刊行物のご案内
心理学研究 第97巻 第4号(2026年10月)
| 種類 | 原著論文 |
|---|---|
| タイトル | 非行少年におけるエピソード的未来思考の遅延価値割引への抑制効果 |
| 著者 | 片桐 弘明・今村 悟也・山岡 あゆち |
| 要約 | 遅延価値割引 (DD) は,遅延報酬の価値が遅延時間によって低下することであり,セルフコントロールの指標ともされ,非行・犯罪において,大きな役割を果たすとされている。遅延価値割引を低下させる方法として,エピソード的未来思考 (EFT) が有効であるとされている。本研究では,非行少年を対象に,EFTの遅延価値割引への抑制効果について検討することを目的とする。少年鑑別所に入所した62名の非行少年を,EFT実施群と統制群に分けた。EFTの際は,EFTのエピソードについて,鮮明度,感情喚起度を自己評定した。結果,EFT実施群のDDは,統制群より低かった。EFTは非行少年のDDを低下させるために有効であった。仮説では,EFTの鮮明度,感情喚起度は,DDの抑制効果を調整すると予測していたが,いずれも天井効果が生じたため,分析の対象外とした。また,年齢,知能,薬物使用経験の有無によるDDの抑制効果への影響についても検討したが,有意な関連は見られなかった。非行少年にEFTに取り組ませることは,少年の未来志向性を高め,セルフコントロールの改善に役立つことが示唆された。 |
| キーワード | 非行少年,若年犯罪者,エピソード的未来思考,遅延価値割引,意思決定 |
| 個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal97-4#25002 |
| 種類 | 原著論文 |
|---|---|
| タイトル | 異性カップルと同性カップルにおけるIPV被害 |
| 著者 | 上野 淳子 |
| 要約 | 親密なパートナーからの暴力(IPV)の対策は,男性による女性に対する暴力に偏る傾向がある。しかし,実態調査では男性や同性パートナーを持つ人も被害を受けていることが示されている。本研究では,男性や同性カップルも含めてジェンダーとIPV被害との関連を検討した。20─35歳の,異性パートナーまたは同性パートナーを持つ男女を対象としたインターネット調査を行った。その結果,同性パートナーを持つ男性が最も被害を受けていることが分かった。パートナーによる被支配感は,異性パートナーを持つ女性が最も低く,同性パートナーを持つ男性が最も高かった。パートナー以外からのソーシャル・サポートは,異性パートナーを持つ女性が最も高く,同性パートナーを持つ男性が最も低かった。特に同性パートナーを持つ男性に対するIPVは深刻であるにもかかわらず,見過ごされている問題である。したがって,男性被害や同性カップルのIPVに対処する,よりジェンダー・インクルーシブなIPV対策を推進する必要がある。 |
| キーワード | 親密なパートナーからの暴力,DV,デートDV,支配–被支配関係,性的マイノリティ |
| 個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal97-4#25006 |
| 種類 | 原著論文 |
|---|---|
| タイトル | 朝鮮半島にルーツをもつ青年における異文化適応ギャップの認識が心理的問題に与える影響 |
| 著者 | 佐々木 三紗・高橋 恵理子・前田 千晴・竹田 好香・森實 駿介・大月 友・桂川 泰 |
| 要約 | 朝鮮半島にルーツをもつ者は,社会・環境要因に起因する心理的苦痛が蓄積しやすい日本社会におけるマイノリティであることが報告されており,彼らの心理的苦痛の背景要因のひとつに,異文化適応ギャップに関する問題が示唆されている。本研究では,「異文化適応ギャップの認識の有無が朝鮮半島にルーツをもつ青年の心理的問題にどのような影響を与えるか」および「異文化適応ギャップと心理的問題に影響を与える変数はなにか」をリサーチクエスチョンとし,朝鮮半島にルーツをもつ青年21名に対する半構造化インタビュー調査を行った。分析手法は,グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた。結果,コアカテゴリーは,親に対する諦めの認識,カテゴリーは,異文化適応ギャップ,親との話し合い,専門家や日本以外にルーツをもつ友人への相談,精神状態の不調,精神状態の安定で構成された。異文化適応ギャップの認識の有無は,親に対する諦めの認識などの関連変数を通じて,精神状態に影響を及ぼしている可能性が示唆された。 |
| キーワード | 朝鮮半島にルーツをもつ者,異文化適応ギャップ,親子関係,移民,グラウンデッド・セオリー・アプローチ |
| 個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal97-4#25013 |
| 種類 | 原著論文 [方法・開発] |
|---|---|
| タイトル | 日本語短縮版パーソナリティ機能レベル尺度2.0 (J-LPFS-BF 2.0) の開発 |
| 著者 | 柴田 康順 |
