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心理学研究 第95巻 第2号(2024年6月)

種類 原著論文
タイトル 最不遇者情報が集団決定に与える効果――除去土壌福島県外処理問題を題材とした集団討議実験――
著者 相馬 ゆめ・中澤 高師・辰巳 智行・大沼 進
要約 本研究の目的は討論者に与えられる情報が,除去土壌福島県外処理問題を題材とした集団討議の帰結に与える効果を検討することである。公共的な議論の場において,市民は複数の共通善の観点から決定をすることが求められる。そのような討議場面では客観的・中立的な情報が提供されるべきで,特定の立場に加担する情報は含まれるべきではないとされる。共通善の基準は功利主義,平等原理,マキシミン原理など多元的である。だが,最不遇者についての情報が与えられなければ,彼らに配慮した決定をすることは困難だろう。福島の人々の情報の提示の有無を操作した集団討議実験を行った。情報を提示した条件の参加者は,提示しなかった条件の参加者よりも,議論の結論は福島の人々を重視したものであると評価した。
キーワード 集団討議実験,除去土壌,討議結論の評価,共通善,最不遇者情報
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal95-2#22030
種類 原著論文
タイトル 自閉スペクトラム症児の親における援助要請促進要因の縦断的検討
著者 山根 隆宏
要約 自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder: ASD)児もつ親は育児ストレスが高く,医療機関や相談機関のサポートを得ることが重要である。しかしながら,ASD児をもつ親の援助要請を促進する要因については研究が限られており,縦断研究も不足している。本研究は2歳から18歳のASD児をもつ親212名を対象に,オンラインによる縦断調査を行い,相談の意思,援助要請行動,サポートへの期待,養育ストレッサーを測定し,援助要請行動の促進要因を検証した。その結果,医療機関・療育機関とインターネットへの相談の意思と援助要請行動の得点差は母親が父親よりも有意に高く,母親においてのみフォーマルなサポート源への得点差がインフォーマルなサポートよりも有意に高い得点であった。一方,父母間で援助要請行動に有意な差はみられなかった。階層的重回帰分析の結果,援助要請行動に対するサポートへの期待と養育ストレッサーの直接効果や,相談の意思と援助要請行動に対する養育ストレッサーとサポートへの期待の調整効果はサポート資源によって異なっていることが示された。これらの結果から母親においてサービスギャップがより見られること,相談の意志が高いことが援助要請行動を高めるが,サポート資源によってはサポートへの期待の高さがその促進に重要であることが示唆された。
キーワード 援助要請,自閉スペクトラム症,親,養育ストレッサー,ソーシャルサポート
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal95-2#22036
種類 原著論文
タイトル 動物虐待性向は攻撃性や共感性と関連があるか?――ベイジアンネットワークモデルの構築と評価――
著者 財津 亘
要約 本研究は,WEB調査を基に,動物虐待性向における攻撃性や共感性,または未成年期における被虐待経験や動物飼育経験といった背景要因の影響を検討したものである。調査協力者には,(a) 動物虐待性向尺度(AAPS),(b) Buss-Perry攻撃性質問紙(BAQ), (c) 多次元共感性尺度(MES),(d) 被虐待経験と動物飼育経験に関する尺度に回答をもとめた。354名の調査協力者(198名が男性,156名が女性,平均年齢49.1歳,標準偏差12.5)の回答について,ベイジアンネットワーク(BN)を用いて分析を行った。BNを用いた理由として,本研究の仮説モデルが動物虐待性向への直接的あるいは間接的な依存関係(つまりは,複数の変数が連鎖した関係)を想定していることが挙げられる。また,BNは,データセットを基に自動的にモデルを構築できるほか,確率推論という機能を用いたシミュレーションによって,感度分析が可能であるという特徴がある。本研究で構築されたモデルによると,(a) 攻撃性の中の「短気」は,動物虐待性向のうちの「スリル」と直接関連がみられ,(b) 身体的攻撃性は,動物虐待性向のうちの「行動性向」と直接関連があり,(c) 性別は,攻撃性および動物虐待性向の交絡因子としては作用しなかったことを示した。さらに,感度分析の結果によると,攻撃性の「短気」が動物虐待性向の「スリル」を高めることを示唆した。
キーワード 動物虐待性向,攻撃性,共感性,被虐待および動物飼育経験,ベイジアンネットワーク
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal95-2#22038
種類 原著論文
タイトル 高等学校中途退学とソーシャルスキルの関連――学校生活満足度を媒介とした検討――
著者 藤原 和政・西村 多久磨・福住 紀明
