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心理学研究 第92巻 第1号(2021年4月)

ページ 1-11
種類 原著論文
タイトル 部活動における生徒の動機づけと指導者のリーダーシップとの関係
著者 鈴木 雅之・荒俣 祐介
要約 本研究では,自己決定理論の下位理論である有機的統合理論に基づいた,部活動における動機づけ尺度を作成するとともに,生徒の動機づけと指導者のリーダーシップとの関連について検討した。研究1では,高校生304名を対象に質問紙調査を行い,内的調整と同一化的調整,取り入れ的調整,外的調整,無調整の5因子からなる尺度が作成された。研究2では,高校生870名を対象に調査を行い,マルチレベルモデルによる分析を行った結果,人間関係作りに関する行動や統率を指導者がよくしている部活動ほど内的調整と同一化的調整が高く,無調整は低い傾向にあった。また,人間関係作りに関する行動や統率を指導者がしていると知覚している生徒ほど内的調整と同一化的調整が高く,無調整は低い傾向にあった。
キーワード 部活動,有機的統合理論,動機づけ,リーダーシップ
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal92-1#19051
ページ 12-20
種類 原著論文
タイトル 態度が相反する他者への過度なバイアス認知を錯視経験が緩和する効果
著者 神原 歩
要約 人は,自分と相反する態度の他者(以下,相反する他者)を,バイアスがかった見方をしていると捉える傾向がある。この傾向が生じるのは,人は自分が「世の中をありのまま見ている」と信じており,それが故に,自分と相反する他者は非客観的なものの見方をしていると捉えるからだと論じられている。そこで本研究では,錯視経験により自分の知覚が必ずしも客観的事実の反映ではないことを明示されると,相反する他者への過度なバイアス認知が低減すると仮説を立て検討した。87名の参加者を錯視経験有り群と錯視経験無し群に割り当てた。そして,錯視経験の有無の操作の直後に,相反する他者についてのバイアス認知を測定した。その結果,錯視経験有り群は錯視経験無し群より,相反する他者へのバイアス認知が低減した。本研究の結果は,相反する他者への過度なバイアス認知は,自分が「世の中をありのままに見ている」と信じていることが一因となって生じている可能性が示唆された。
キーワード ナイーブ・リアリズム,バイアス,錯視
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal92-1#20014
ページ 21-30
種類 研究資料
タイトル 病理的自己愛目録日本語版(PNI-J)の作成
著者 川崎 直樹・小塩 真司
要約 病理的自己愛目録(Pathological Narcissism Inventory: PNI)は,7つの下位尺度で構成されており,自己愛を誇大性と脆弱性の両側面から包括的に測定する尺度として開発された。本研究は,このPNIの日本語版(PNI-J)を作成し,日本人サンプルを対象に,その因子構造,信頼性,妥当性を検証することを目的とするものである。402名から回答を得た結果,PNI-Jはおおよそ原版と同じ因子構造を持っていることが確認された。そして,再検査信頼性で良好な値を示した他,自己,対人関係,他のパーソナリティに関連する変数とも理論的に整合する結果を示した。さらに,先行研究に基づいて短縮版病理的自己愛目録日本語版(B-PNI-J)を構成したところ,全項目版とおおよそ同様の性質を持つことが確認された。PNI-JとB-PNI-Jによって,従来の自己愛関連尺度より,日本における自己愛の病理的な特徴を包括的に測定ができると考えられる。
キーワード 病理的自己愛目録,自己愛的誇大性,自己愛的脆弱性,尺度作成
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal92-1#19217
ページ 31-39
種類 研究資料
タイトル 日本語版幸せへの恐れ尺度と日本語版幸せの壊れやすさ尺度の信頼性・妥当性の検討
著者 生田目 光・猪原 あゆみ・浅野 良輔・五十嵐 祐・塚本 早織・沢宮 容子
