刊行物のご案内
心理学研究 第96巻 第4号(2025年10月)
種類 | 原著論文 |
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タイトル | 中学生における仲間集団の排他性と関係性被害の関係――集団外の対人阻害の点から―― |
著者 | 鈴木 修斗・舒 悦・大谷 和大・加藤 弘通 |
要約 | 先行研究において,仲間集団の排他性と関係性被害との関連が指摘されている。しかし,従来のグループ外の者の排除に焦点化した排他性研究では,被害者はグループから抜け出しにくく,グループ内の対人トラブルが複雑化・深刻化するという説明に留まっており,グループ外の者に対して排他的であるグループ内で関係性被害が起こるメカニズムについては直接,実証的に検討されていない点で課題があった。そこで本研究では,仲間集団の排他性をグループ外の第三者が新たにグループ内に入ってくることを阻害する「内関係阻害」とグループ内の人がグループ外の者との関係をもつことを阻害する「外関係阻害」の2つに分けて,それらがグループ内の関係性被害とどのように関連するのか検討した。中学生957名を対象に質問紙調査を行った結果,内関係阻害ではなく,外関係阻害がグループ内の関係性被害と関連していることが示された。また,この関係は男女に違いはなく認められることも明らかにされた。このことから,外関係阻害により,被害者は他のグループに移動するといった対処がしにくい雰囲気の中で,グループ内の関係性被害を受けている可能性が示唆された。 |
キーワード | 仲間集団,排他性,関係性被害,中学校 |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal96-4#23045 |
種類 | 原著論文 |
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タイトル | 今ここで他者の感情をいかに制御するのか?――即時的対人感情制御方略と非言語行動―― |
著者 | 山本 恭子・木村 昌紀 |
要約 | 本研究は短期的相互作用で生じる即時的な対人感情制御に着目し,制御方略の内容や構造を検討した。くわえて,制御時の非言語行動との関連について検討した。研究1では即時的対人感情制御の経験を1つ想起させ,その際に使用した制御方略と自身の非言語行動について回答を求めた。即時的対人感情制御方略には「認知的サポート」,「社会情動的サポート」,「感情の増強」,「注意の方向づけ」,「敵意・否認」,「チアアップ」の6因子が見いだされた。非言語行動は「接触」,「受容」,「拒否・回避」,「強調」,「抑制・中立化」の5因子が抽出された。相関分析の結果,非言語行動はそれぞれの制御方略の意図に沿って表出されることが示された。研究2は場面想定法による調査を行い,即時的対人感情制御方略と非言語行動について研究1と同様の因子が抽出された。制御方略や非言語行動は,ターゲットの感情の種類により異なることが示された。今後の研究では非言語行動を実験的に検討する必要がある。 |
キーワード | 対人感情制御,非言語行動,即時的社会的相互作用,因子構造 |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal96-4#24001 |
種類 | 原著論文 |
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タイトル | 動画広告における打消し表示の文字サイズが視線停留と記憶に及ぼす影響 |
著者 | 伊藤 資浩・河原 純一郎 |
要約 | 動画広告には,事業者による商品やサービスの訴求ポイント (強調表示) が含まれる。これに対して,例えば「会員限定」のように,強調表示に付随する条件が伴う場合もある。そのような条件に関する記載,いわゆる打消し表示を適切に認識できない場合,不当表示となり,消費者に不利益を与える可能性がある。本研究は,2種類の動画広告 (スーツとスマートフォン) について,打消し表示の典型的な文字サイズである30ポイントと55ポイントまたは80ポイントで比較し,動画広告視聴中の打消し表示に対する視線計測,および,再生・再認記憶に及ぼす影響を検証した。計測の結果,スーツの動画広告のみ,打消し表示への視線停留時間は30ポイント条件に比べて80ポイント条件で長く,再認率が高かった。しかし,そのような文字サイズの効果はスマートフォンの動画広告では認められず,文字サイズが視線停留時間や記憶成績に及ぼす影響は限定的であった。これらの結果から,動画広告において打消し表示が適切に視線停留,そして,記憶されるためには,単に大きく視覚表示するだけでは不十分であると言える。 |
キーワード | 打消し表示,消費者心理,注意,記憶,視線計測 |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal96-4#24004 |
種類 | 原著論文 [方法・開発] |
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タイトル | 学級内地位認知(SICS-P)法の妥当性の検討 |
