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心理学研究 第95巻 第3号(2024年8月)

種類 原著論文
タイトル 両親間葛藤,情緒的不安定性と青年の心理的適応の関連に対する対処行動の調整効果
著者 釣谷 美沙貴・直原 康光
要約 本研究は,青年を対象に両親間葛藤に対する対処行動尺度を作成しその妥当性を検証するとともに,両親間葛藤が情緒的不安定性を介して青年の心理的適応に及ぼす影響を対処行動がどのように調整するかを明らかにすることを目的として,高校生を対象に質問紙調査を行い,132名を分析対象とした。両親間葛藤に対する対処行動尺度は,「葛藤への関与」,「葛藤からの回避」,「気晴らし」,「支援希求」,「認知構築」の5つの高次因子としてまとまり,一定の構成概念妥当性が確認できた。調整媒介分析の結果,「支援希求」,「気晴らし」は,情緒的不安定性が青年の抑うつや自尊感情に及ぼす影響の保護因子となり,「葛藤への関与」は,攻撃性に及ぼす影響の危険因子となることが示唆された。
キーワード 両親間葛藤,対処行動,情緒的不安定性,青年期,調整媒介分析
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal95-3#22049
種類 原著論文
タイトル 高齢者の日常生活における感覚の困りごとに関する検討――中年者群を含めた検討――
著者 日高 聡太・川越 敏和・浅井 暢子・寺本 渉
要約 私たちの感覚機能は加齢とともに低下する。高齢者は,補助器具,医学的処置,および複数感覚統合等の感覚メカニズムを用いて感覚の衰えを補うことが報告されている。我々の知る限り,日常生活における高齢者の感覚の困りごとに関する体系的な調査はこれまで行われてこなかった。本研究では,オンライン調査を通じて,中年者(40―50歳)をサンプルに含め,高齢者(60―70歳)がどのような感覚の困りごとを有するのか,またそれにどのように対処しているのかを検討した。度数分析とテキストマイニング分析から,聴覚と体の動きに関して,加齢によって高齢者においてより頻繁に困りごとが報告されることが示された。視覚の困りごとについては全ての年齢群で報告され,その原因として老化が挙げられていたが,高齢者では補助器具や外科手術により対処されていた。50代の参加者で最も頻繁に困りごとが報告された。本調査結果は,日常生活において自覚される感覚の困りごとは加齢に起因するものである一方,必ずしも高齢者で顕著ではないことを示唆している。
キーワード 感覚,日常生活の困りごと,オンライン調査,加齢
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal95-3#22051
種類 原著論文
タイトル 主観的報酬は介護福祉士の離職を防げるか?――パネル調査を用いた横断的, 縦断的検討――
著者 井川 純一・徳岡 大・五百竹 亮丞・中西 大輔
要約 本研究では, 介護福祉士の離職の抑制要因として主観的報酬に着目した3波のパネル調査を行った (T1 (N = 1,087), T2 (N = 690), T3 (N = 546))。経済, 成長, 社会, 対人, 安定の5因子からなるヒューマンサービス従事者の主観的報酬尺度 (The Subjective Rewards Scale for Human Service Profession) の尺度得点を独立変数とし, その後1年間の離職の有無を従属変数とした縦断的ロジスティック回帰分析, 現在の職場への離職意図及び介護福祉士の職業そのものへの離職意図を従属変数とした横断的重回帰分析を行ったところ, 経済報酬や安定報酬が介護福祉士の離職を防ぐ機能を持つことが明らかとなった。また, 成長報酬や対人報酬などの動機づけ要因は介護福祉士の職業そのものの離職を防ぐ報酬として機能していた。本研究で有意な効果が認められた報酬のうち, 経済報酬は中点よりも低い水準であり, 少なくとも他の職業と同水準の報酬水準に向上させる必要がある。一方, 比較的高い水準を示した安定報酬及び対人報酬, 成長報酬は介護福祉職の業務のポジティブな側面を示しており, 人材確保のためにも積極的に広報していく必要がある。
キーワード 主観的報酬,離職,離職意図,介護福祉士,パネル調査
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal95-3#22052
種類 原著論文
タイトル 時間的分離課題における垂直線と水平線の視野内空間位置の非対称性
著者 平川 千波・金沢 創
要約 視覚の知覚は視野全体にわたって一様ではなく,パフォーマンスは空間位置による不均一を示す。このような非対称性はコントラスト感度を介するものを含む数多くのタスクで観察されているが,垂直線は空間位置に関係なく一定の成績で検出することができるとの報告がある。そこで本研究では,垂直線と水平線の空間における非対称性について時間的分離課題を用いて検討を行った。結果,水平線は空間における非対称性が見られたが,垂直線には非対称性は見られなかった。このことは,外因性や内因性の注意では非対称性を減衰することはできないが,情報抽出が早く終わる場合には非対称性が生じない可能性があることが示唆された。
キーワード 視覚的持続,時間的分離課題,視覚的パフォーマンスフィールド,水平・垂直異方性,垂直子午線非対称性
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal95-3#22053
種類 研究報告
タイトル 大学生スポーツ競技者のグリットとパフォーマンス低下の曲線的関係
著者 八斗 啓悟・菅原 大地
要約 本研究は日本人大学生スポーツ競技者を対象として,グリットがパフォーマンスに及ぼす直線的及び,曲線的関係について2回の調査を行い検討した。研究1では,205名の大学生スポーツ競技者を対象に横断調査を行った。重回帰分析の結果,グリットの努力の粘り強さとパフォーマンス低下の間に逆U字型の曲線的関係が示された。研究2では,研究1で調査を行った者のうち99名の大学生スポーツ競技者を対象に縦断調査を行った。重回帰分析の結果,グリットとパフォーマンス低下の間に有意な関連はみられなかったが,効果量とその信頼区間から興味の一貫性とパフォーマンス低下の間にU字型の曲線的関係が示唆された。これらの結果から,横断的には努力の粘り強さとパフォーマンス低下には逆U字型の曲線的関係があること,興味の一貫性とパフォーマンス低下の縦断的関係はさらなる検討が必要であることが示された。
キーワード グリット,スポーツ,パフォーマンス,曲線的関係
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal95-3#22304