刊行物のご案内
心理学研究 第97巻 第5号(2026年12月)
| 種類 | 原著論文 |
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| タイトル | 非行少年におけるエピソード的未来思考の遅延価値割引への抑制効果 |
| 著者 | 片桐 弘明・今村 悟也・山岡 あゆち |
| 要約 | 遅延価値割引 (DD) は,遅延報酬の価値が遅延時間によって低下することであり,セルフコントロールの指標ともされ,非行・犯罪において,大きな役割を果たすとされている。遅延価値割引を低下させる方法として,エピソード的未来思考 (EFT) が有効であるとされている。本研究では,非行少年を対象に,EFTの遅延価値割引への抑制効果について検討することを目的とする。少年鑑別所に入所した62名の非行少年を,EFT実施群と統制群に分けた。EFTの際は,EFTのエピソードについて,鮮明度,感情喚起度を自己評定した。結果,EFT実施群のDDは,統制群より低かった。EFTは非行少年のDDを低下させるために有効であった。仮説では,EFTの鮮明度,感情喚起度は,DDの抑制効果を調整すると予測していたが,いずれも天井効果が生じたため,分析の対象外とした。また,年齢,知能,薬物使用経験の有無によるDDの抑制効果への影響についても検討したが,有意な関連は見られなかった。非行少年にEFTに取り組ませることは,少年の未来志向性を高め,セルフコントロールの改善に役立つことが示唆された。 |
| キーワード | 非行少年,若年犯罪者,エピソード的未来思考,遅延価値割引,意思決定 |
| 個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal97-5#25002 |
| 種類 | 原著論文 |
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| タイトル | 自己効力感に対する目標構造の知覚と目標志向性の一致効果と非線形関係 |
| 著者 | 岡田 拓人・石井 僚 |
| 要約 | 本研究では,小学生が知覚する教室の目標構造と個人の目標志向性との相互作用が算数に対する自己効力感にどのように関連するかを検討するとともに,目標構造が自己効力感とどのような非線形関係を示すのかを明らかにすることを目的とした。日本の小学5・6年生373名を対象に,目標構造の知覚,目標志向性,自己効力感を測定する質問紙調査を実施した。応答曲面分析の結果,目標構造と目標志向性の一致効果は,自己効力感の有意な予測因子とはならなかった。一方で,熟達目標においては,熟達目標構造と熟達目標志向性のいずれもが高い場合に,自己効力感が高まる相加的効果が認められた。遂行目標においては,交互作用の傾向が示され,遂行接近目標志向性が高い児童は,遂行目標構造を強く知覚しているときに自己効力感も高くなる傾向を示した。さらに,重回帰分析の結果,熟達目標構造,遂行目標構造のいずれにおいても,自己効力感との間に逆U字型の非線形関係が存在することが明らかとなった。これらの結果は,目標構造の効果が一律ではなく,その強さや児童の動機づけ特性によって変化することを示しており,学習者の多様性に応じた柔軟な教室環境の設計の重要性を示唆している。 |
| キーワード | 目標構造,目標志向性,自己効力感,非線形関係,応答曲面分析 |
| 個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal97-5#25004 |
| 種類 | 原著論文 |
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| タイトル | 異性カップルと同性カップルにおけるIPV被害 |
| 著者 | 上野 淳子 |
| 要約 | 親密なパートナーからの暴力(IPV)の対策は,男性による女性に対する暴力に偏る傾向がある。しかし,実態調査では男性や同性パートナーを持つ人も被害を受けていることが示されている。本研究では,男性や同性カップルも含めてジェンダーとIPV被害との関連を検討した。20─35歳の,異性パートナーまたは同性パートナーを持つ男女を対象としたインターネット調査を行った。その結果,同性パートナーを持つ男性が最も被害を受けていることが分かった。パートナーによる被支配感は,異性パートナーを持つ女性が最も低く,同性パートナーを持つ男性が最も高かった。パートナー以外からのソーシャル・サポートは,異性パートナーを持つ女性が最も高く,同性パートナーを持つ男性が最も低かった。特に同性パートナーを持つ男性に対するIPVは深刻であるにもかかわらず,見過ごされている問題である。したがって,男性被害や同性カップルのIPVに対処する,よりジェンダー・インクルーシブなIPV対策を推進する必要がある。 |
| キーワード | 親密なパートナーからの暴力,DV,デートDV,支配–被支配関係,性的マイノリティ |
| 個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal97-5#25006 |
| 種類 | 原著論文 |
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| タイトル | 識別力母数を含むDeep-IRTモデルの等化頑健性 |
| 著者 | 川端 一光・堤 瑛美子 |
| 要約 | 本研究では,Deep-IRTモデル(Tsutsumi et al.,2021)のテスト等化における頑健性を継承しつつ,このモデルを識別力母数を含む形へと拡張した。提案手法では能力母数,識別力母数,困難度母数を互いに独立した3層のネットワークの出力として表現した。シミュレーション実験(研究1)の結果,能力分布が極端に非正規で,かつテストフォームの間に共通項目が無いといった状況でも,IRTによる推定結果と比較して提案手法は頑健に母数推定することが示された。またPISA 2009(OECD,2012)の大規模項目反応データに対して提案手法を適用し,従来のIRTによる推定結果との比較を行ったところ,研究1の結果が再現された(研究2)。 |
| キーワード | 項目反応理論(IRT),2母数ロジスティックモデル,テスト等化,深層学習,Deep-IRT |
| 個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal97-5#25008 |
| 種類 | 原著論文 [方法・開発] |
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| タイトル | カウンセラーへの援助要請における利益とリスクの予期尺度 (DES日本語版)の作成 |
| 著者 | 永井 智・水野 治久・木村 真人・本田 真大・飯田 敏晴 |
| 要約 | 本研究では,Disclosure Expectations Scale (DES) の日本語版として,カウンセラーへの援助要請における利益とリスクの予期尺度を作成することを目的とした。異文化適合性ガイドラインに基づく日本版の尺度を作成した上で,大学生と成人それぞれを対象にオンラインでの調査を行った。調査の結果,元尺度の因子構造が再現され,大学生と成人の間で測定不変性が確認された。妥当性検討においては,援助要請態度や援助要請意図,援助要請期待や援助要請不安との間に概ね想定通りの関連が示された。また,尺度の内的一貫性と再検査信頼性も確認された。以上から,本尺度は一定の信頼性と妥当性を有すると考えられた。 |
| キーワード | 援助要請/援助希求,利益の予期,リスクの予期 |
| 個別URL | https://psych.or.jp/publication/journal97-5#25011 |