| 要約 | 本研究の目的は,パーソナリティ症群の代替DSM-5モデルにおける基準Aとして位置づけられたパーソナリティ機能レベルを測定する尺度であるLevel of Personality Functioning Scale-Brief Form 2.0(J-LPFS-BF 2.0)の日本語版を作成し,その妥当性と信頼性を検証することである。著者はインターネット調査を実施し,成人291名分のデータを収集した。確認的因子分析の結果,J-LPFS-BF 2.0は「自己機能」と「対人機能」という2因子構造であり,性別の等質性が示され,十分な内的一貫性と再検査信頼性が確認された。相関分析の結果,J-LPFS-BF 2.0は,病的パーソナリティ,同一性の機能障害,対人問題との強い関連が示された。これらの結果から,J-LPFS-BF 2.0の妥当性と信頼性が確認された。J-LPFS-BF 2.0により,パーソナリティ機能レベルに応じて適切な臨床心理学的支援が可能になるとともに,パーソナリティ症に関する実証研究の成果を国際的に比較検討することも可能になる。 |
| キーワード | パーソナリティ症群の代替DSM-5モデル,自己機能,対人関係機能,パーソナリティアセスメント |
| 個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal97-4#25203 |
| 種類 | 原著論文 [方法・開発] |
|---|---|
| タイトル | Multidimensional Test Anxiety Scale日本語版の作成 |
| 著者 | 川﨑 紗和子・朝倉 智大・佐藤 寛・石川 信一 |
| 要約 | 本研究の目的は,Multidimensional Test Anxiety Scale (MTAS) 日本語版を作成し,その信頼性と妥当性を検討することであった。対象者は,高校1年生から3年生であり,MTAS日本語版,従来のテスト不安尺度,抑うつ症状,不安症状,学校適応感を測定する質問紙への回答を求めた。確証的因子分析の結果,MTASは心配,認知的干渉,緊張,生理的覚醒の4因子構造および高次因子構造において,許容可能な適合度を示した。性別間の測定不変性について,モデル間で適合度指標の大きな変化は見られず測定不変性が示された。信頼性では,内的一貫性で十分な値が示された一方で,再検査信頼性で総得点のみ十分な値が示された。妥当性では,基準関連妥当性の検証でMTASは従来のテスト不安尺度と高い正の相関が確認され,テスト得点と弱い負の相関にあることが確認された。また,構成概念妥当性の検証で,不安症状や抑うつ症状とは中程度の正の相関が確認され,学校適応感は中程度より弱い相関が確認された。これらの結果から,MTAS日本語版は日本における青年のテスト不安を測定するために有用な方法であることが示唆された。 |
| キーワード | 高校生,テスト不安,尺度開発,信頼性,妥当性 |
| 個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal97-4#25205 |
| 種類 | 原著論文 [方法・開発] |
|---|---|
| タイトル | カウンセラーへの援助要請における利益とリスクの予期尺度 (DES日本語版)の作成 |
| 著者 | 永井 智・水野 治久・木村 真人・本田 真大・飯田 敏晴 |
| 要約 | 本研究では,Disclosure Expectations Scale (DES) の日本語版として,カウンセラーへの援助要請における利益とリスクの予期尺度を作成することを目的とした。異文化適合性ガイドラインに基づく日本版の尺度を作成した上で,大学生と成人それぞれを対象にオンラインでの調査を行った。調査の結果,元尺度の因子構造が再現され,大学生と成人の間で測定不変性が確認された。妥当性検討においては,援助要請態度や援助要請意図,援助要請期待や援助要請不安との間に概ね想定通りの関連が示された。また,尺度の内的一貫性と再検査信頼性も確認された。以上から,本尺度は一定の信頼性と妥当性を有すると考えられた。 |
| キーワード | 援助要請/援助希求,利益の予期,リスクの予期 |
| 個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal97-4#25011 |
| 種類 | 原著論文 [方法・開発] |
|---|---|
| タイトル | 評価疲れの概念整理と測定尺度の作成 |
| 著者 | 市村 賢士郎・澤田 奈々実・坂口 菊恵・渋井 進 |
| 要約 | 人や組織を対象とした評価制度の負の側面として「評価疲れ」の問題が指摘されている。評価疲れは,個別の評価行為のみならず,それに付随する一連の評価活動全体から生じるものとして議論されている。しかし,その概念は明確に定義されておらず,定量的な測定方法も確立されていない。そこで本研究では,研究1において,評価疲れ尺度の項目を作成し,評価疲れの概念整理を行った。研究2では,評価疲れ尺度の確定および構成概念妥当性と回答の時間的安定性を検討した。その結果,評価疲れは「評価目的の不透明感」,「評価制度への不信感」,「評価作業の心理的負担感」,「評価作業の物理的負担感」という4つの因子からなる複合的な心理状態であることが明らかになった。また,評価疲れ尺度の得点は,職務動機づけ,職業性ストレス,仕事の意味づけ,および否定的評価に対する不安の得点との間に予測通りの関連がみられた。この尺度は,評価疲れに関する今後の実証研究に役立つものと期待される。 |
| キーワード | 評価疲れ,尺度開発,信頼性,妥当性 |
| 個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal97-4#25026 |





