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心理学研究 第92巻 第3号(2021年8月)

ページ 157-166
種類 原著論文
タイトル 愛着不安は親密な関係内の暴力の先行要因となり得るのか?――恋愛関係と夫婦関係の縦断調査から――
著者 金政 祐司・古村 健太郎・浅野 良輔・荒井 崇史
要約 本研究は,愛着不安と親密な関係における暴力(IPV)の因果関係を明らかにすることを目的として実施された。これまでの研究では愛着不安がIPVを増大させることが報告されているものの,それらの研究の多くは横断研究であり,それゆえ,厳密に言えば,愛着不安とIPVのどちらが先行要因なのかについて明確に示されたとは言い難い。この点を踏まえ,本研究では,恋愛関係ならびに夫婦関係に関して2つの縦断調査を実施した。研究1では,現在,恋人のいる若年層,392名を対象に6ヵ月間の縦断調査を,研究2では,成人期前期ならびに中年期の既婚者,412名を対象として2年間の縦断調査を実施した。交差遅延効果モデルによる分析の結果,双方の関係において,愛着不安は後のIPVの増大を予測していた。それらの結果について,成人の愛着理論ならびにIPVの予防の観点から議論を行った。
キーワード 愛着不安,親密な関係における暴力,恋愛関係,夫婦関係,縦断調査
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal92-3#20013
ページ 167-177
種類 原著論文
タイトル 詐欺電話接触時の夫婦間における相談行動意図の規定因
著者 讃井 知・島田 貴仁・雨宮 護
要約 詐欺電話の被害を未然に防ぐためには,詐欺電話を受けた時の配偶者への相談行動が有効であることが指摘されている。本研究の目的は,詐欺電話を受けた時の配偶者への相談行動を高める要因を明らかにすることである。2019年12月に高齢者夫婦のみの世帯,874世帯(n = 1,748)を対象としたアンケート調査を行い,普段の夫婦の関係満足度や,相談相手としての信頼が詐欺電話を受けた時の相談行動意図に与える影響をAPIM分析により検証した。その結果,関係満足度が相談相手としての信頼を媒介し,相談行動意図に影響する間接効果が妻と夫の双方で確認された。また,夫の関係満足度が妻の相談行動意図を高めるパートナー効果も確認された。さらに,夫婦の関係満足度は普段のコミュニケーションや,積極的な問題対処方略と関連していた。これらの結果は,普段から夫婦のコミュニケーションや積極的な問題対処方略を心掛けることが,関係満足度に関連するだけでなく,詐欺の未然防止に対しても効果的であることを示唆する。
キーワード 特殊詐欺,防犯,ペアデータ,夫婦関係満足,行為者-パートナー相互依存性モデル
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal92-3#20024
ページ 178-187
種類 研究資料
タイトル 心理学的研究における重回帰分析の適用に関わる諸問題
著者 吉田 寿夫・村井 潤一郎
要約 重回帰分析は心理学的研究において頻繁に使われている多変量解析法の1つであるが,ほとんどの研究において不適切ないし誤った適用がなされている。本論文では,このような現状を効果的に解消するために,「心理学研究」誌に掲載されている論文における重回帰分析の適用に関わる問題点を整理して具体的に論述した。指摘したことの要点は,「独立変数が複数あるから」とか「独立変数同士(または,独立変数と統制変数の間)に関係があると考えられるから」というだけで短絡的に適用するのではなく,「研究の目的が説明であるのか予測であるのか」や「各変数の間にはどのような因果関係が存在しているか」に関して熟考することが重要である,ということである。
キーワード 重回帰分析,誤用,因果関係の探究,「心理学研究」誌
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal92-3#19226
ページ 188-196
種類 研究資料
タイトル 実証的研究の事前登録の現状と実践――OSF事前登録チュートリアル――
著者 長谷川 龍樹・多田 奏恵・米満 文哉・池田 鮎美・山田 祐樹・高橋 康介・近藤 洋史
