刊行物のご案内
心理学研究 第93巻 第2号(2022年6月)
種類 | 原著論文 |
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タイトル | 相互作用場面での被受容感と相手との元々の親しさの関連――大学生・高齢者集団における検討―― |
著者 | 福沢 愛・田中 嵐・原田 和弘・増本 康平 |
要約 | 社会的相互作用相手との元々の親しさ・本人の個人差が,社会的相互作用場面での被受容感とどう関連するかを,大学生と高齢者で検討した。説得納得ゲームを行ってもらい,説得者である実験参加者が感じた被受容感,納得者との元々の親しさをその都度測定した。階層的線形モデルによる分析の結果,大学生でのみ,納得者との元々の親しさと説得者が感じた被受容感との間に正の関連が示され,その関連は, 高い相互協調性など東アジア文化特有の心理傾向を持つ説得者で強かった。一方で, 高齢者は平均的に被受容感が大学生よりも高く,納得者との元々の親しさは説得者の被受容感と関連しなかった。また, 相手からのはっきりとした意思表示を望む高齢者の間で, 被受容感が平均的に高い傾向が示された。文化規範から解放された高齢者ほど, 社会的相互作用の相手の要因に関係なく被受容感が高いことが示唆された。 |
キーワード | 被受容感,高齢者,文化的自己観,対人コンピテンス,自尊心 |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal93-2#20055 |
種類 | 原著論文 |
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タイトル | COVID-19感染拡大に伴う職務上の困難感とうつ状態――全国インターネット調査の第1報―― |
著者 | 石田 陽菜・市倉 加奈子・井村 里穂・深瀬 裕子・村瀬 華子・田ヶ谷 浩邦 |
要約 | 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大は,うつ状態などの精神的苦痛の増大をもたらした。その一因として,とくに就労者は在宅勤務の増加などの働き方の大きな変化があった可能性が考えられる。本研究の目的は,COVID-19感染拡大に伴う職務上の困難感がうつ状態に及ぼす影響を検討することとした。本研究では日本在住の就労者を対象に2020年5月に実施されたスノーボーリング式サンプリングによるオンライン調査を実施した。調査内容は,属性,コーピング,職務上の困難感であった。解析対象者919名において,うつ状態を従属変数,職務上の困難感を独立変数,性別,年齢,就労形態,コーピングを調整変数とした階層的ロジスティック回帰分析を実施した結果,「上司・同僚・部下とのコミュニケーションに困難」,「オンオフの切り替えに困難」を感じている人の方がうつ状態である可能性が高かった。本研究では,日本でのCOVID-19感染拡大の第一波における職務上の困難感とうつ状態に関連がある可能性が示された。本研究の限界を踏まえ,今後は幅広く対象者をリクルートすることで,地域や職種がうつ状態に与える影響についても検討されることを期待する。 |
キーワード | 新型コロナウイルス,うつ状態,就労,労働,コーピング |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal93-2#20068 |
種類 | 原著論文 |
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タイトル | 新型コロナ流行下において救急活動を行った消防職員の精神的健康 |
著者 | 畑中 美穂・秋本 陽子・松井 豊 |
要約 | 新型コロナウィルスの感染拡大に伴い,救急活動を担う消防職員は,感染症患者や感染が疑われる者の処置や搬送に従事し,高い感染リスクに曝されることとなった。本研究では,新型コロナ禍において救急活動に携わる日本の消防職員の精神的健康の規定因を検討した。日本全国の消防職員のうち新型コロナ流行後の救急現場に出場した経験を有する者を対象として,国内の第二波流行期である2020年8月にオンライン調査が実施された。調査内容は,個人や職務に関わる基本属性,新型コロナ禍の救急活動による職務ストレス,ソーシャル・サポート,感染脆弱性の下位側面である感染嫌悪,精神的不健康(GHQ-12)であり,有効回答者は2204名であった。「ソーシャル・サポート」が少なく,感染を恐れる個人特性である「感染嫌悪」が高いほど,精神的健康状態は低かった。また,救急活動に関わる職務ストレスの中では,新型コロナへの「感染不安」や,新型コロナ禍特有の「対人ストレス」,「感染防護負担」,および「自宅待機不安」といった経験が多いほど,精神的に不健康であった。これらの結果をもとに,新型コロナ禍の消防職員の精神的健康を護る対策のあり方が議論された。 |
キーワード | 新型コロナ(COVID-19),消防職員,救急隊員,精神的健康,感染嫌悪 |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal93-2#200103 |
種類 | 研究資料 |
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タイトル | 日本語版改訂非緩和共同性尺度の作成 |
著者 | 萩原 千晶・下司 忠大・小塩 真司 |
要約 | 本研究の目的は日本語版改訂非緩和共同性尺度 (J-RUCS) を作成し,その信頼性と妥当性を検討することであった。分析対象者は大学生423名であった。確認的因子分析により誤差共分散を仮定したモデルが支持された。 信頼性に関しては十分な内的一貫性および再検査信頼性が示された。妥当性について,J-RUCSは親密性,共感的関心,否定的共同性,ネガティブな自己視点形容詞群,愛着スタイルとらわれ型,協調性,神経症傾向との間に有意な正の相関が見出され,対して,自己主張,自尊感情との間に有意な負の相関が認められた。以上の結果から因子構造は明確ではないものの,J-RUCSの十分な信頼性および妥当性が確認された。 |
キーワード | 非緩和共同性,共同性,作動性,信頼性,妥当性 |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal93-2#20216 |