著者 | 有倉 巳幸・稲垣 勉・神山 貴弥 |
要約 | 学級内地位は,学級内での適応感や対人行動に影響を及ぼすことが明らかになっている。海外の研究では,仲間指名法といったソシオメトリック人気を測定する方法が用いられるが,本邦の研究では,倫理的な問題などがあり用いることができない。そこで,本研究は,有倉(2017)で使用された学級内地位認知の測定方法を見直し,Selected In-class Status Perception(以下,SICS-Pとする)法として開発し,その妥当性の検討を行った。先行研究の知見より,学級内地位は3群に分けられることから,SICS-P法は,これらを分ける三つのシナリオを作成し,その中から一つのシナリオを選択するという手法を用いた。その結果,各シナリオが自身に当てはまる程度,友人に対する自身の影響力認知,コミュニケーション能力(自己主張性,共感性,同調性)のいずれにおいても,3群間で予測に一致した有意差が見られた。また,交差妥当化の手続きとして,サンプルをランダムに2群に分けてそれぞれ同様の分析を行ったところ,サンプル間でほぼ同じ結果が得られた。これらの結果からSICS-P法の妥当性が確認された。 |
キーワード | SICS-P法,学級内地位,スクールカースト,コミュニケーション・スキル |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal96-4#23228 |
種類 | 原著論文 [方法・開発] |
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タイトル | バーンアウト尺度の比較――邦訳版尺度の妥当性と信頼性の検討―― |
著者 | 井川 純一 |
要約 | 本研究では,主に海外で使用されている無料のバーンアウト尺度を紹介し,それらの信頼性, 妥当性について検討するために看護師 (N = 492),介護福祉士 (N = 461) の合計953名を対象としたWeb調査を行った。対象としたのは,Japanese Burnout Scale (JBS),Copenhagen Burnout Inventory (CBI),Shirom-Melamed Burnout Measures (SMBM),Oldenburg Burnout Inventory (OLBI),Burnout Assessment Tool (BAT), Matches Measure (MM) であった。まず,確認的因子分析を用いてそれぞれの尺度の構造的妥当性を検討した。JBS及びBATのモデル適合度は良好な水準であったが,SMBMは中程度,CBI及びOBIは低い水準に留まった。なお,どの尺度においても下位因子のα係数は十分な水準であった。次に,尺度得点同士の関係を確認した結果,どのバーンアウト尺度においても疲労がバーンアウトの中核的な症状として測定されている一方で,それぞれの観点からから異なる症状をバーンアウトとして測定していることが明らかとなった。ユーザーはバーンアウトのどの症状に着目しているのかに応じてこれらの尺度を使い分ける必要があるだろう。 |
キーワード | バーンアウトの測定,信頼性,妥当性,尺度比較,尺度作成 |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal96-4#23231 |
種類 | 原著論文 [方法・開発] |
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タイトル | 日本語版道徳不活性化尺度(J-MDS)の信頼性と妥当性の検討 |
著者 | 古川 善也・中島 健一郎・塚脇 涼太 |
要約 | 道徳不活性化とは,不道徳行動を容易にする認知の歪みであり,道徳基準を内在化している人々がどのように葛藤や罪悪感を回避しつつ,道徳基準に反する行動を実行しているのかを説明する心理的構成概念である。本研究の目的は,この道徳不活性化の傾向を測定するための道徳不活性化尺度の日本語版(Japanese version of Moore’s Moral Disengagement Scale: J-MDS)を作成し,信頼性と妥当性を検討することであった。研究1では探索的因子分析および確認的因子分析から8項目での道徳不活性化尺度における1因子構造の妥当性を確認した。また,道徳不活性化と道徳アイデンティティの内在化,罪悪感傾向との間に負の相関が認められた。研究2では道徳不活性が不道徳行動を有意に予測することを確認し,さらに研究3ではダークトライアド傾向,セルフコントロール,攻撃性に加えての増分的妥当性を確認した。研究4ではJ-MDSの再検査信頼性を確認した。研究5では道徳不活性化が内的帰属の傾向と負の相関,外的帰属の傾向と正の相関関係にあることを示した。以上から,J-MDSは不道徳行動を容易にさせる認知の歪みである道徳不活性化の傾向を測定する尺度としての一定の信頼性と妥当性を持つことが示された。 |
キーワード | 道徳不活性化,認知の歪み,不道徳行動,社会的認知理論,尺度開発 |
個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal96-4#24207 |