公益社団法人 日本心理学会

詳細検索

心理学ワールド 絞込み


号 ~

執筆・投稿の手びき 絞込み

MENU

刊行物

  1. HOME
  2. 刊行物のご案内
  3. 心理学研究
  4. 書誌情報
  5. 心理学研究 第93巻 第6号(2023年2月)

刊行物のご案内

心理学研究 第93巻 第6号(2023年2月)

種類 原著論文
タイトル 転職時のリアリティショックと離転職意思——自己概念明確性の効果に着目して——
著者 片山 まゆみ・藤 桂
要約 近年,転職者数が増加している一方で,転職後に再度転職を希望する者の数も増えている。本研究では,リアリティショック(RS)に関する先行研究に基づき,転職時のRSが,ワーク・エンゲージメント(WE)の低減や離転職意思の増大につながると想定した。さらに本研究では,ストレスフルイベント時に生じるネガティブな影響を低減および調整すると示唆されてきた,自己概念の明確性(SCC)にも着目した。412名の転職経験者を対象に,webでの調査を実施し,RS,WE,離転職意思,および極端性・確信性・安定性の3側面からSCCについて回答を求めた。分析の結果,転職時におけるRSはWEを低減し,離転職意思を高めることが示された。加えてSCCの影響に着目すると,極端性と確信性はWEを高めるが,安定性はWEを低減させ,確信性と安定性は離転職意思を低めることが示された。さらに調整媒介分析の結果,安定性が高い場合にはRSによるネガティブな媒介効果を緩衝していたものの,確信性が高い場合においては,RSによる悪影響を強め,WEの低下を媒介して,離転職意思が高まることも示された。
キーワード リアリティショック,自己概念の明確性,離転職意思
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal93-6#20062
種類 原著論文
タイトル 大学生におけるアイオワギャンブル課題の得点の推移の異質性
著者 荻原 彩佳・遊間 義一・金澤 雄一郎・河原 哲雄・東條 真希・石田 祥子
要約 アイオワギャンブル課題(IGT)は,前頭葉の意思決定機能を評価するために広く用いられている神経心理学的検査である。先行研究では,健常/健康群の5つのブロックにおけるNet Score(有利なデッキの選択数 - 不利なデッキの選択数)の推移についてさまざまな結果が示されている。いくつかの研究は,健常/健康群のNet Scoreは第1ブロックから第5ブロックまで増加すると報告している。しかし,試行が進むにつれて必ずしも増加しないとする研究もある。本研究では,日本の大学生89名のNet Scoreを,成長混合モデルと潜在クラス成長分析を用いて検討した。その結果,大学生群は,Net Scoreが上昇した2群(初期上昇群(17%)及び後期上昇群(4%))とNet Scoreが上昇しない2群(中位水平群(64%)及び低位水平群(15%))に分類された。これらの結果を,安定的で長期的に有利な選択ができるようになるまでの各群の試行回数の違いという視点から議論した。
キーワード 大学生,アイオワギャンブル課題,成長混合モデル,潜在クラス成長分析
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal93-6#21043
種類 原著論文
タイトル 公的機関の犯罪予防のための情報発信の実験的研究――防護動機理論に基づく実装と効果検証――
著者 白川 真裕・島田 貴仁・樋口 匡貴
要約 研究では,防護動機理論および,リスク認知,反応効果性認知,自己効力の呈示が行動意図・行動に与える影響を議論した先行研究をもとに,警視庁犯罪抑止対策本部の公式Twitterアカウントによる情報発信において,犯罪予防行動に対して効果をもたらす情報を検討することを目的として実験を行った。特殊詐欺被害の脅威や,予防行動の効果性,自己効力の情報をあわせてTwitterで呈示し,予防行動意図や実際の行動,恐怖,効果性,自己効力の変化を6時点にわたり確認した。20代から50代の参加者を,特殊詐欺に関するツイートを呈示する警視庁群と,他のツイートを呈示する統制群にランダムに割り当て,警視庁群60名および統制群49名を対象に分析を行った結果,情報の呈示によって,犯罪予防行動意図が高まることが示されたが,実際の行動にはつながりづらいことが確認された。そのため,行動意図や行動を高める他の要因が存在する可能性も示唆された。
