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日本心理学会 会員の方

日本心理学会 科学コミュニケーション・ガイドライン
――研究成果のプレスリリース――

日本心理学会 広報委員会



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日本心理学会 科学コミュニケーション・ガイドライン――研究成果のプレスリリース――

日本の心理学の研究の大半は国民からの貴重な税金によって支えられており,得られた研究成果やその意義について,国民に向けた積極的な情報発信が求められています。これに対応して,研究者による情報発信が多数行われるようになってきた一方で,時として適切とは言えないものが見られるのも実状です。研究成果やその意義をまとめて報道関係者に向けて発出すること,あるいはそのために作成する文書のことをプレスリリースといいます。日本心理学会・広報委員会では,学会員からのプレスリリースが正しく適切に報道されることを願って,本ガイドラインを作成いたしました。

最新の研究成果についてのプレスリリースは,科学コミュニケーションの主要な方法の一つです。何が新しくわかったのか,どのような意義があるのか,などについて,分野外の研究者はもちろん,広く一般の人たちにとってわかりやすい発信を心がけることが大切です。しかし,その情報発信が思わぬ誤解や,過剰で不適切な拡大解釈を招くことにより,社会に好ましくない影響を与える可能性もあります。本ガイドラインでは,そうした誤解や拡大解釈を避けつつ,最新の研究成果を社会に広く効果的に発信するために有効と考えられる方法を示します。的確なプレスリリースをすることは,研究そのものや研究者を保護することにつながります。

最新の研究成果についてのプレスリリースは,科学コミュニケーションの主要な方法の一つです。何が新しくわかったのか,どのような意義があるのか,などについて,分野外の研究者はもちろん,広く一般の人たちにとってわかりやすい発信を心がけることが大切です。しかし,その情報発信が思わぬ誤解や,過剰で不適切な拡大解釈を招くことにより,社会に好ましくない影響を与える可能性もあります。本ガイドラインでは,そうした誤解や拡大解釈を避けつつ,最新の研究成果を社会に広く効果的に発信するために有効と考えられる方法を示します。的確なプレスリリースをすることは,研究そのものや研究者を保護することにつながります。

なお,本ガイドラインは,2020年1月30日に公開された日本神経科学学会・科学コミュニケーション委員会が策定した 「科学コミュニケーション・ガイドライン-研究成果のプレスリリース-」 をベースとして作成されたものです。宮川剛先生(藤田医科大学)をはじめとする同ガイドラインの策定に関わった方々に心からの謝意を表します。

1. 発表主体について

日本におけるプレスリリースの重要な目的の一つは,公刊した論文や学会での発表内容について,日本語で,わかりやすくかつ正確に解説することです。したがって,研究内容の詳細と意義・限界を最もよく理解している人物,つまり著者が,プレスリリースの主体となるべきです。所属機関や研究資金配分機関の科学コミュニケーターや広報担当者などによるサポートを受けることはあるでしょうし,発表主体が所属機関や研究資金配分機関となることもありますが,この際にも著者が発表主体に加わる必要があります。そして,リリース内容の科学的な正確性についての責任は,発表主体である著者が負わなければなりません。リリース後に生じるさまざまな問題に責任を持って対応するためにも,著者はリリース前にその内容を十分にチェックする必要があります。

2. 発表資料全般について

i. 詳細についての資料とその公開

プレスリリースは,研究機関や研究費配分機関を通じて行うことが大多数です。多くの場合は,発信する詳細や報道の際のポイントなどを記載した資料を準備し,配布します。また,論文の出版社がプレスリリースを行い,それを見た報道関係者からメールや電話などでコンタクトがあり,質疑応答などを行う場合もあります。当該論文についての一般向けの詳細情報を記した資料は,研究室,研究機関,研究費配分機関などのウェブサイトに掲載し,プレスリリースや報道に触れた方々が参照できるようにしておきましょう。参考のため,資料を掲載する際のひな形を掲載しますのでご活用ください(プレスリリース文面案)。


