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心理学研究 第90巻 第6号(2020年2月)

ページ 551-561
種類 原著論文
タイトル 訪問看護師の困難の捉え直しがケアリングの相互性を経て看護観に及ぼす影響
著者 平野 智子・藤 桂
要約 本研究では,訪問看護師が利用者との関わりにおいて経験した様々な心理的困難に対し,それらを認知的に捉え直すことにより,ケアリングの相互性を実感し,自身の看護観の確立へと結びつくという過程について,調査および実験によって検証した。研究1では,371名の現職訪問看護師に質問紙調査を行った。共分散構造分析の結果,訪問看護師が,利用者に対する支援において多くの心理的困難を経験しているものの,「未来に向けた継承的捉え直し」などの捉え直しによってケアリングの相互性を実感し,自身の看護観の確立にも結び付いていることが示された。研究2では,現職の訪問看護師に対し電子メールを用いた介入実験を行った。その結果,「未来に向けた継承的捉え直し」を促された参加者においては,自身の看護観の確立に関する得点が有意に向上していることが示された。いずれの結果も仮説を支持するものであり,様々な心理的困難を経験している訪問看護師に対し,継承的視点からの捉え直しによって,ケアリングの相互性の実感を促すことが看護観の確立に対して有効に機能することが示唆された。
キーワード 訪問看護師,心理的困難,ケアリングの相互性,継承的捉え直し,看護観の確立
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal90-6#18031
ページ 562-571
種類 原著論文
タイトル 国際経験と批判的思考態度が法・道徳意識に及ぼす影響
著者 溝川 藍・子安 増生
要約 本研究では,国際経験の豊富さと批判的思考態度が,個人の法・道徳意識にどのような影響を及ぼすのかについて検討を行った。参加者(N = 725)は,法・道徳意識(種々の違反行為をどの程度許容するか,違反者に介入するか否か,種々の違反行為がどの程度日本社会で許容されていると認知しているか),批判的思考態度,国際経験((a) 海外生活経験,(b) 海外旅行経験,(c) 外国人友人,(d) 外国語使用)を測定する質問紙に回答した。その結果,批判的思考態度の低い者ほど,様々な違反行為を許容し,違反者に介入しないこと,また法令違反行為が日本社会においてより許容されていると認知していることが示された。国際経験のうち (a) から (c) の3側面は法・道徳意識に影響を及ぼさなかったものの,日常的に外国語を使用している者ほど法令違反行為を許容することと,批判的思考態度が低い場合は高い場合よりも,外国語使用が法令違反行為の許容に及ぼす影響が大きいことが明らかになった。本研究の結果から,批判的思考態度の低さと違反行為への相対的許容度の高さとの関連が示されるとともに,批判的思考態度が低い場合には,日常的な異文化接触が違反行為を許容する態度を強める可能性が示唆された。
キーワード 国際経験,批判的思考態度,法・道徳意識,調整効果
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal90-6#18055
ページ 572-580
種類 原著論文
タイトル 日本における情緒不安定性の増加――YG性格検査の時間横断的メタ分析――
著者 小塩 真司・市村 美帆・汀 逸鶴・三枝 高大
要約 本研究の目的は,YG性格検査の12特性に対して時間横断的メタ分析を適用し,調査年による平均値の時代変化を検討することであった。時間横断的メタ分析の対象となったのは1954年から2012年にかけて,50,327名分の日本人を対象に行われた245研究(95論文)であった。結果から,ほとんどの特性は有意な曲線的変化を示しており,特に近年は調査年とともに情緒不安定性因子が上昇し,主導性因子や非内省性因子が低下するなど,ネガティブな方向への平均値の変化が認められた。1984年から2009年の思考的外向と神経質の変化は自尊感情の変化と有意な関連を示した。得られた結果と今後の課題について議論された。
キーワード パーソナリティ特性,時間横断的メタ分析,時代変化
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal90-6#19003
ページ 581-591
種類 研究資料
タイトル 日本語版欲求支援・阻害行動尺度(IBQ-J)の開発
著者 肖 雨知・外山 美樹
要約 本研究の目的は,Interpersonal Behaviours Questionnaire の日本語版(IBQ-J)を開発し,その妥当性を検討することであった。IBQは,自己決定理論(self-determination theory: SDT)に基づき,欲求支援行動・欲求阻害行動という両側面から人の対人行動への認知を測定する尺度である。研究1では,調査参加者は全般的な他者による欲求支援・阻害行動について尋ねられ,研究2では,調査参加者は限定した重要な他者(すなわち,父親・母親・親友)による欲求支援・阻害行動について尋ねられた。2つの研究において,SDTの先行研究と整合する結果が示された。IBQ-Jは,欲求支援・阻害行動を測定するための妥当性を備えた尺度であると結論づけた。
キーワード 欲求支援行動,欲求阻害行動,自己決定理論,基本的心理欲求