キーワード Twitter,情報発信,犯罪予防,防護動機理論,行動意図
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal93-6#21044
種類 研究資料
タイトル 一対比較型とリッカート型の心理測定の比較――信頼性・妥当性・回答のしやすさの観点から――
著者 野々田 聖一・岡田 謙介
要約 質問紙による心理測定ではリッカート型の項目が用いられることが多いが,反応スタイルや社会的望ましさによるバイアスが生じることが指摘されている。こうした反応バイアスの影響を軽減できる回答形式として比較型回答が注目されている。そこで本研究では比較型の中で基本となる一対比較型の回答形式をとりあげ,その心理測定の性質を信頼性・妥当性・回答のしやすさの観点から,リッカート型と比較した。2つの心理尺度について実データ分析に基づく検討を行った結果,リッカート型は信頼性・回答のしやすさの観点で優れており,一対比較型は因子的妥当性の観点で優れていた。逆転項目数の少ない尺度では一対比較型測定が適切に機能しないため,尺度開発において留意が求められる。
キーワード 一対比較型,リッカート型,信頼性,妥当性,回答のしやすさ
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal93-6#20231
種類 研究資料
タイトル 混合感情経験の個人差――TMES日本語版を作成して――
著者 長峯 聖人・菅原 大地
要約 混合感情はポジティブ感情とネガティブ感情の共起と定義され,近年では混合感情経験の個人差についてしばしば研究が行われている。本研究では,日常において混合感情を経験しやすい傾向を測定する Trait Mixed Emotions Scale(TMES)の日本語版を作成することを目的とし,2つの研究を行った。研究1では,TMES日本語版が高い内的一貫性を有すること,また先行研究からの示唆や理論的な想定と合致する形でTMES日本語版と外的変数との関連がみられることが示された。さらに,TMES日本語版が3つの下位尺度から解釈可能であることが示唆された。研究2では,TMESが良好な時間的安定性を有すること,および研究1と同様の因子構造が再現されることが明らかになった。最後に,今後の混合感情研究における課題と展望について議論された。
キーワード 混合感情,混合感情経験,特性,TMES日本語版
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal93-6#21231
種類 研究報告
タイトル 家族・友人とのサポートのやりとりの維持・促進に向けた心理教育開発の試み
著者 亀山 晶子・及川 恵・坂本 真士
要約 本研究では,家族・友人とのサポートのやりとりの維持・促進に向けた心理教育として,先行研究をもとに4回のセッションの心理教育を作成し,女子大学の心理学の授業内で実施した。そして,心理教育の実践に伴い,授業前(pre),授業直後(post),授業後1ヵ月後(follow-up)の3回にわたってサポートのやりとりに関連する各指標(サポートのやりとりに向けた自己効力感,家族・友人からのサポート,家族・友人へのサポート提供,社会的スキル)を測定した。4回の心理教育を心理学系の科目内で受講した33名を介入群,同大学同専攻でこの授業を履修しなかった35名を対照群とし,各群の3時点の各測定指標の変化を潜在曲線モデルによって検討した。その結果,対照群に比べ介入群のいくつかの指標ではセッション前よりも向上が見られる可能性が示唆された。友人からのサポートに関してはセッション直後に一時的に向上するに留まる傾向も示唆された。以上を踏まえ,今後はさらにデータを追加し効果の検討を重ねていくことが望まれる。
キーワード 家族・友人からのソーシャル・サポート,心理教育,ソーシャル・サポート介入
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal93-6#21315
種類 研究報告
タイトル 成人期における関係性攻撃――特性共感と認知のゆがみの役割に関する検討――
著者 品田 瑞穂
