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心理学研究 第92巻 第4号(2021年10月)

ページ 227-236
種類 原著論文
タイトル 注意の分割を伴う気晴らしが気分とネガティブな思考に及ぼす影響
著者 石川 遥至・浮川 祐希・野田 萌加・越川 房子
要約 不快な思考を妨害することを目的とした集中的気晴らしは抑うつ気分に対する主要な対処方略であるが,不適応的な回避として機能する場合や,問題の受容を妨げる場合もある。本研究は,集中的気晴らしと,気晴らしを行いながら過去の不快な対象について考える注意分割気晴らしが,気分,不快な対象に関する思考に及ぼす効果を検討した。参加者は65名の大学生,大学院生であり,ネガティブな出来事についての反すうの後,8分間の課題(注意分割気晴らし,集中的気晴らし,安静のいずれか)を行い,その後5分間,安静に過ごした。一週間後,参加者は再度反すうを喚起された。反すうの喚起,課題,安静時間,反すうの再喚起の後で,気分状態と出来事の評価を測定した。集中的気晴らし群は課題後に他の2群よりも低い不安得点を示した。一方,集中的気晴らし群の高反すう傾向者は反すうの再喚起後に統制群よりも高い緊張と興奮得点を示した。注意分割気晴らし群の参加者は,集中的気晴らし群と比べて一週間後に出来事に関する非ネガティブな思考内容を報告する割合が高かった。これらの結果から,気晴らし時の注意状態が気分や不快な記憶への態度に影響を及ぼすことが示唆された。
キーワード 気晴らし,反すう,注意,情動制御
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal92-4#19037
ページ 237-247
種類 原著論文
タイトル 日本人における音楽聴取の心理的機能と個人差
著者 池上 真平・佐藤 典子・羽藤 律・生駒 忍・宮澤 史穂・小西 潤子・星野 悦子
要約 人は時代や場所を問わず音楽を聴いてきた。なぜ人は音楽を聴くのであろうか?音楽聴取の機能とは何であろうか?本研究の目的は,音楽聴取の心理的機能と,機能に個人差を生じさせる属性を明らかにすることである。15―88歳の参加者計916名に,音楽聴取の心理的機能とBig Five特性について評定を求めた。因子分析により,音楽聴取の心理的機能の7因子,すなわち「自己認識」,「感情調節」,「コミュニケーション」,「道具的活用」,「身体性」,「社会的距離調節」,「慰め」が抽出された。結果より,上述の7つの機能においては,回答者の性別,年齢,パーソナリティ特性によって個人差がもたらされることが示された。これらの7つの機能の性質と研究の今後の方向性について考察した。
キーワード 音楽聴取,心理的機能,性別,年代,ビッグファイヴ特性
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal92-4#20005
ページ 248-256
種類 原著論文
タイトル デートDV第1次予防プログラムの開発と効果検証――高校生を対象として――
著者 赤澤 淳子・井ノ崎 敦子・上野 淳子・下村 淳子・松並 知子
要約 高校生において既にデートDVが生起している可能性もあることから,高校生を対象としたデートDV予防プログラムの実施は急務といえる。本研究では,高校生を対象として,対人葛藤が生起した時に暴力を用いず,自他双方が納得できるような解決を目指す葛藤解決スキルの獲得を目的としたデートDV第1次予防プログラムを作成した。プログラムには,自身や他者の自己表現を大切にするコミュニケーションスキルであるアサーション,他者の立場に立って他者の感情を理解するという視点取得,および暴力観を導入し,概ね50分で実施した。本プログラムの介入群は79名で統制群は71名であった。効果検証について分析した結果,本研究で作成したプログラムは,暴力観の向上と維持に効果が,また,他者との良好な関係を構築しようとするアサーションの関係形成については短期間の効果が認められた。しかし,対人葛藤が生じた時に相手を説得しようとするアサーションの説得交渉と視点取得向上への効果は認められなかった。今後はプログラムの暴力観への効果について再現性の検討を重ねるとともに,関係形成の長期的効果を目指した改良が求められる。
キーワード デートDV,第1次予防プログラム,アサーション,視点取得,暴力観
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal92-4#20008
ページ 257-266
種類 原著論文
タイトル 制御適合した欲求支援行動がエンゲージメントに及ぼす効果
著者 外山 美樹・長峯 聖人・海沼 亮・三和 秀平・湯 立・相川 充
