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心理学研究 第89巻 第6号(2019年2月)

ページ 551-561
種類 原著論文
タイトル 子どもを持たない中年期成人における世代性と主観的幸福感
著者 福島 朋子・沼山 博
要約 本研究は中年期にある,子どもを持たない成人における,世代性行動,世代性関心,主観的幸福感の関連を検討したものである。研究1では, 45歳から60歳までの子どもを持つ者,持たない者を対象にウェブ調査が行われた(N=558)。その結果、子どもを持たない者に比べ,子どもを持つ者は有意に高い世代性関心や世代性行動を示した。また、構造方程式モデリングにより,世代性行動はより高い水準の世代性関心を予測し,さらに世代性関心はより高い水準の主観的幸福感を予測することが示唆された。こういった関連性の違いは,子どもを持つ者と持たない者の間でも,男女間でもなかった。研究2では,研究1の子どもを持たない者を対象とした縦断調査が,24ヵ月をおいた2時点で実施された(N=187)。その結果,研究1の構造モデルから推測される,世代性行動,世代性関心,主観的幸福感との間の時系列的な関連性が短期縦断データによっても確認された。媒介分析を行ったところ,世代性関心の水準は過去2年間の世代性行動によって高められていることが示された。以上の結果は,ボランティア活動や市民活動のような世代性行動によって,子どもを持たない者も世代性を発達させることが可能であることを示唆するものである。
キーワード 子どもを持たない成人,世代性関心,世代性行動,主観的幸福感,中年期
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal89-6#17016
ページ 562-570
種類 原著論文
タイトル 視点取得はソーシャルスキルの変化を予測するか――親和動機の調整効果――
著者 藤原 和政・西村 多久磨・福住 紀明・河村 茂雄
要約 本研究では,ソーシャルスキルの変化に対する視点取得の効果を親和動機が調整するかどうかを検討した。対象は中学1年生から3年生の468名であり,約半年の期間をあけた縦断調査が実施された。階層的重回帰分析の結果,ソーシャルスキルの変化に対する視点取得の効果を親和動機が調整することが明らかにされた。単純傾斜検定の結果,視点取得は親和動機が高い場合に,ソーシャルスキルの変化を促進させることが示された。また,親和動機が低い場合には,視点取得が高くてもソーシャルスキルの促進につながらないことが示された。これらの結果から,視点取得は,親和動機が高い場合に,はじめてソーシャルスキルの向上に貢献することが示された。以上の結果をふまえ,考察ではソーシャルスキルを促す上での留意点が議論された。
キーワード ソーシャルスキル,親和動機,視点取得,縦断調査,中学生
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal89-6#17051
ページ 571-579
種類 原著論文
タイトル 漢字の形態情報が共感覚色の数に与える影響
著者 宇野 究人・浅野 倫子・横澤 一彦
要約 文字を見ると色が感じられる現象は,色字共感覚と呼ばれる。これまでに,文字のさまざまな特性が文字と色の対応付けに影響することが示されてきたが,文字の形態情報の影響の強さについては統一的な見解が得られていなかったため,本研究で検討した。日本語の漢字に対する共感覚色を最大2色まで回答させる実験を行った結果,偏と旁に分かれる漢字は分かれない漢字に比べて回答される色の数が多かった。また,色字共感覚者は共感覚色の主観的経験から,外界に色が投影される「投射型」と,頭の中に色のイメージが浮かぶ「連想型」に分類されるが,上記の回答の傾向は投射型の共感覚者ほど強いことが示された。以上の結果より,漢字の形態情報は対応付けられる共感覚色の数に影響しており,投射型傾向の強い共感覚者では漢字の構成要素ごとの情報が色字対応付けに影響している可能性が示唆された。
キーワード 色字共感覚,漢字,共感覚色,文字の形態情報
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal89-6#17054
ページ 580-590
種類 研究資料
タイトル 日本語版グリット尺度の作成および信頼性・妥当性の検討
著者 竹橋 洋毅・樋口 収・尾崎 由佳・渡辺 匠・豊沢 純子