ii. 図表の再利用について

プレスリリース用の配布資料やウェブサイトに掲載する資料(図表や動画など)は,報道関係者等が改変などを加えて再利用する可能性があるので,著作権上の注意が必要です。再利用可能なものを中心に掲載することが望ましいことになります。論文中の図表などに関する著作権の取り扱いについては,掲載誌の最新のポリシーを確認しておきましょう。国際誌の場合は,多くの出版社が加盟する The International Association for Scientific,Technical and Medical Publishers (STM) のガイドラインも有用です。


iii. 発表資料のチェック

発表資料の内容は,本ガイドラインのチェックリスト(プレスリリース・チェックリスト参照)などを活用して,事前に入念にチェックしましょう。その際,当該研究の著者グループばかりではなく,科学コミュニケーションの専門家,所属機関や研究費配分機関の広報担当者,分野外の研究者などにもアドバイスを求めることが望ましいです。研究者ではない知人や家族に意見を求めるのもよいでしょう。


iv. 専門用語

一般に通用していない,もしくは一般と用法が異なる専門用語は,可能であれば,一般に通用する他の用語に言い換える方がよいでしょう。どうしても専門用語を用いる必要がある場合は,用語解説をつけましょう。


v. 文体

「だ・である調」よりも,「です・ます調」が推奨されます。「です・ます調」を用いることによって柔らかい印象を加えることができるだけでなく,研究内容を平易に表現できるという効果も見込まれます。

3. 文献の明示

i. 報道での文献明示の依頼

報道された研究成果の妥当性・意義を第三者が判断しようとする場合,その元となる論文にあたることが必要となります。研究成果の報道において,その研究がどこで発表されたかなどの記載がなく,元となる論文に到達することが困難な場合が多々ありますが,これは望ましくありません。新聞・雑誌などでの報道における記事中に,第三者が当該の研究成果を検証するための資料に到達しやすくなるような記述(著者,所属機関,掲載誌名,可能であれば論文を直接参照可能なURLやDOIなど)をしてもらえるよう,努力することが重要です。


ii. ウェブサイト・発表資料での文献明示

新聞・雑誌などに文献情報を記載してもらうのが困難なことも多々あります。そのような場合でも,研究室,研究機関,研究費配分機関などのウェブサイトなどに文献を明示し,当該の論文に到達できるようにしておくことが必要です。

4. 研究倫理一般への配慮

i. 個人情報について

顔や脳の画像,実験データ,行動観察記録,インタビュー結果などの掲載については,個人情報保護の観点から問題がないかどうか,十分な検討を行う必要があります。


ii. 不快感を与えうる表現について

読者に不快感を与えるような表現(例えば,写真など)はできるだけ避ける方がよいでしょう。研究の性質上,その掲載を避けられない場合は,注意書きを掲載して,それを見ない選択ができるような工夫(注意書きを付したリンク先をクリックする仕組みにするなど)を施すことが望ましいです。


iii. 利益相反の明示

当該の情報発信について,関連企業からの研究費を用いている,収入を得ている,企業との共同研究である,などの場合は,利益相反に関する情報を開示することが必要です。報道される際にこうした情報が掲載されることは現状では期待できませんが,プレスリリース時のプレゼン・配布資料,研究室・研究機関・研究費配分機関などのウェブサイトで公開する資料には必ず記載するべきです。

5. 報道記事の事前のチェックと事後の対応

i. 事前チェック

プレスリリースにおいて過不足のない十分な説明を行った場合でも,新聞・雑誌などで報道される時点で一部のみが切り取られたり,メディア側に都合のよい解釈がなされたりすることにより,内容が誇張されたり,不適切な文脈で掲載されたりすることがありえます。こうしたゆがみが生じることで,情報の受け手に過剰な期待を抱かせたり,不適切で有害な行動を招いたりするおそれがあります。したがって新聞・雑誌・テレビなどでの報道については,それによって生じるネガティブな効果の可能性について明示的に伝えて(つまり,プレスリリース資料にその旨を明記して),その内容の正確性・適切性について,可能な限り事前にチェックできるように依頼しましょう。


ii. 事後の対応

事前に内容のチェックができず,明らかな誇張がなされてしまったり,不適切な文脈で報道されてしまったりした場合や,著しい誤解にもとづく情報が一般市民に流布してしまった場合には,研究室のウェブサイトやSNS などのインターネットメディアを活用して,訂正や補足説明を行うことを推奨します。また,こうした問題に対応するため,プレスリリースを当初行った際の研究室,研究機関,研究費配分機関などのウェブサイトのページに,発表後の補足事項を追加できるようにしておくことが望ましいです。報道に接して詳細を知ろうとした方々が,インターネット検索でそのページにたどり着くことが期待できるためです。

