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心理学研究 第91巻 第1号(2020年4月)

ページ 1-11
種類 原著論文
タイトル 運動部活動場面での被体罰経験が体罰への容認的態度に及ぼす影響
著者 内田 遼介・寺口 司・大工 泰裕
要約 運動部活動場面での体罰問題は,2013年以降,社会問題として広く世間から注目を集めるようになった。これまで,運動部活動場面で生じる体罰に着目した研究が複数行われており,それらの研究では,主に運動部活動場面での被体罰経験が体罰への容認的態度の形成に寄与すると繰り返し報告してきた。しかし,この知見を支持する調査結果は,体罰への容認的態度に影響すると予測される剰余変数を考慮していないなど,やや説得力に欠ける状況にあった。そこで本研究では,研究手法を改善したうえで,この知見の妥当性について改めて検討した。分析対象者は18歳から65歳までの一般人287名であった。その結果,性別や年齢,攻撃性など複数の剰余変数を統制した状態でも,依然として運動部活動場面での被体罰経験が体罰への容認的態度に対して正の影響を示すことを確認した。また,この直接的な影響は体罰効果性認知によって媒介されることも確認した。この結果は,先行研究で得られた知見を補完する新たな事実であった。
キーワード 体罰,スポーツコーチング,運動部活動
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal91-1#18011
ページ 12-22
種類 原著論文
タイトル 保育所における雑談が保育士のストレス反応に及ぼす影響
著者 岸本 直美・藤 桂
要約 本研究では,保育所における,コンパニオンシップとしての雑談に着目し,保育士のストレス反応に対して及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。保育士312名を対象とした質問紙調査を通して,保育所で交わされている雑談の内容,雑談の効果,保育士におけるストレッサー,保育上のストレス反応について尋ねた。まず,雑談の内容に関して因子分析を行った結果,「世間話」,「園児の姿や成長」,「人間関係の悩みや愚痴」,「保育への思いや信念」の4因子が示された。同様に,雑談の効果に関して因子分析を行った結果,「共有と共感の喜び」,「円滑な情報伝達と気づき」,「保育士としての専門性の捉え直し」,「不本意な同調による疲弊感」の4因子が示された。続いて共分散構造分析を行った結果,世間話によって,保育中のストレス反応が低減されることが示された。加えて,園児の姿や成長や保育への思いや信念に関する雑談は,共有と共感の喜びに結びつき,ストレス反応を低減していることが明らかとなった。一方,人間関係の悩みや愚痴は,ストレス反応の増大にも結び付いていた。したがって,保育所における雑談はその内容の違いによってもたらされる効果が異なる可能性が示唆された。
キーワード 雑談,コンパニオンシップ,保育士,ストレス反応
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal91-1#18029
ページ 23-33
種類 原著論文
タイトル 指先が変える単語の意味――スマートフォン使用と単語の感情価の関係――
著者 川上 直秋
要約 本研究では,接近回避運動の知見に基づき,スマートフォンでのフリックによる文字入力が単語の感情価に影響を及ぼすかを検討した。具体的には,下フリックは指の動きが自己に向けられるという点で接近運動,上フリックは指の動きが自己から離れていくという点で回避運動として捉えられる。5つの一連の研究から,フリック入力による指の動きと単語の感情価との予測通りの関係が,無意味文字と有意味文字の両方で見られた。すなわち,単語内に上フリックで入力される文字よりも下フリックで入力される文字が多いほど,その単語は好意的に評価された(この関係をフリック効果と呼ぶことにした)。その一方で,スマートフォンの所有経験のない場合にはフリック効果は認められなかった。これは,フリック入力を伴うスマートフォン使用が言葉の意味へと影響を及ぼしている可能性を示唆する。
キーワード フリック入力,スマートフォン使用,接近回避運動,単語の意味
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal91-1#18060
ページ 34-43
種類 研究資料
タイトル 嘘をつくことに対する認識尺度の作成
著者 太幡 直也