要約 グリットとは長期目標への粘り強さと情熱からなる非認知的な特性である。本研究では,グリット尺度(Duckworth, Peterson, Matthews, & Kelly, 2007)を翻訳し,その信頼性と妥当性を検証とすることを目的とした。確証的因子分析の結果,日本語版グリット尺度はオリジナルの尺度に対応した2因子をもつことが示された(研究1,2,3)。本尺度は,高い信頼性をもつことも確認された(研究1,3)。グリットは,性格5大因子の1つである誠実性(研究2,3),自己統制(研究3)と正に相関した。さらに,グリットは誠実性,自己統制,知的能力よりも長期的な取り組みやその成否の指標との関連を示した(研究3)。これらの結果は先行研究の結果と一致し,本研究で作成を試みたグリット尺度の妥当性と信頼性を示す。
キーワード グリット,パーソナリティ,達成,パフォーマンス
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal89-6#17220
ページ 591-601
種類 研究資料
タイトル 中高年者に適用可能なワーク・ファミリー・バランス尺度の構成
著者 富田 真紀子・西田 裕紀子・丹下 智香子・大塚 礼・安藤 富士子・下方 浩史
要約 本研究の目的は,中高年者に適用可能なワーク・ファミリー・バランス尺度の構成を行うことである。分析対象者は「国立長寿医療研究センター・老化に関する長期縦断疫学研究」の第7次調査に参加した有職者1,351名(男性788名,女性563名,40―85歳,平均=54.82,標準偏差=9.86歳)である。仕事→家庭葛藤,家庭→仕事葛藤,仕事→家庭促進,家庭→仕事促進の4因子構造を仮定し,先行研究を基に項目を選択し,調査を行った。次に,収集したデータを用いて,確認的因子分析を実施した。その結果,16項目のワーク・ファミリー・バランス尺度は4因子構造であることが概ね支持された(GFI=.924, RMSEA=.073)。この構造について,世代(中年,高年)・性別による多母集団同時分析を実施したところ,配置不変性と測定不変性が成り立つ可能性が示唆された。尺度の信頼性はα=.69-.85で概ね満足すべき値であり,精神的健康との関連から基準関連妥当性が確認された。また,構成された4下位尺度に関して年代(40代,50代,60代,70代以上)と性差が部分的に示された。
キーワード ワーク・ライフ・バランス,ワーク・ファミリー・バランス,ワーク・ファミリー・コンフリクト,ワーク・ファミリー・ファシリテーション,中高年者
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal89-6#17223
ページ 602-610
種類 研究資料
タイトル 日本語版ネット荒らし尺度の作成
著者 増井 啓太・田村 紋女・エヴィータ,マーチ
要約 Global Assessment of Internet Trolling Revised(GAIT-R)は,インターネット上での荒らしを測定するために開発された。本研究はGAIT-Rの邦訳版(J-GAIT-R)を作成した。GAIT-R の8項目を日本語に翻訳し,535人の日本人を対象としたオンライン調査を実施した。研究1では,J-GAIT-Rが一因子構造を示すこと,十分な内的整合性と並存的妥当性を持つ尺度であることが確認された。研究2ではJ-GAIT-Rの高い再検査信頼性が示された。本研究によって,J-GAIT-Rが我が国のインターネット上での荒らしを測定するための尺度として適切であることが示唆された。
キーワード ネット荒らし,サディズム傾向,ダークトライアッド,攻撃性,情動的共感
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal89-6#17229
ページ 611-617
種類 研究報告
タイトル 育児期父親の幸福感・育児関与と生活スタイル・妻からの役割期待との関連
著者 澤田 忠幸
要約 本研究では,乳幼児のいる父親の生活スタイルおよび妻からの役割期待と主観的幸福感(人生の満足度),育児関与との関係について検討を行った。父親233名を,「仕事」「家庭」「自分個人のための活動」の3領域に対するエネルギー配分に基づく生活スタイルの4類型,および妻からの仕事と育児への各役割期待に対する認識の高低に基づく4群に分類し,主観的幸福感と子育ての分担・協同育児に及ぼす影響について検討を行った。その結果,生活スタイルの型により,男性の主観的幸福感および協同育児の各側面に違いは認められなかった。一方,妻からの仕事や育児に対する役割期待の在り方によって,父親の主観的幸福感や協同育児への関与の在り方に違いが認められた。
キーワード 人生の満足度,協同育児,父親の生活スタイル,妻からの役割期待
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal89-6#16330
ページ 618-624
種類 研究報告
タイトル 音読時の構音運動と音声情報が文章理解に果たす役割
著者 寺尾 尚大・髙橋 麻衣子・清河 幸子