要約 本研究は,日本語版幸せへの恐れ尺度と日本語版幸せの壊れやすさ尺度の信頼性・妥当性を検討した。大学生341名に質問紙調査を実施した。確認的因子分析の結果,日本語版は原版と同様にそれぞれ1因子構造であることが示された。また,尺度は十分な内的整合性と再検査信頼性,構成概念妥当性を持つことが示された。さらに,行動抑制系(BIS)および行動賦活系(BAS)を上回って,心理的要素(人生満足度,抑うつ,不安,ストレス)を予測することから,増分妥当性が示された。日本語版幸せへの恐れ尺度と日本語版幸せの壊れやすさ尺度は本研究のサンプルにおいて,十分な信頼性・妥当性を備えていることが示された。
キーワード 幸せへの恐れ,幸せの壊れやすさ,日本,妥当性,信頼性
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal92-1#20206
ページ 40-45
種類 研究報告
タイトル 利己的行動・利他的行動は連鎖するか――独裁者ゲームを用いた実験的検討――
著者 金内 さよ・三浦 麻子・唐沢 穣
要約 返報行動には,利己的なものと利他的なものの2つの形態がある。本研究では,2つの実験によりこの両者を比較した。各実験において,参加者は2回の独裁者ゲームを行った。1回目のゲームでは,参加者は全員が「受取手」役を割り当てられ,「分配者」から有利または不利な分配のいずれかを受けた。2回目のゲームでは,参加者は分配者役を割り当てられ,1回目のゲームと同じ相手または異なる相手を受取手として報酬の分配を行った。結果,ゲームの相手が同じままであったか,新規の相手になったかに関わらず,1回目のゲームで不利な分配を受けた参加者は,2回目のゲームで利己的な分配を行った。対照的に,1回目のゲームで有利な分配を受けた参加者は,ゲームの相手が同じままであった場合のみに利他的な分配を行い,新規の相手にはそのような分配行動を見せなかった。したがって,利己的な行動は無関係の他者に向けて連鎖的に生じた一方で,利他的な分配は連鎖せず,直接恩恵を与えてくれた相手にのみ返報されたことが一貫して示された。返報行動の連鎖の非対称性に影響を与えうる要因,及び実験手続き上の問題点について論じる。
キーワード 利己的行動,利他的行動,互恵性,独裁者ゲーム
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal92-1#20301
ページ 46-51
種類 研究報告
タイトル パーソナリティ特性と社会指標の関連――時系列分析による検討――
著者 小塩 真司・岡田 涼
要約 これまでの研究では,矢田部ギルフォード性格検査の12特性に対して時間横断的メタ分析を行うことで,時代と共に曲線的にパーソナリティ特性の平均値が変化することを明らかにした(小塩他, 2019)。本研究では,この平均値の変化が日本の社会的指標の変化に関連するのかを検討する。先行研究で用いたデータセットから,大学生を対象とした68―74文献171―181サンプル(N = 29,524―29,847)を抽出し,社会的指標との関連を時系列分析で検討した。分析の対象となった調査期間は,1957年から2012年である。結果から,YG性格検査の12特性のうち7特性の平均値の変動において,社会指標の変動との間に|.20|以上の偏相関係数が認められた。また時系列分析の結果,社会的指標の変動からパーソナリティ特性の変動への影響が観察された。得られた結果の意義について考察された。
キーワード パーソナリティ特性,時間横断的メタ分析,社会指標,時代変化
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal92-1#20310
ページ 52-67
種類 展望論文
タイトル 昆虫食受容に関する心理学的研究の動向と展望
著者 元木 康介・石川 伸一・朴 宰佑
要約 近年,環境・栄養面での利点などにより,昆虫食が注目されている。しかしながら,日本を含む先進国における昆虫食受容の割合は依然として低いままであり,昆虫食受容をいかに高めるかが大きな課題になっている。特に,昆虫食受容という問題には昆虫に対する嫌悪感などの心理的な要因が深く関わっている。そのため,昆虫食受容に対する理解の深化や促進のためには心理学的アプローチが不可欠である。本稿では,欧米を中心とした昆虫食受容に影響する要因とその心理過程についての研究を包括的にレビューし,昆虫食受容モデルを提案した。そのモデルに基づいて,受容促進策について論じた。また,心理学的な観点から,今後の昆虫食受容研究の展望を述べた。
キーワード 昆虫食,消費者受容,新奇食品,官能評価
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal92-1#20402