要約 本研究では,高校1年生を対象に高等学校中途退学と関連する要因について,ソーシャルスキルの知識面と実行面が学校生活満足感を媒介して中途退学に繋がる媒介プロセスを想定した検討が行われた。調査対象者は,高校1年生332名であり,9月にソーシャルスキル尺度 (知識面,実行面) と学校生活満足度尺度の回答を求められた。同一年度内に中途退学した生徒は合計49名であった。カテゴリカル変数を含むパス解析の結果,ソーシャルスキルの知識面から実行面へ正のパスが認められた。ソーシャルスキルの実行面と中途退学の直接的な関連が示され,学校生活満足度の一部である承認感を媒介とした間接効果も確認された。以上の結果を踏まえ,高校1年生の中途退学予防を目的とした援助の必要性について議論がなされた。
キーワード 高等学校中途退学,縦断調査,カテゴリカルパス解析,ソーシャルスキル,学校生活満足度
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal95-2#22039
種類 原著論文
タイトル 特定少年実名報道への支持と,責任付与・改善更生・重大性に関する各認知との関連
著者 向井 智哉・松木 祐馬・貞村 真宏・綿村 英一郎
要約 2021(令和3)年の少年法改正によって,18歳・19歳を含む特定少年という年齢区分が新設され,当該年齢の少年の実名報道が解禁された。本研究は,このような状況を背景に,特定少年の実名報道への支持を規定する要因を検討することを目的とした。具体的には,実名報道への支持が特定少年の責任付与の重要性認知および改善更生の重要性認知によって規定され,これらの認知が結果の重大性認知によって規定されるというモデルを設定し,個人レベルと罪名レベルを想定するマルチレベル構造方程式モデリングによって検証した。2,591名のデータを分析したところ,このモデルは個人レベルでは支持された。しかし,罪名レベルにおいては,実名報道への支持と特定少年の責任付与の重要性認知および改善更生の重要性認知の関連は有意でなく,モデルは部分的にしか支持されなかった。
キーワード 少年法,実名報道,特定少年,マルチレベル構造方程式モデリング
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal95-2#22040
種類 研究資料
タイトル 修飾語付加による感情刺激作成の試み――イメージ像変化の少ない刺激作成――
著者 本山 宏希・宮﨑 拓弥・菱谷 晋介
要約 本研究では,同一名詞に修飾語を付加することにより,感情的に快,中性,不快な名詞句を作成した。はじめに,名詞を快,中性,不快に変える修飾語の選定を行った。次いで,選定した修飾語を用いて作成した名詞句の主観的な感情価および主観的な接触頻度を測定した。さらに,名詞句を呈示しそれが指し示すイメージを形成させたとき,名詞が同一で感情が異なる名詞句間で形成されるイメージ像が変化する程度を測定し,先行研究と比較した。その結果,本研究で作成した名詞句から形成されたイメージ像は,快,中性,不快名詞句間で違いが少ないことが示された。最後に,感情刺激としての妥当性を検証するために,主観的な感情価・接触頻度を確認した快,中性,不快名詞句をリストに用いた偶発再生実験を行った。その結果,快,不快名詞句は,中性名詞句に比べて有意に再生成績が高かった。感情刺激の記憶に関する従来の研究においても同様の結果が示されていることから,本研究で作成した名詞句が,再生成績に影響を与えるほど感情を喚起させることが示唆された。本研究の感情刺激は,感情,記憶,イメージ研究などの基礎資料になると考えられる。
キーワード 感情価,イメージ,偶発再生,名詞句
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal95-2#22230
種類 研究報告
タイトル 学業領域の知覚された無気力における発達的変化の検討
著者 住岡 恭子・山本 康裕・山内 裕斗
要約 本研究では,大学生の学生生活サイクルにおける知覚された無気力の発達的変化を縦断的に検討した。 2019年から2022年にかけて1年に1回ずつ計4回の調査を実施し,計545名を分析対象とした。潜在曲線モデルを用いた分析から,知覚された無気力の初期値や経年的変化,およびその個人差を説明する要因を検討した。その結果,労力回避と達成非重視は経年的に増加しているが,葛藤には経年的変化がみられないこと,男性の方が女性よりも労力回避と達成非重視の初期値が高く,女性の方が男性よりも葛藤の初期値が高いこと, Time 1での学年が高い学生の方が,学年が低い学生と比べて全ての下位尺度の初期値が高く,さらに労力回避と達成非重視の変化率はTime 1での学年が高くなるにつれて低下することが示された。本研究から,知覚された無気力が学生生活サイクルのどの段階で生じているかという発達的観点を持つ重要性が示唆された。
キーワード 知覚された無気力,学生生活サイクル,縦断調査,潜在曲線モデル
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal95-2#23303