公益社団法人 日本心理学会

詳細検索

心理学ワールド 絞込み


号 ~

執筆・投稿の手びき 絞込み

MENU

刊行物

刊行物のご案内

心理学研究 第90巻 第4号(2019年10月)

ページ 351-359
種類 原著論文
タイトル 中学生の潜在的ハイリスク群に対する自殺予防プログラムの効果
著者 原田 知佳・畑中 美穂・川野 健治・勝又 陽太郎・川島 大輔・荘島 幸子・白神 敬介・川本 静香
要約 BISが高く,かつ BAS-Drive が低い個人は希死念慮を抱きやすいことが報告されている(Rasmussen, Elliott, & O’Connor, 2012)。本研究では,中学生を対象に,BIS/BAS で規定される潜在的心理・社会的不適応のリスクが高い生徒にも自殺予防プログラムの効果が確認されるか否かを検討した。潜在的ハイリスク生徒28人,ローリスク生徒167名を対象にプログラムが実施され,プログラム前後に質問紙調査に回答を求めた。分析の結果,自殺予防プログラムはローリスク生徒だけでなく,潜在的ハイリスク生徒にも援助を求める力が身につく可能性が示唆された。
キーワード 自殺予防,行動抑制/接近システム,ハイリスク
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal90-4#18004
ページ 360-367
種類 原著論文
タイトル 誇大型-過敏型自己愛が累積屈辱感を媒介してゆるしに及ぼす影響
著者 沼田 真美
要約 本研究の目的は,自尊感情の影響を統制した誇大型-過敏型自己愛が累積屈辱感を媒介してゆるしに及ぼす影響について検討することであった。本研究では,388名の大学生を調査協力者とし,構造方程式モデリングを用いて検討を行った。その結果,誇大性および評価過敏性は,いずれも報復に直接的な正の影響を及ぼしていた。また,評価過敏性は,累積屈辱感を媒介し,報復と回避に正の影響,慈愛に負の影響を及ぼしていた。これらの結果から,誇大型-過敏型自己愛は,自己評価を回復するために報復を促進する可能性や,過敏型自己愛がゆるしへより大きな負の影響力を持つ可能性が考えられた。
キーワード 誇大型-過敏型自己愛,ゆるし(forgiveness),累積屈辱感
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal90-4#18026
ページ 368-377
種類 原著論文
タイトル 挿絵が物語文の読解における状況モデルの構築に及ぼす影響
著者 和田 裕一
要約 われわれが物語文を読む際,読み手は登場人物の同一性,空間性,時間性,因果性,意図性の5つの状況的次元に沿って,場面の移り変わりや事象の変化を体制化していると考えられている。本研究では,物語文の挿絵の有無によって状況モデルの構築に寄与する状況的次元にいかなる差異がみられるかについて,動詞分類課題を用いて検討することを目的とした。その結果,挿絵の有無によらず,同一性と時間性次元が状況モデルの構築に寄与することが示された。加えて,挿絵が付加される場合には因果性次元の寄与も認められた。続く実験では,挿絵を文章全体のどの位置に挿入するかで状況モデル構築の有り様が影響を受けることが示された。以上の結果を踏まえ,文章理解と状況モデル構築を促進する挿絵の効用について議論した。
キーワード 文章理解,挿絵,状況モデル,event-indexing 理論
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal90-4#18030
ページ 378-388
種類 原著論文
タイトル 平日と休日の起床時刻の乖離と眠気,心身健康,学業成績の低下との関連
著者 田村 典久・田中 秀樹・駒田 陽子・成澤 元・井上 雄一
要約 本研究では,平日と休日で起床時刻の乖離が2時間以上ある中学生の睡眠習慣を明らかにし,この起床時刻の乖離と日中の眠気,心身健康,および学業成績の関連を検討した。本調査では公立中学校13校に在籍する生徒4,392名を対象として,人口統計学的情報,睡眠習慣,日中の眠気,イライラおよび主要5教科の成績を含む自記式質問票に回答を求めた。本研究では,平日と休日の起床時刻の差分を算出し,その差分が2時間以上の者を「乖離群」,2時間未満の者を「非乖離群」とした。その結果,平日と休日の起床時刻の乖離が2時間以上ある生徒の割合は全体の38.4%であった。乖離群では,朝食を欠食する者やクラブ・部活動に参加していない者の割合が非乖離群に比して高かった。さらに,乖離群では平日は就床時刻が22分遅く,睡眠時間が21分短かった。一般化線形混合モデルの結果,起床時刻の乖離は,日中の眠気,イライラおよび学業成績の低さと関連した。本研究結果より,概日リズムの位相後退を伴う2時間以上に及ぶ起床時刻の乖離は,中学生の心身健康や学業成績の低下と関連することが明らかとなった。
キーワード 学業成績,中学生,日中の眠気,平日と休日の起床時刻の乖離,イライラ
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal90-4#18045
ページ 389-397
種類 研究資料
タイトル Southampton Nostalgia Scale日本語版の作成
著者 長峯 聖人・外山 美樹
要約 Nostalgiaは, "a sentimental longing for one’s past" として定義されており,様々な適応性に寄与する感情である。本研究では,日常的にnostalgiaを感じやすい程度を測定する Southampton Nostalgia Scale (SNS) の日本語版を作成することを目的とし,3つの研究を行った。研究1では,SNS日本語版の因子構造が原版と同様であること,およびSNS日本語版がおおむね良好な再検査信頼性を有することが示された。研究2では,年代にかかわらずSNS日本語版の因子構造が一定であることが示された。最後に研究3では,外的な変数との相関に関して,SNS日本語版が原版と同様のパターンを示すことが明らかになった。これらの結果から,SNS日本語版が一定の信頼性と妥当性を有することが示された。