要約 本研究の目的は,20―49歳の成人393名(女性183名,男性208名,M = 35.22歳,SD = 8.35歳)を対象に,関係性攻撃に対する特性共感と認知のゆがみの独自の影響力について明らかにすることである。本研究では共感的関心と視点取得が,自己中心性,責任の外在化,被害的認知の3つを通して関係性攻撃にどのように影響するかを検討した。理論モデルから予測される通り,関係性攻撃は,2種類の利己的な認知のゆがみ(自己中心性と被害的認知)と正の相関があった。また,自己中心性は共感と関係性攻撃の関係を媒介していた。これらの結果は,関係性攻撃に対する個人特性と認知プロセスの相互作用を示唆するものであった。
キーワード 共感的関心,視点取得,認知のゆがみ,成人期,被害的認知
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal93-6#21317
種類 研究報告
タイトル 中学生における受容・拒絶経験と親和動機との関連
著者 藤原 和政・川俣 理恵
要約 本研究では,中学生における受容・拒絶経験と親和動機との関連について,1年間の期間を設けた縦断調査を用いて検討することが目的であった。中学生399名(男子193名,女子206名)が対象であった。性別を考慮した多母集団同時分析による交差遅延モデルを用いた検討を行った。分析の結果,男女共に Time 2 の親和傾向に対して Time 1 の承認感から正のパス,被侵害感から負のパスが認められた。また,性別ごとに特徴的な結果が示唆され,Time 2 の拒否不安に対して,男子では有意なパスは認められなかった一方で,女子では Time 1 の承認感から負のパス,被侵害感からは正のパスが,それぞれ認められた。性別による違いはあるものの,男女ともに他者からの受容や承認といった経験が,その後の親和動機と関連する可能性があることが示唆された。これらの結果から,中学生における良好な友人関係の形成を目的とした教育実践を行う際の留意点について議論された。
キーワード 受容・拒絶経験,親和動機,交差遅延モデル,中学生,縦断研究
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal93-6#21327
種類 研究報告
タイトル 共同志向性と本人の主観的幸福感との関連――パートナーの応答性知覚の調整効果――
著者 宮崎 弦太
要約 本研究では,共同志向性と本人の主観的幸福感との関連を恋人関係におけるパートナーの応答性知覚が調整するかどうかを検討した。恋人のいる日本人成人516名を対象にオンライン調査を行った。参加者はまず共同志向性尺度に回答した。次に,恋人の応答性知覚を測定する項目に回答した。その後,最近1ヵ月に恋人に対して恩恵提供を行った経験を想起し,その経験に対する感情を回答した。最後に,主観的幸福感を測定するための尺度(人生満足度尺度,PANAS)に回答した。その結果,共同志向性と本人の主観的幸福感との正の関連は,恋人の応答性を高く知覚している人において認められた。仮説に反して,恋人への恩恵提供に対する本来感と後悔の調整媒介効果は認められなかった。これらの結果は,恋人の応答性に対する安心感を得られる場合に,共同志向性は本人の主観的幸福感とより結びつきやすいことを示唆している。
キーワード 共同志向性,共同的動機,主観的幸福感,パートナーの応答性知覚,恋人関係
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal93-6#21332
種類 研究報告
タイトル 感覚処理感受性と内受容感覚の分離可能性
著者 上田 真名美・多田 奏恵・長谷川 龍樹・近藤 洋史
要約 自己を認識するとき,環境からの感覚情報と身体内部の情報を統合することは重要である。しかし,個人内で外受容感覚と内受容感覚の感受性が同じか否か,明らかではない。本研究ではオンライン調査を通じて,感覚処理感受性と内受容感覚の関係を検討した。201名の健常者 (21歳から60歳) から,感覚処理感受性 (HSP) 尺度と内受容感覚への気づきの多次元的アセスメント (MAIA) のデータを得た。HSP尺度のデータに対して双因子モデルの適合度が高く,先行研究の結果と合致していた。潜在プロファイル分析を用いて,HSPの高低による2グループを識別することができた。HSP尺度とMAIAのデータに対して因子分析を実施したところ,「環境感受性」と「身体感受性」の2つの因子が抽出された。この結果は,個人内で感覚処理感受性と内受容感覚の感受性が独立して機能している可能性を示している。
キーワード 非常に繊細な人々,感覚処理感受性,内受容感覚,オンライン調査
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal93-6#22301