要約 本研究の目的は,嘘をつくことに対する認識尺度を作成することであった。期待―価値理論に基づき,嘘をつくことに対する認識を,嘘をつくことに対する期待と価値の観点から捉え,尺度項目を作成した。大学生の回答を因子分析した結果,嘘をつくことに対する認識尺度は,嘘をつくことに対する否定的認識(7項目),嘘をつく上手さの上達可能性の認識(4項目),嘘をつく上手さの遺伝規定性の認識(3項目)の三つの次元に分類された。そして,研究1,2では,嘘をつくことに対する認識尺度は信頼性と構成概念妥当性を有することを示した。また,研究3では,昨日嘘をついた回数との関連を検討し,嘘をつくことに対する否定的認識が低いほど昨日嘘をついた回数が多いことを示した。
キーワード 嘘,嘘をつくことに対する認識,尺度作成,個人差
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal91-1#18237
ページ 44-53
種類 研究資料
タイトル 日本語版改訂被害者用迷惑な接近行動尺度(UPBI-R-V-J)の開発
著者 小林 大介
要約 本研究の目的は,元交際相手による迷惑な接近行動の測定尺度である被害者用のUnwanted Pursuit Behavior Inventory-Revisedの日本語版(UPBI-R-V-J)を開発し,信頼性と妥当性を明らかにすることであった。迷惑な接近行動とは,元交際相手から行われるストーキングを含む被行為者が望まない関わりである。大学生・短期大学生・専門学生133名(男性24名:女性109名)を対象とし,UPBI-R-V-Jを含む質問紙による調査を実施した。その結果,UPBI-R-V-Jは軽度被害と重度被害で構成され,それぞれα=.83,α=.74と十分な信頼性係数を示した。また,基準関連妥当性を検討するため,UPBI-R-V-Jと元交際相手の愛着不安,恋愛関係時の元交際相手からの暴力被害との相関係数を算出したところ,軽度被害,重度被害それぞれが正の相関を示した。以上の結果から,UPBI-R-V-Jは,信頼性と基準関連妥当性が示された。最後に,本研究の限界と今後の課題について考察した。
キーワード 迷惑な接近行動,ストーキング,元交際相手,愛着不安,親密な関係における暴力
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal91-1#18240
ページ 54-62
種類 研究資料
タイトル 恨み忌避感尺度の作成と信頼性・妥当性の検討――拒否不安,調和性,信頼感との関連――
著者 北村 英哉・下田 麻衣
要約 日本において協調や調和を保つことの基盤として,他者から恨まれることを回避することが重要な役割を果たしていることを提案する。本研究は他者から恨まれることを避けようとする傾向を測定する恨み忌避感尺度(ARS)を開発し,2つの研究を通して尺度の信頼性と妥当性を検討した。研究1では,ARSを構成し,ARSと拒否不安を測定する尺度との相関を調べた。因子分析の結果からARSは3因子から成り,拒否不安尺度の得点と中程度の相関がみられたためARSの妥当性が示された。研究2では,ARSと調和性,信頼感を測定する多面的協調性尺度,信頼感尺度への回答とを比べた。ARSとこれら2つの尺度への反応から有意な相関が示され,恨み忌避感尺度の妥当性が支持された。
キーワード 恨み忌避,拒否不安,調和性,信頼感
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal91-1#19204
ページ 63-68
種類 研究報告
タイトル 児童青年に対する診断横断的介入のフォローアップの有効性の予備的検討
著者 岸田 広平・石川 信一
要約 本研究の目的は,児童青年の不安症と抑うつ障害に対する診断横断的介入におけるフォローアップの有効性の予備的検討,および,治療効果の潜在的な予測要因の探索を行うことであった。不安症や抑うつ障害を有する児童青年8名が回避行動に焦点化した診断横断的介入プログラム (Avoidance Behavior-focused Transdiagnostic Intervention Program: ATP) に参加した。本研究では,3ヵ月と6ヵ月におけるフォローアップでの有効性を複数の評価者 (臨床家,子ども,親) と多面的な領域 (診断,症状,全般困難) における査定を用いて検討した。その結果,フォローアップにおいて,臨床家評定による主診断の重症度と診断の数の改善が示された。加えて,分離不安障害,選択性緘黙,長期の不登校がATPの治療効果低減の予測要因となる可能性が示された。最後に,ATPの限界と今後の課題が議論された。
キーワード 児童青年,不安症と抑うつ障害,診断横断的介入,フォローアップ
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal91-1#19311