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal90-6#18222
ページ 592-602
種類 研究資料
タイトル ストレスマインドセット尺度の邦訳および信頼性・妥当性の検討
著者 岩本(大久保) 慧悟・竹橋 洋毅・高 史明
要約 本研究の目的は,ストレスの性質に対するマインドセットの個人差を捉えるストレスマインドセット尺度の邦訳と信頼性と妥当性の検証である。研究1では,就労している成人449人を対象に尺度の信頼性と因子構造を確認することを目的とした。その結果,中程度の負の相関がある「ストレスの有害」因子と「ストレスの有益」因子の2因子構造が確認された。研究2から研究4では,子どもを持つ親92人と大学生349人と就労している成人800人を対象に予測妥当性を検証することを⽬的とした調査を実施し,ストレスマインドセットはストレッサー量やコーピングなどの従来のストレス関連変数とは独立に主観的健康および人生満足度を予測するという先行研究と整合する結果が得られた。最後に,ストレスマインドセットの重要性が議論された。
キーワード マインドセット,ストレス,ストレス関連成長,コーピング,人生満足感
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal90-6#18229
ページ 603-613
種類 研究資料
タイトル 日本語版20項目相貌失認尺度の開発および信頼性・妥当性の検討
著者 中嶋 智史・請園 正敏・須藤 竜之介・布井 雅人・北神 慎司・大久保 街亜・鳥山 理恵・森本 裕子・高野 裕治
要約 20項目相貌失認尺度(PI20)は,明確な神経学的障害が見られないが顔の認識に問題があるとされる先天性相貌失認を評価するために開発された。本研究の目的は,このPI20の日本語版(PI20-J)を開発し,その妥当性と信頼性を検討することであった。研究1では,尺度の内的整合性,再検査信頼性および並存的妥当性について確認した。研究2では,PI20-J得点と顔認識成績との間の関係性について検討し,それらの間に中程度の相関が認められた。研究3では,PI20-J得点が顔認識成績と特異的に関連しているのか,それとも一般的な物体認識成績と関連しているかを検討した。その結果,PI20-J高群は低群に比べて顔認識成績が低かった。一方で,物体認識成績については両群間で差が見られなかった。この結果は,PI20得点が顔認識成績と特異的に関連していることを示唆している。PI20-Jには先天性相貌失認特性の自己報告尺度として高い信頼性と妥当性があると言えるだろう。
キーワード 先天性相貌失認,顔認識,PI20
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal90-6#18235
ページ 614-620
種類 研究報告
タイトル 抑うつと代替目標の抑制の関係に対する焦点目標の理想度の調整効果
著者 服部 陽介
要約 本研究では,抑うつと不安が代替目標の抑制に関連する可能性について検討を行った。さらに,焦点目標の理想度と義務度が,それらの関連を調整する可能性についても検討を行った。実験1では,獲得したい特性を想起する状況における代替目標の活性化の程度を測定した。実験2では,達成しようとしている目標を想起する状況を設定し,同様の実験を実施した。その結果,抑うつが代替目標を促進すること,焦点目標の理想度が高い場合には,このような抑うつと代替目標の抑制の関連がみられなくなることが示された。その一方で,不安と代替目標の抑制の間には,明確な関連がみられなかった。これらの結果から,抑うつと代替目標の抑制の関連の背景にある過程について議論した。
キーワード 目標保護,抑うつ,制御焦点
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal90-6#18313
ページ 621-627
種類 研究報告
タイトル 幼児が不正確な言語情報に従う傾向への情報提供者の観察の影響
著者 残華 雅子・青山 謙二郎
要約 幼児には繰り返し誤った言語情報を述べていた他者の言語情報でも従う傾向があることが知られている。本研究では幼児が言語情報の誤りを予測しながらも他者から受ける自分への社会的評価を考慮して従っているかについて検討を行った。課題では,まず実験者は参加児 (N = 59名, M = 3.88歳) から見えないように色の異なる2つの箱の一方にシールを隠し,実際とは逆の箱にシールが入っていると述べた。そして参加児が初めにどちらの箱を探すか観察した。統制群の参加児には,8試行一貫して実験者の目の前でシールを探すことを求めた。実験群の参加児には5試行目と8試行目では実験者が目の前にいない状態で探すことを求め,その他の試行では実験者の目の前で探すことを求めた。その結果,実験群の女児では,実験者が目の前にいない5・8試行の方が,実験者が目の前にいる6・7試行よりも言語情報に従う傾向が低かった。男児では,実験者が目の前にいる5・8試行といない6・7試行で従う傾向に違いがみられなかった。この結果から,他者の評価を考慮することが女児の誤った言語情報に従う傾向に影響することが示唆された。
キーワード 年少児,言語情報,社会的圧力,信頼,ステッカー探索課題
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal90-6#19302