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心理学研究 第91巻 第6号(2021年2月)

ページ 357-366
種類 原著論文
タイトル 妊娠初期,中期,末期における妊娠に伴う不快症状の苦痛度と睡眠との関連
著者 植松 紗代・眞鍋 えみ子・和泉 美枝・渡辺 綾子・田中 秀樹
要約 本研究は,妊娠初期,中期,末期における妊娠に伴う不快症状の苦痛度の違いと睡眠との関連を検討した。調査は,妊娠に伴う不快症状尺度とPittsburgh Sleep Quality Index(PSQI)を用いて,妊婦344名(初期98名,中期105名,末期141名)を対象に行った。その結果,胃の不快感,肩こり,手足の冷えは,妊娠末期と比べ妊娠初期に苦痛度が高いことがわかった。妊娠期の不快症状の苦痛度と睡眠との関連は,易疲労は,妊娠初期・末期ともに睡眠の質,日中覚醒困難と関連していた。倦怠感は,妊娠初期は睡眠の質,中期は日中覚醒困難,末期は睡眠の質,日中覚醒困難と関連がみられた。また,胃の不快感は,妊娠初期のみ睡眠困難と,イライラ感は,妊娠中期に睡眠の質と関連がみられた。これらの結果は,妊娠中に睡眠障害を理解することが妊娠期特有の不快症状の苦痛度を予測するのに有効なことを示唆する。
キーワード 妊娠,妊娠に伴う不快症状,睡眠
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal91-6#18033
ページ 367-377
種類 原著論文
タイトル Yes/No型と多肢選択型語彙テストの差異――読書指標との関連から――
著者 猪原 敬介・松尾 千佳・古屋 美樹・沓澤 糸
要約 Yes/No型語彙テストには,一般的な多肢選択型語彙テストと比較して,いくつか方法論上の利点がある。本研究では,これら2つの語彙テストの性質を明らかにするため,高校生から60歳代の成人までを含む2つの調査を行った。主要な語彙学習要因である読書との関連を検討した結果,「読書への親近性は直接的にはYes/No型の既知率を予測し,既知率が多肢選択型の正答率を予測する」という媒介関係を見出した。ここから,Yes/No型は読書による初期の語彙学習効果である「単語の大まかな意味理解」を反映しており,読書活動の効果を敏感に検出できること,Yes/No型と比較して,多肢選択型は大まかな意味理解の先にある「単語の精緻な意味理解」を反映していることが示唆された。
キーワード Yes/No型語彙テスト,多肢選択型語彙テスト,読書活動
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal91-6#19028
ページ 378-387
種類 原著論文
タイトル 除去土壌再生利用の社会的受容に負担の不衡平緩和が及ぼす効果
著者 横山 実紀・大沼 進・近藤 由基
要約 本研究は,福島原子力発電所の事故によって生じた除去土壌の再生利用計画を題材とし,その社会的受容に及ぼす要因を検討した。この問題はNIMBY問題の典型である。NIMBY問題は負担の偏りが合意形成を阻害する。本研究では,負担を一箇所ではなく複数箇所に分散することが受容を高めると仮定し,日本全国の成人を対象に負担の配分を操作した仮想シナリオ実験を行った。その結果,複数箇所で分散して行うことは一箇所で行うことよりも不衡平感が低く,リスク認知やスティグマが低く,手続き的に公正で受け入れられると評価された。
キーワード NIMBY,不衡平,社会的受容,合意形成
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal91-6#19048
ページ 388-397
種類 研究資料
タイトル 小中学生の子どもを持つ親の暗黙理論と子育てストレスの関係
著者 竹橋 洋毅・高 史明・尾崎 由佳
要約 本研究では,知能と子育て能力についての暗黙理論が精神的健康に及ぼす影響について検討した。小学生あるいは中学生の子どもと同居している824人の養育者に対してインターネット調査を行い,子育てによるストレッサーの多さ,子育てによる心的苦痛の経験,主観的健康に加えて,知能や子育て能力の可変性に関する信念(暗黙理論)について回答を求めた。その結果,子育て能力が変化しがたいものであるという固定理論をもつ人々では,主観的健康が良好でなく,ストレッサーが多いほど子育ての心的苦痛が大きかった。また,知能についての固定理論をもつ人ほど,子育ての心的苦痛が大きく,主観的健康も良好ではなかった。これらの結果は,子育て能力や知能についての増大理論が子育てのストレッサーによる悪影響を緩和し,主観的健康に関するリスクを低下させる可能性を示唆する。