要約 本研究は,音読時に生じる構音運動と音声情報が日本語文章の理解において果たす役割について検討することを目的とする。単文理解における構音運動と音声情報の役割について検討した先行研究では,構音運動の実行が課題文中の語順情報の保持を促し,音声情報のフィードバックが局所的な情報の短期的な保持を促すことが示されている。これを踏まえて本研究では,文章の読解において,構音運動の実行は逐語的な記憶を促進するものの,音声情報のフィードバックが記憶や理解を促進する効果は小さいと予測した。大学生24名に対し,課題文章を読み,文章中の逐語的な情報の保持を測定する逐語記憶問題と,文章内容の理解を測定する内容理解問題への回答を求めた。その結果,構音運動の実行によって逐語記憶問題の成績が向上した一方で,内容理解問題の成績には差が見られなかった。また,音声情報のフィードバックはどちらの課題成績においてもほとんど影響を及ぼさなかった。本研究の結果から文章を音読する際の構音運動の実行は逐語的な情報の保持を促す一方で,音声情報のフィードバックの文章読解における貢献はほとんどないことが示唆された。
キーワード 音読,構音運動,音声情報,文章理解
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal89-6#17312
ページ 625-631
種類 研究報告
タイトル 大学教員の属性による学生の問題への関わり方の違いの分析
著者 住岡 恭子・井上 果子・福榮 太郎・小野 康男
要約 本研究では大学教員を対象に,学生との関わりにおける工夫を尋ねる自由記述調査を実施し,大学教員個人の属性と学生への関わりとの関連を数量化Ⅲ類による分析を用いて検討した。607名に調査し,207名の回答を得た。回答率は34.1%であった。そのうち自由記述欄に回答があった78名(全体の12.8%)を分析の対象とした。8項目のカテゴリによるコーディングと,数量化Ⅲ類による分析を行った。その結果,「接近―マネジメント」「厳格な態度―保護的な態度」の2軸による散布図が作成された。クラスタ分析によって「厳格な関わり」「積極的なコミット」「環境調整」の3つのクラスタが得られた。属性ごとにサンプルスコアの平均の差を検討した結果,性別による「厳格な態度―保護的な態度」軸の保護的な態度にのみ統計的に有意な差が得られた。職位や勤続年数といったその他の属性は教員の学生への関わりには違いをもたらしていなかった。
キーワード 学生への問題の関わり,大学教員,数量化Ⅲ類
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal89-6#17318
ページ 632-637
種類 研究報告
タイトル 中・高齢期の親子・夫婦における制御焦点の類似性
著者 田渕 恵・三浦 麻子
要約 本研究では,制御焦点(Higgins, 1997, 1998)の2側面(促進・予防)が,中年期の子とその親,子の配偶者間で類似しているかどうかを検討した。中・高齢期を対象とした予備調査によりPPFS 邦訳版(尾崎・唐沢, 2011) の短縮版(10項目)を作成し,妥当性および信頼性を確認した。調査対象者は,78組の,中年期の子(49.04 ± 4.06歳)とその親(75.89 ± 2.74歳),子の配偶者(49.38 ± 4.44歳)の3者であった。分析の結果,予防焦点は親子間で,促進焦点は夫婦間で類似していることが示された。中・高齢期の3者間の類似性が制御焦点の2側面で異なるという本研究の知見の背景について議論した。
キーワード 制御焦点,促進/予防焦点,中・高齢期,親子,夫婦
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal89-6#17331
ページ 638-644
種類 研究報告
タイトル 聞き手の態度が欺瞞性認知に及ぼす影響
著者 品田 瑞穂
要約 本研究は聞き手の態度がどのように話し手に対する欺瞞性認知に影響するのかを検討した。44人の大学生(男性20名,女性24名)がインタビューを受け,自分の経験について本当のことを話すか,嘘をついた。彼らはランダムに会話条件もしくは詰問条件に割り当てられた。会話条件の聞き手は,話し手に頷いたりアイコンタクトをとったりしたが,詰問条件の聞き手は話し手から目をそらし,話し手の話していることを疑った。中立的な観察者が録画されたインタビューを見て,話し手に対する欺瞞性認知を測定した。結果から,聞き手による詰問が話し手の非言語行動(瞬目)を増加させ,瞬目の増加は欺瞞性認知を増幅することが示された。
キーワード 欺瞞性認知,非言語的手がかり,瞬目
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal89-6#17339