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心理学研究 第96巻 第3号(2025年8月)

種類 原著論文
タイトル 日本人における典型的な混合感情とは?
著者 長峯 聖人・菅原 大地
要約 ポジティブ感情とネガティブ感情が混在した感情を混合感情と呼ぶ。どのような混合感情が存在するかに関しては文化の影響があり,特定の文化を象徴するような感情として捉えられる場合がある(例えば,saudade)。しかし,本邦において混合感情に関する研究知見は少なく,日本人においてどのような混合感情が経験されやすいのかも不明である。そこで本研究では,日本人において典型的と評価される混合感情とは何かについて,3つの研究から検討することを目的とした。予備調査では,混合感情語の候補として24語が抽出された。続く研究1では,混合感情語について理解度および感情価の評価が行われ,混合感情語としての典型性がより高いと考えられる12語が抽出された。最後に研究2では,12語の感情語についてより詳細な検討がなされ,特に「名残惜しい」と「愛憎」が日本人において典型的な混合感情語である可能性が示された。
キーワード
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal96-3#23050
種類 原著論文
タイトル 子どもの公正世界信念の発達
著者 鹿子木 康弘・田辺 和奏・千々岩 眸・小國 龍治・萩原 広道
要約 公正世界信念とは,世界が不当ではなく,不運を被ることのない公正安全な場所であると信じる傾向のことである。これまでの研究では,成人を対象に知見が積み上げられてきたものの,公正世界信念の発達的な起源については直接的・包括的に検証されていない。本研究では5―9歳と成人を対象に,2種類の公正世界信念(内在的・究極的公正世界信念)の発達を検討した。参加者はある人物に幸運・不運が起こる物語を聞き,その人物が昨日何をしていたか/明日何が起こるかについて尋ねられた。その結果,内在的公正世界信念は年齢に伴って漸次的に発達し,その兆しが顕著となる年齢は,幸運においては5歳前半,不運においては7歳後半だった。一方,究極的公正世界信念には発達的差異はみられず,5歳児で既に保持されていることが示された。これらの発見は,公正世界信念は,発達の余地はあるが,すでに就学前時期から保持されていることを示唆している。
キーワード 公正世界信念,内在的公正世界信念,究極的公正世界信念,就学前期
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal96-3#23053
種類 原著論文
タイトル 隠匿情報検査における弁別的反応の質問主題への依存性
著者 小川 時洋・等々力 奈都・渋谷 友祐・岩谷 知実・髙橋 玲央・常岡 充子
要約 自律系隠匿情報検査(Concealed Information Test: CIT)は,有意な関連項目への弁別的生理反応に基づいている。本研究では,教示されたカテゴリー化ルールがCIT時の生理反応に及ぼす効果を検討した。刺激は様々な色のついた数字であり,参加者はランダムに一つを選んで記憶した。CITの項目は,数一致項目と色一致項目,不一致項目で構成され,記憶した刺激と同一のものはなかった。実験1では,これらの項目を異なるカテゴリー化ルールの下で提示した。適用不可能条件では,参加者は覚えた項目が何かを尋ねられ,適用可能条件では覚えた項目の色が何かを質問された。適用不可能条件では,数一致項目が皮膚電気活動の弁別的反応を誘発した。適用可能条件では,色一致項目が,皮膚電気活動,心臓血管系活動,呼吸の全ての指標における弁別的反応を誘発した。数一致項目に対する弁別的反応を示した指標はなかった。実験1の結果は,適用可能条件の下で色と数の組み合わせを繰り返しごとに変化させた実験2でも再現された。これらの結果は,CITにおける弁別的反応がルールに基づいて起こることを示唆する。
キーワード 隠匿情報検査,自律系活動,弁別的反応,有意性,ルール
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal96-3#23033
種類 原著論文 [方法・開発]
タイトル 退屈が食行動に与える影響――短縮版退屈尺度の日本語版の作成を通して――
著者 森永 彩子・田中 圭・佐藤 洋輔・生田目 光・沢宮 容子
要約 本研究では,短縮版退屈尺度の日本語版を作成し,その信頼性と妥当性を検討した。また,退屈が情動的摂食,適応的調和食行動といった食行動に与える影響について検討した。研究1では,男女208名を対象に質問紙調査を行った。確認的因子分析の結果,短縮版退屈尺度の日本語版は原版と同様の1因子構造を有し,尺度の信頼性と妥当性が支持された。研究2では,男女782名を対象に質問紙調査を行った。階層的重回帰分析の結果,退屈しやすいほど情動的摂食の傾向が高いことが明らかになった。感情制御の方略の調整効果については,性別および退屈しやすさの程度によって感情制御の働きが異なることが示された。本研究の結果から,退屈しやすさを考慮することによって,食行動への効果的な介入が可能になることが示唆された。
キーワード 退屈,短縮版,信頼性,妥当性,食行動
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal96-3#23221
種類 研究報告
タイトル 外国語副作用の生起に対する語彙アクセスと統語解析の影響の比較
著者 文 昕然・平見 真希人・藤木 大介
要約 外国語を使用することで言語処理に認知資源が奪われ,思考力が一時的に低下することが知られている。これを外国語副作用と言う。先行研究では使用する外国語が母語と似た構造であるほど外国語副作用の影響が小さいことが知られている。しかし,似た構造が何を指すのかは明らかにされていない。本研究では外国語副作用の生起が統語解析に起因するのか語彙アクセスに起因するのか検討した。中国人留学生を対象に二重課題法を用いて日本語使用時と英語使用時の外国語副作用の大きさを比較したところ,統語解析よりも語彙アクセスからの影響の方が大きいことが明らかになった。
キーワード 外国語副作用,統語解析,語彙アクセス,二重課題法
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal96-3#23330
種類 研究報告
タイトル 大学生における聴覚過敏の保有率に関する検討――音過敏症と音嫌悪症の側面から――
著者 山澤 優心・緑川 晶
要約 本研究は,日本の大学生における聴覚過敏の特徴を明らかにすることを目的とする。なかでも聴覚過敏の二つの要素である音過敏症(Hyperacusis)と音嫌悪症(Misophonia)に焦点をあてる。本研究では非臨床群439名を対象に自記式質問紙を用いて音過敏症と音嫌悪症の保有率および関連を調査した。さらに,音過敏症と音嫌悪症の得点を先行研究と比較するためメタ分析を行った。調査の結果,音過敏症の保有率は8.2%,音嫌悪症の保有率は40%,両者の併存率は7.2%であることが示された。メタ分析の結果から,音過敏症と音嫌悪症のどちらも先行研究の範囲に収まっていたが,異なる国の間でこれらの病態にばらつきがある可能性も示唆された。こうしたことから,文化や性別に関連する要因が一般集団における音過敏症と音嫌悪症の保有率に影響を与える可能性があることが示唆される。
キーワード 聴覚過敏,音過敏症,音嫌悪症,メタ分析
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal96-3#23333