要約 本研究の目的は,欲求支援行動(自律性支援,関係性支援)と制御焦点(促進焦点,防止焦点)が課題学習へのエンゲージメントならびにパフォーマンスに与える影響について検討することであった。本研究では,促進焦点の高い個人に自律性支援,防止焦点の高い個人に関係性支援が行われた時に,課題へのエンゲージメントならびにパフォーマンスがより高まる仮説を立て,大学生64名に対して実験を行った。実験参加者の制御焦点を測定し,欲求支援行動を操作したうえで課題学習を行ってもらった。それに対するエンゲージメントとパフォーマンスが測定された。その結果,パフォーマンスにおいて仮説は支持されなかったが,課題への状態的エンゲージメントにおいて,仮説は一部支持された。最後に,仮説が支持されなかった理由,およびそれを踏まえた上での展望について考察を行った。
キーワード 自律性支援,関係性支援,制御焦点,エンゲージメント,パフォーマンス
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal92-4#20015
ページ 267-277
種類 研究資料
タイトル 子どもの運動に対する養育態度尺度作成の試み
著者 藤後 悦子・大橋 恵・井梅 由美子
要約 本研究では,小・中学生の親の運動に対する養育態度を測定する尺度を開発し,併存的妥当性,再検査信頼性,予測妥当性の確認等行うことを目的とし,小・中学生の子どもの親1,546名(父親784名,母親762名)を対象に調査を行った。子の運動に対する養育に関する項目を因子分析した結果,共同活動(子どもと一緒に運動や活動すること),支配的対応(反省や改善を求めること),運動の価値伝授(運動の肯定的意義を伝えること)の3因子構造が確認された。次に親の養育態度に関する尺度を用いて,併存的妥当性を確認した。1ヵ月後の再検査信頼性では中程度の信頼性が確認された。場面想定法を用いた予測妥当性の検討では,共同活動が自律的対応と子どもへの肯定的声かけを強め,支配的対応が支配・過干渉を強めており,仮説通りの結果であった。以上より,本尺度は運動に対する養育態度を測定するものとして有効であることが確認できた。
キーワード 生涯スポーツ,スポーツ・ペアレンティング,尺度開発
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal92-4#20205
ページ 278-286
種類 研究資料
タイトル 心理学的知見に対する裁判官の評価――刑事裁判判決文の計量的研究――
著者 福島 由衣・向井 智哉・相澤 育郎・入山 茂
要約 近年,心理学者が証人の供述の信用性や被疑者の虚偽自白について実験や調査を行い,そこから得られた知見を裁判所に証拠として提出する機会が増えてきている。しかし,裁判所は心理学的知見を,必ずしも歓迎してきたわけではない。いくつかの有名事件でその証拠価値が認められなかったことから,心理学的知見に対する裁判所の信用は低いのだと指摘する研究者もいる。そこで本研究では,心理学的知見が利用された過去50件の刑事事件の判決文を対象に,裁判所が心理学的知見に対してどのような判断を行っているか計量的な調査を行い,そのような指摘の妥当性を検討した。その結果,心理学的知見に対する裁判所の判断は,そのほとんどが否定的なものであったことと,その判断に付された理由は9種類に分類できることが示された。最も多かった理由は,心理学的知見を導くために用いられた方法論の不備に関するものであった。
キーワード 心理学的知見,裁判官,刑事裁判,判決文,類型化
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal92-4#20212
ページ 287-292
種類 研究報告
タイトル 未完結感が対人評価に及ぼす影響
著者 小野 由莉花・及川 昌典・及川 晴
要約 物事が中断された時に生じる未完結感は,良好な対人関係の形成や維持を阻害し,ネガティブな評価につながることが指摘されている。しかし,未完結感が対人評価に影響を及ぼす仕組みは,必ずしも明確ではない。本研究では,未完結感が注意や感情の誤帰属を通じて,後の対人評価に影響を及ぼす可能性について検討した。研究1では,未完結なストーリーを読んだ参加者は,完結したストーリーを読んだ参加者よりも,作者に対する関心を高く報告していた。研究2では,ネガティブ感情を伴う未完結ストーリーを読んだ参加者は,ニュートラルな未完結ストーリーを読んだ参加者や,完結したネガティブストーリーを読んだ参加者よりも,ストーリーとは関連のない人物の顔写真をネガティブに評価していた。これらの結果は,未完結感が他者への関心を高めること,未完結感に伴う感情価が対人評価に影響を及ぼすことを示唆している。
キーワード 未完結感,対人評価,感情誤帰属
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal92-4#20329