キーワード 暗黙理論,子育て,ストレス,心的苦痛,主観的健康
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal91-6#17238
ページ 398-408
種類 研究資料
タイトル 日本語版右翼権威主義尺度の作成
著者 高野 了太・高 史明・野村 理朗
要約 右翼権威主義 (right-wing authoritarianism: RWA) 尺度は,偏見・差別,集団間対立と関連する尺度である。本研究は日本語版RWAを開発し,その妥当性を検討した。RWAは権威主義的傾向を測定する確立された尺度であるが,日本語での標準化は行われていない。本研究では,バックトランスレーション法を用いてRWA項目を日本語に翻訳し,その信頼性と構成概念妥当性を検証した。その結果,日本語版RWAは原版と同様に方法論的因子を含む2因子構造であることが明らかとなり,十分な信頼性と妥当性が確認された。本研究は,日本における権威主義パーソナリティの構造に関する新たな視点を提供する。
キーワード 右翼権威主義,パーソナリティ,因習主義,偏見
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal91-6#19225
ページ 409-415
種類 研究報告
タイトル 制御焦点は基本的心理欲求とウェルビーイングの関連を調整するか
著者 三和 秀平・外山 美樹・肖 雨知・長峯 聖人・湯 立・海沼 亮・相川 充
要約 本研究では,友人からの基本的心理欲求への支援が欲求充足を介してウェルビーイングと関わるプロセスを制御焦点が調整するのかを検討した。制御焦点理論に基づき,促進焦点が強いほど自律性支援を受けたときに,防止焦点が強いほど関係性支援を受けたときに,それぞれ欲求が充足されウェルビーイングが高まるという仮説のもと検証した。大学生223名を対象に質問紙調査を実施した結果,関係性支援と関係性欲求充足の関連において防止焦点の調整の効果が確認され,関係性支援を受けた際に防止焦点が強いほど関係性の欲求が充足されることが示された。本研究では友人関係に着目したため,安心や平穏にかかわる支援の面が強調され,防止焦点の特徴に適合したことが考えられる。また,媒介の効果もみられ,関係性支援を行うことで関係性の欲求が充足され,ウェルビーイングが高まっていた。防止焦点に関わる仮説は支持された一方で,促進焦点に関わる仮説は支持されなかった。
キーワード 制御焦点理論,基本的心理欲求,欲求支援,欲求充足,ウェルビーイング
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal91-6#19327
ページ 416-421
種類 研究報告
タイトル ワーク・ファミリー・エンリッチメントの媒介機能の検討――生涯発達的観点から――
著者 原 健之
要約 本研究の目的は,生涯発達的観点から仕事から家庭へのエンリッチメントと家庭から仕事へのエンリッチメントの媒介モデルを検証することであった。具体的には,仕事サポートが仕事から家庭へのエンリッチメントを媒介して間接的に家族パフォーマンスに及ぼす影響と,家族サポートが家庭から仕事へのエンリッチメントを媒介して間接的に職務パフォーマンスに及ぼす影響の検証を行い,その後仕事から家庭へのエンリッチメントと家庭から仕事へのエンリッチメントの媒介効果を検討した。調査対象者はウェブ調査会社のモニターに登録している子どもを持つ共働き世帯の30歳から59歳であり,分析対象者となったのは30代211名(男性122名と女性89名),40代212名(男性130名と女性82名),50代193名(男性129名と女性64名)であった。30代,40代,50代を対象に得られた分析結果は以下の通りである。最初に,30代から50代において,仕事から家庭へのエンリッチメントと家庭から仕事へのエンリッチメントの媒介モデルが支持された。次に,すべての年代で仕事から家庭へのエンリッチメントと家庭から仕事へのエンリッチメントの媒介効果が確認された。
キーワード ソーシャルサポート,ワーク・ファミリー・エンリッチメント,役割パフォーマンス,媒介機能,生涯発達
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal91-6#20307