6. 日本心理学会からの意見の発信

学会員,学会員の関係者などによる心理学研究に関連する報道について,その内容に何らかの問題が認められた場合,日本心理学会は,著者,その所属機関,研究費配分機関などに対して,意見の表明や公表を行うことがあります。


ii. 事後の対応

事前に内容のチェックができず,明らかな誇張がなされてしまったり,不適切な文脈で報道されてしまったりした場合や,著しい誤解にもとづく情報が一般市民に流布してしまった場合には,研究室のウェブサイトやSNS などのインターネットメディアを活用して,訂正や補足説明を行うことを推奨します。また,こうした問題に対応するため,プレスリリースを当初行った際の研究室,研究機関,研究費配分機関などのウェブサイトのページに,発表後の補足事項を追加できるようにしておくことが望ましいです。報道に接して詳細を知ろうとした方々が,インターネット検索でそのページにたどり着くことが期待できるためです。


プレスリリース文面案

解禁時間(テレビ,ラジオ,WEB): 20XX年XX月XX日(X)XX 時(日本時間)
(新聞): 20XX年XX月XX日(X)

20XX年XX月XX日

XXXXXX大学

Tel:XX-XXX-XXX(XX課)


タイトル

[誰にでも容易にイメージ可能で,かつ,言い過ぎにならないようなものを工夫しましょう]


ポイント

[研究成果について知ってほしいことを3点程度の箇条書きにまとめます]

  • ❖ ************
  • ❖ ************
  • ❖ ************

    • 概要

      [研究成果の要約と,公開形態に関する情報を記載します]

      XXX 大学 XXX 学部の XXXXXXXXX 助教と XXX 教授,XXX 研究所の XXXX 研究員らのグループは,XXXXXXX に着目し,XXXXXX を行いました。この結果,XXXXXX を明らかにしまた。これらの成果から,XXXXXX することで,XXXXXX が期待されます。

      本研究成果は学術雑誌 XXXXXX への掲載に先立ち,同誌 Web サイトにてオンライン速報版が XXXX年 XX月 XX日(XX時間)に公開されます。


      <背景>


      ・背景:

      当該の研究成果,研究関連の主張について,一般的に重要だと思われる背景,それまでの国内外の研究など,についてわかりやすく解説します。どこまでわかっていて,何がわかっていなかったのか,それがどのような研究上の技術的・概念的制約によるものであるか,などです。


      ・成果を可能にした工夫・方法:

      当該の研究成果について,どのような研究方法の工夫や技術的進展によってその新しいブレークスルーが生まれたのかについて記述します。


      ・HARKingに陥らない注意:

      仮説検証型の研究にこだわるあまり,仮説の後付け(Hypothesizing After the Results are Known; Kerr, 1998)がなされることが昨今問題視されています。研究成果として何らかの仮説を提起した場合は,研究背景では言及せず,また,今後の展開としてその検証が必要である旨を記す必要があります。


      ・裏話:

      当該の成果を得る過程で苦労したこと,困難だったこと,アイデアや発見をもたらした経緯など「裏話」的な背景を述べることも,研究発表に興味を持ってもらう効果をもつことがあります。


      <方法と結果>


      ・定量的な図:

      サンプルサイズやp値(有意確率)のみならず,効果量や信頼区間も記載しましょう。


      ・統計量:

      サンプルサイズや p値(有意確率)のみならず,効果量や信頼区間も記載しましょう。


      ・因果関係か相関関係か:

      当該の研究成果が,実験的研究によって因果関係の推定までできているものか,観察的研究による相関関係に過ぎないのか,誰でも理解できるような記述がなされる必要があります。


      ・成果の視覚化:

      研究成果について視覚的にわかりやすく提示することが望ましいです。


      ・概念図:

      研究内容の概念や方法・実験パラダイムなどが複雑で理解が難しいと思われる場合は,イラストやフローチャートなどで表現することを検討しましょう。


      ・著作権関連:

      図表に関して,報道での再利用に関する注意事項を記載しておきましょう。


      ・日本語の使用:

      イラストレーション,グラフの軸やラベルの記述は,論文のものをそのまま用いるのではなく,できるだけ日本語かつわかりやすいものに改変することが望ましいです。


      ・動画:

      動画の使用は効果的なので,可能な場合は活用しましょう。


      ・学会発表の場合:

      学会発表の場合は,プレスリリース資料が読者が接するオリジナルの資料となる場合があります。この点に留意し,方法と結果は十分に詳細に記載しましょう。


      <考察と今後の展開>


      ・成果の学術的意義:

      当該研究における新しい知見のもつ学術的意義を記載しましょう。


      ・波及効果:

      想定される波及効果,その研究が広い文脈でどのような意味をもつか,発展する可能性のある波及効果などを,著しい飛躍のない範囲で記載しましょう。動物実験の場合,ヒトで実施された研究であるかのような誤解を招かないよう注意しましょう。健康維持,工学的応用,教育上の応用などへの発展の可能性のほか,人間一般の理解において新しい示唆を与えるような内容が含まれていれば,それについても言及しましょう。


      ・著しい飛躍や “spin” の回避:

      当該の研究成果とその一般的重要性に関する考察では,著しい飛躍がないかどうかについて十分に留意するべきです。それが意識的かどうかによらず,研究成果の中で好ましい効果を過度に強調したプレスリリースのことを “spin” といい,査読を経た論文の中で主張されていることとリリースでの主張が大きく乖離するケースが頻繁に生じていることが指摘されています(Yavchitz et al., 2012)。このような行為は避けましょう。得られた結果から主張できることと,そこから導かれる推測や期待は峻別されるべきで,それぞれを情報の受け手に伝わるようなかたちで記載することが重要です。


      ・今後の課題・留保の記述:

      一つの研究が完全であることはほとんどなく,いかなる研究も何らかの課題や限界を有するのが当然です。それらについて言及することも大切です。当該研究で得られた知見がより確かな事実として実証されるために必要だと思われる条件も併記することが望ましいです。


      <文献情報>


      ・文献の明示:

      プレスリリース時に提供する資料には,当該の研究論文の出典と,発信する情報が依拠する先行研究などについての文献を引用することが重要です。引用文献は,査読つき原著論文や,原著論文が十分に引用されている総説・書籍などが望ましいです。学会発表でもやむを得ませんが,要約へのアクセスが困難な発表の引用はできるだけ避けるべきです。


      ・文献に到達できる記述:

      引用する際は,読者がその文献に到達できるようにしておくことも重要です。例えば,[Name] et al., 2011 のような文中の引用だけでは不十分で,それに対応した引用元を明示する文献リストが掲載されている必要があります。


      <用語解説>

      一般になじみが薄い用語,もしくは一般と用法が異なる用語については,できるだけ解説をつけることが望ましいです。


      <利益相反>

      論文に記されている利益相反情報,その他,当該研究に関連すると考えられる利益相反情報について記載します。開示するべき事項の基準については日本心理学会の指針に準じますが,これに該当しない利益相反も存在する場合は,できるだけ記載することが望ましいです。


      • 例1)著者のXXXは,XXX社のアドバイザーとして顧問料を得ています。
      • 例2)著者のXXXは,XXX社の株を保有しています。
      • 例3)著者のXXXは,XXX社より,共同研究費を受けています。
      • 例4)著者のXXXは,XXXに関する特許を有しています。
      • 例5)著者のXXXは,XXXに関してXXXとの共同研究費として,JSTよりXXX研究費を受けています。
      • 例6)著者には開示すべき利益相反はありません。

      <財源情報>

      当該研究を遂行するために調達した資金源に関する情報を記載します。


      <問い合わせ先>

      ・研究に関すること:

      • XXXX大学XXXX学部XXXX学科
      • 教授 XXXX(XXXXXXXX)
      • TEL:XX-XXXX-XXXX FAX:XX-XXXX-XXXX
      • E-mail:XXXX-XXXX@XX.XXXX.ac.jp

      ※研究資料が参照できるウェブサイトを準備できる場合は,そのURLも示しましょう。


      ・報道担当:

      [プレスリリース主体の担当者の氏名と連絡先]


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