キーワード ノスタルジア,特性ノスタルジア,SNS日本語版
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal90-4#18206
ページ 398-407
種類 研究資料
タイトル 短縮版音楽による気分調整尺度(B-MMR)の日本語版の作成および信頼性・妥当性の検証
著者 正田 悠・安田 晶子・中原 純・田部井 賢一・伊坂 忠夫
要約 日本人大学生は音楽をよく聴き,その主たる理由は現在の気分を調整することにあると考えられる。本研究では,短縮版音楽による気分調整尺度(B-MMR)の日本語版を作成し,その信頼性と妥当性を検証した。大学生307 人の回答に基づき,日本語版B-MMRが英語版原尺度と比較可能なかたちで構築された。さらに,日本語版B-MMRのいくつかの側面が,一般的な感情調節やストレス・コーピング方略と正の相関関係にあることが示された。日本語版B-MMRは,音楽聴取が人間の生活の質(QOL)やWell-beingに及ぼす影響を調べる将来の研究において適用可能なものである。
キーワード 気分調整, 音楽聴取,感情調節,ストレス・コーピング
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal90-4#18207
ページ 408-418
種類 研究資料
タイトル 小学1年生から中学3年生を対象とした学力テストの垂直尺度化
著者 山口 一大・敷島 千鶴・星野 崇宏・繁桝 算男・赤林 英夫
要約 本研究の目的は,小学1年生から中学3年生を対象とした日本子どもパネル調査(JCPS)の数学と国語の学年別学力テストの垂直尺度化である。項目反応理論によるアンカーテスト計画に基づき,JCPS学力テストに解答した小中学生(n = 3,916),及びアンカーテストに解答した小中学生(n = 7,210)の個票データを分析した。2パラメタロジスティックモデルに当てはめた後,Haebara法によって等化係数を算出した。9学年のテストの尺度化は小学5年生のテストに施す形で行われた。最終的な分析に含まれたのは,数学が94項目,国語が108項目である。推定された個人の数学と国語の潜在学力の平均値は,学年が上がるにつれて上昇していた。これより,JCPS学力テストは小学生から中学生までの学力の発達変化を捉えているといえる。JCPSデータセットを用いることにより,子どもの学力発達と,心理特性や家庭環境など様々な要因との関連を明らかにしていくことが期待できる。
キーワード 垂直尺度化,日本子どもパネル調査,項目反応理論
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal90-4#18221
ページ 419-425
種類 研究報告
タイトル 大学進学時の進路選択における親の関与と進学後の自立および適応との関連
著者 奥村 弥生・森田 愛望・青木 多寿子
要約 本研究の目的は,進路選択における親の関与と自己決定のあり方が,大学入学後の自立や適応にどう関連するかを明らかにすることである。大学生に質問紙調査を実施し,180名からデータを得た。分析の結果,進路選択における親の関与は親への依存と服従を高めること,自己決定が服従を抑制することが示された。また,親の関与は,子どもの精神的自立の一要素である判断責任性を低め,反対に自己決定は判断責任性を高めていた。さらに,進路選択における親子のあり方は,その後の大学生活満足度にも関連していた。この関連には2つあり,1つは,自己決定が満足度を高めていた。2つ目は,自己決定の高低により,親の関与のもつ意味が異なり,自己決定が高い場合は,親の関与による満足度の違いはないが,自己決定が低い場合には,親が関与した方が満足度が高かった。以上の結果より,進路選択においては,親が過剰に関与せず,子ども自身が自己決定できるようにすることが基本的には望ましいと考えられるが,それが難しい場合には,親の支配や子どもの依存が過度にならない程度に親も関与してサポートしていくことが,大学生活の満足度を高めることが示唆された。
キーワード 進路選択,親子関係,自立,大学適応,自己決定
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal90-4#17343
ページ 426-432
種類 研究報告
タイトル 隠匿情報検査時の生理変化の系列内変動
著者 小川 時洋・松田 いづみ・常岡 充子
要約 隠匿情報検査(CIT)における系列内の生理的変動を検討した研究は,ほとんどない。本研究は,記憶あり・なし条件を含んだCIT実験における刺激前および刺激後の生理変動を分析した。分析した測度は,刺激前および刺激後の皮膚伝導度水準(SCL),規準化脈波容積(NPV),心拍数(HR)であった。さらに,刺激後の皮膚伝導度反応(SCR)も分析した。これらの中で,記憶あり群の刺激前および刺激後のSCL,SCR,刺激後NPVは,関連項目と非関連項目の間のみならず,関連項目の前に提示される非関連項目と,後に提示される非関連項目の間にも差異が見られた。記憶あり,なし両条件とも,生理的活動性および反応性は,系列の最初の方で高い傾向が見られた。しかし記憶あり群の場合,この傾向は関連項目の系列内位置による影響を受け,生理的活動性は関連項目提示までは維持されるが,その後に減少した。
キーワード 隠匿情報検査,生理反応,系列内変動
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal90-4#18315