実施や、認定心理士の相互交流を図るという企画趣旨の実現が困難となりました。運営委員会での協議の結果、本年度の社会連携セクションは中止とさせていただくこととなりました。参加を検討されていた皆様、大変申し訳ございませんでした。

来年度の開催に向けて、再度準備を進めていきたいと考えています。皆様と再びお会いして、活発に交流・議論する機会を楽しみにしております。

(社会連携セクション実行委員会:伏島あゆみ)

シチズン・サイコロジスト奨励賞は、人々の心の健康と福祉の増進に寄与する認定心理士を顕彰することにより、社会への心理学の普及をより一層促進させようとするものです。認定心理士の貢献が社会に広く知られることが日常化したとき、日本における心理学の真の社会連携が達成され、わたしたちは社会などで重要な役割を演じることになります。この賞は、学会における社会連携の重要性を鑑み、昨年より始まりました。今回は、第2回となります。その栄えある第2回の受賞者となりました羽藤律氏は、工学、音楽学と心理学という複数の観点を活用し、福祉施設での音楽療法を含む多様な取り組みを通じて、知的障害・発達障害のある方への包括的な支援を行っています。また、その経験を日本心理学会音楽心理学研究会論文集にて発表するなど、社会への情報発信も行っています。学部で心理学を修得した後、その知識と技術を隣接する領域に拡充するとともに、社会のニーズに持続的に適用してきた姿勢は科学者・実践家モデルとして卓越しており、自立訓練事業と就労移行支援事業を組み合わせた多機能型事業所にて、心理学の学びで得た知識・技術を活用しながら障害を有する方の心の健康と福祉の増進に寄与する活動は、シチズン・サイコロジストとしてのプレゼンスを大いに高めるものであると審査委員会で判断されました。以上の理由から、シチズン・サイコロジスト奨励賞の受賞に相応しいと考え、羽藤律氏にシチズン・サイコロジスト奨励賞を授与することとなりました。

(認定心理士の会運営委員会委員長:髙瀨堅吉)

<発表者の声>「初めてのポスター発表で得た気づき」田嶋幸代さん

このたびは、シチズン・サイコロジスト奨励賞を授与下さり、まことにありがたく存じます。私にとって思いがけない受賞で、とても嬉しく、励みになります。

さて、私の職場は、知的障がい、発達障がいのある概ね18歳から22、3歳の29名の青年に、高等学校や特別支援学校を卒業したのちのさらなる学びの場を授業という形で提供しています。そこで、利用者様(普段は学生と呼ばせていただいています)は、日常生活や働くうえでの様々な知識、技能のほか、様々な課題に直面した時の考え方や知恵、生きる力を育んでいます。

これまで私は、心理学、音楽学、環境工学の分野に学際的に接し、コツコツと研究も続けてきました。これらの活動は、一人一人障がいの内容や程度の異なる学生への、個々の特性に応じた支援の基礎となっています。一方、職場では、労働、経済、文化芸術(音楽)、スポーツ、論文指導、生活支援など、幅広い授業を行っており、私自身も授業のたびに新たな経験をさせていただいています。そこで、環境心理学は環境の構造化に、発達心理学は障がいのアセスメントに、知覚心理学及び認知心理学は、障がいの特性に応じた知覚・認知トレーニングや訓練プログラムの構成に活かしています。さらに、音楽心理学の応用として音楽療法にも取り組み、学生が音楽に能動的に取り組める環境づくりも積極的に行っています。最近では、授業の運営にも参画し、構成的グループ・エンカウンターのほか、マインドフルネスにも取り組み実践しています。加えて、聴覚過敏と関連する「苦手な音」に関する調査なども継続しています。

新型コロナウィルス感染症対策が厳しく求められる昨今、基本的な生活習慣の徹底のほかに、定期的にこころとからだの状態を示すスケールを学生に申告してもらい、主観的な心身の状態を把握し、それに応じた活動内容や活動時間のコントロール等も行っています。

私は、今の職場に認定心理士の資格要件により入職したわけではありません。しかし、認定心理士としての知識は、まさに今の現場における活動において役立っています。実践的な研究活動を目指していた若かりし頃から四十年近くたってしまいましたが、私自身の基本的な考え方は変わらず、認定心理士に対してアイデンティティを強く感じる次第です。

少年時代から、私は音楽に親しみ、歌を歌うとともに聴いてきました。これからも、いろいろな音を「聞く」から「聴く」、そして、いろいろな声や歌が「聞こえる」から「聴こえる」ようになりたいです。「聴こえる」の世界に至るには、深遠な道のりでしょう。今回の受賞は、私の人生の一つの里程標(マイルストーン)かもしれません。今後も学びつづけ、自分を深めていきます。

受賞に際しまして、平素より私が薫陶を受けている桑野園子先生、難波精一郎先生、私の職場で普段よりご指導いただいている勤務先の長谷川正人先生、山本和子先生、職員のみなさま、そしていつも何気ない日常を支えてくれる家族に深く感謝申し上げます。

(羽藤律)

シチズン・サイエンスとは、一般の方が行う研究活動のことです。シチズン・サイエンスは世界的に広がりを見せており、研究を職業とする科学者や公的な研究機関と協調して行われることもあります。日本心理学会は、認定心理士の皆様と研究を行い、これからの心理学を共に創り上げることを目的に、シチズン・サイエンス プロジェクトを始めました。詳細はホームページをご覧ください(https://psych.or.jp/authorization/citizen/)。

今回、新たに「災害碑発掘プロジェクト-災害の記憶を未来に届けるために-」と、神奈川県との共同プロジェクトである「アプリケーション『マイME-BYOカルテ』に実装された『未病指標』の操作性の検討」が始まりました。奮ってご参加ください。

認定心理士の皆様の協力により得られた結果は、日本心理学会が解析し、論文発表、学会発表を通じて公表します。ぜひ、皆様の積極的なご参加をお願い申し上げます。

(認定心理士の会運営委員会委員長:髙瀨堅吉)

前号を発行した際には、まさかこのような事態になるとは想像もしておりませんでした。新型コロナウイルス感染拡大に伴い、会員の皆様も様々なご苦労をされていることかと存じます。また、会員の皆様やご家族など近しい方に罹患された方がおられましたら、心よりお見舞い申し上げます。ただ、このような事態だからこそ心理学が果たせる役割も多くあると思います。身近なところから、そして小さなことで良いので、心理学の力を発揮していきましょう。認定心理士の会もイベントの開催が困難になるなど会員の皆様にはご迷惑をおかけしていることもあるかと思いますが、ご理解、ご協力、何卒よろしくお願い申し上げます。一日も早く健やかな社会が戻ってくることを願っております。

(認定心理士の会運営委員:小川一美)

  • 認定心理士の会運営委員会〒113-0033 東京都文京区本郷5-23-13田村ビル内公益社団法人日本心理学会事務局jpa-ninteinokai@psych.or.jp

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