種類 | 研究資料 |
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タイトル | PC用日本語版アイオワギャンブル課題の開発と英語版との同等性 |
著者 | 遊間 義一・金澤 雄一郎・河原 哲雄・東條 真希・荻原 彩佳・石田 祥子 |
要約 | 本研究では,アイオワギャンブル課題(IGT)の英語版を基に日本語版を開発し,生物学的同等性試験の考え方にならい,並行群間比較法を用いて,複数の日本の大学・大学院に在学する学生63名を,無作為に日本語版と英語版とに割付け,両者の同等性を検証した。先行研究から同等性マージンを±30%,対数変換した場合(log(0.70)=-0.36, log(1/0.70)=0.36)に設定し,同等性評価パラメータを日本語版と英語版の第1ブロックから第5ブロックの対数変換後のAdvantageous Deck(s)の選択数の差とした。その結果第1ブロックから第5ブロックの対数変換後のAdvantageous Deck(s)の選択数の母平均の差の両側90%信頼区間は,同等性マージンの範囲内にあった。これらの結果は,日本語版IGTと英語版IGTが同等であることを示している。我々が作成した日本語版IGTの実行ファイル及びソースプログラムは,誰でも無償で利用可能である。今後は,日本のサンプル同士あるいは,日本のサンプルと他の国のサンプルによるIGTの結果の比較研究が行われることが期待される。 |
キーワード | 日本語版アイオワギャンブル課題,同等性試験,ランダム化比較試験,オープンソースプログラム |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal93-2#20232 |
種類 | 研究資料 |
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タイトル | 仮名文字の複雑性を表す指標としての周囲長複雑度の妥当性 |
著者 | 齋藤 岳人・樋口 大樹・井上 和哉・小林 哲生 |
要約 | 周囲長複雑度は,画像の面積と周囲の長さによって定義される単純な指標であり,アルファベット語圏を中心に文字の複雑性を表す指標として広く用いられている。本研究では,周囲長複雑度が日本語の仮名文字(ひらがなとカタカナ)においても複雑性を表す指標として妥当なのか検証するため,主観的複雑度との関係を検討した。日本語話者と英語話者に文字の主観的複雑度を評定させた上で,それぞれの話者の文字ごとの主観的複雑度の平均を算出した。分析の結果,主に3つのことが示された。第一に,周囲長複雑度は主観的複雑度と.85以上の高い相関を示し,その相関係数は主観的複雑度と画数(文字の複雑性を表す指標のひとつ)との間の相関係数よりも高かった。第二に,周囲長複雑度は,著しく形態がかけ離れた書体を除いて,異なる書体間でも高い相関を示した。第三に,主観的複雑度は日本語話者と英語話者の間で高い相関を示していた。これらの結果は,日本語の仮名文字においても周囲長複雑度が文字の複雑性を表す妥当な指標であることを示唆する。 |
キーワード | 周囲長複雑度,主観的複雑度,文字認知,ひらがな,カタカナ |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal93-2#20237 |
種類 | 研究資料 |
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タイトル | 対人問題インベントリー短縮版の作成および信頼性・妥当性の検討 |
著者 | 鈴木 康之郎・田中 圭・白砂 佐和子・沢宮 容子 |
要約 | 本研究の目的は,対人問題インベントリー短縮版を作成し,信頼性および妥当性の検討を行うことであった。研究1では,項目反応理論を用いて対人問題インベントリーの短縮版を作成した。分析の結果,原版および既存の短縮版(IIP-32)と比較して,測定精度が十分に保たれた短縮版であることが示された。特に,対人問題を強く感じている者に対してより高い測定精度を有することが示唆された。また,確認的因子分析の結果,先行研究と同様の因子構造および円環構造が確認された。研究2では,対人問題インベントリー短縮版の信頼性および妥当性の検討を行った。その結果,十分な内的整合性および再検査信頼性が確認された。また,抑うつ,状態不安,摂食障害傾向,心理的症状,自尊感情,パーソナリティとの関連が認められ,基準関連妥当性が確認された。最後に,短縮版の臨床場面における実用可能性について論じた。 |
キーワード | 対人問題,項目反応理論,短縮版,信頼性,妥当性 |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal93-2#20241 |
種類 | 研究報告 |
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タイトル | 中学生のソーシャルスキルと学校適応問題――学校生活満足度,自尊感情,抑うつ,攻撃性との関連―― |
著者 | 西村 多久磨・藤原 和政・村上 達也・福住 紀明 |
要約 | 本研究の目的は,中学生を対象にソーシャルスキルと学校適応との関連を検討することであった。学校適応に関する指標として学校生活満足度,自尊感情,抑うつ,攻撃性に着目した。公立中学校1校の1年生から3年生の284名(男子145名,女子139名)を対象に質問紙調査が実施された。相関分析および相関係数の大きさを比較した結果,相手のことを気遣ったり,集団のルールを守ったりすることなどを表す配慮のスキルは攻撃性と負の関連を,一方で,仲間との積極的な交流や自己主張などを表すかかわりのスキルは,学校生活満足度の下位尺度である承認感および自尊感情と正の関連を,学校生活満足度の下位尺度である被侵害感および抑うつとは負の関連を示した。これらの結果から,それぞれのソーシャルスキルが広範囲にわたる学校適応の問題に対して弁別的な効果を有する可能性が示唆された。 |
キーワード | ソーシャルスキル,学校適応,中学生,相関分析 |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal93-2#21301 |