要約 現在の心理学における再現性の危機の中で,心理学的な研究の信頼性を高めるための救済策として,事前登録が考えられている。しかし,ほとんどの心理学研究者にとって事前登録は従来とは異なる営為であるため,自身の研究に事前登録を導入することは難しいと考えられている。本論文では,事前登録を促進するために,Open Science Frameworkを用いた事前登録について,初心者向けに詳細かつ実践的なステップバイステップのチュートリアルを提供する。さらに,補足資料として,初心者の実践経験の典型的な例とその修正例を掲載している。最後に,透明性の高い研究,登録済報告,プレプリント,オープンサイエンス教育など,事前登録に関連する様々な課題について議論する。本論文が日本における再現性のある心理科学の進歩に寄与することを期待している。
キーワード 再現性の危機,事前登録,オープンサイエンス,透明性の高い研究,追試
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal92-3#20217
ページ 197-203
種類 研究報告
タイトル 若手の理学療法士・作業療法士のバーンアウト傾向とセルフ・コンパッションの関連
著者 水野 雅之・菅原 大地・谷 秀次郎・吹谷 和代・佐藤 純
要約 本研究の目的は,若手の理学療法士と作業療法士におけるセルフ・コンパッションと職場におけるソーシャル・サポート,職務ストレッサーのバーンアウト傾向との直接的な関連と,セルフ・コンパッションとソーシャル・サポートの,職務ストレッサーを媒介したバーンアウト傾向との間接的な関連を検討することであった。就職後5年以内の理学療法士124名と作業療法士63名がウェブ調査に参加した。共分散構造分析によって,職種を統制した変数間の関連を検討した。得られたモデルによると,(a) セルフ・コンパッションは直接的にも,職務ストレッサーを媒介してもバーンアウト傾向と負の関連があること,(b) 上司からのサポートは直接的に脱人格化と負の関連があるとともに,職務ストレッサーを媒介してバーンアウト傾向と負の関連があること,(c) 同僚からのサポートは個人的達成感の後退と負の関連があることが示された。以上の結果から,セルフ・コンパッションと職場におけるソーシャル・サポートが,若手の理学療法士と作業療法士のバーンアウトの予防に有効に機能する可能性が議論された。
キーワード 理学療法士,作業療法士,バーンアウト,セルフ・コンパッション,ソーシャル・サポート
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal92-3#20317
ページ 204-210
種類 研究報告
タイトル 学業目標の重要度と困難度が誘惑対処方略の有効性に及ぼす影響
著者 湯 立・外山 美樹・三和 秀平・長峯 聖人・海沼 亮・相川 充
要約 本研究の目的は,学業目標の重要度と困難度が実際の学習場面における誘惑対処方略と目標優先行動の関連を調整するかどうかについて検討することであった。そのため,大学生(N = 64)を対象に,週に1回6週間に渡る日誌法調査を行った。マルチレベル分析の結果,誘惑対処方略によって異なる特徴がみられた。具体的には,「目標意味確認方略」と目標優先行動の関連は,目標の重要度と困難度によって調整された。「目標実行方略」と目標優先行動の関連は,目標の困難度のみによって調整された。「誘惑回避方略」は,目標の性質にかかわらず,目標優先行動を促進した。これらの結果より,誘惑対処方略を効果的に使用するために,目標の性質を考慮すべきであることが示唆された。
キーワード 自己統制,誘惑対処方略,目標,日誌法
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal92-3#20321
ページ 211-216
種類 研究報告
タイトル 他者のプライバシー意識とTwitter上での他者情報公開との関連
著者 太幡 直也・佐藤 広英
要約 本研究では,他者のプライバシー意識と Twitter 上での他者情報公開との関連について検討した。先行研究に基づき,他者のプライバシー意識が Twitter 上での他者のプライバシー懸念を介して,Twitter 上での他者情報公開に関連するというモデルを立てた。Twitter を利用している大学生153名を対象に,Twitter 上での最近1ヵ月の友人,知人に関する他者情報公開に回答するように求めた。また,他者のプライバシー意識,他者のプライバシー懸念に関する尺度にも回答するように求めた。その結果,予測したモデルを支持する結果が得られた。他者のプライバシー意識は,他者情報公開数との直接的な関連はみられなかった。
キーワード Twitter,他者情報公開,他者のプライバシー意識,他者のプライバシー懸念
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal92-3#20327