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心理学研究 第97巻 第5号(2026年12月)

種類 原著論文
タイトル 司法面接におけるグラウンド・ルールの教示方法の検討
著者 久原 恵理子
要約 本研究では,司法面接におけるグラウンド・ルールにおいて,誘導を避けた上でルールに従った回答を促すための効果的な教示方法を検討した。特に,「分からない」と「知らない」を区別して回答できるかに焦点を当てた。さらに,選択式質問に「どっちとも違う?」を加えた質問 (選択Q+違う) についても検証を行った。年長 (5―6歳) と小学2年生 (7―8歳) の2つの学年の子どもを,教示の条件として,(a) 「分からない」と「知らない」の回答の練習を口頭で行う条件,(b) カードを使って「分からない」と「知らない」の回答の練習を行う条件,(c) ルール説明のみ,のいずれかに割り振った。「分からない」と「知らない」を区別して回答することに最も効果的な教示は,カード練習条件であった。また,説明のみ条件は,誘導されるリスクが最も高かった。さらに,選択Q+違う質問について,特に小2の説明のみ条件において,誘導を回避するために「どっちとも違う」回答が用いられる可能性が示唆された。
キーワード グラウンド・ルール,知らない,分からない,司法面接,選択式質問
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal97-5#24028
種類 原著論文
タイトル 自己効力感に対する目標構造の知覚と目標志向性の一致効果と非線形関係
著者 岡田 拓人・石井 僚
要約 本研究では,小学生が知覚する教室の目標構造と個人の目標志向性との相互作用が算数に対する自己効力感にどのように関連するかを検討するとともに,目標構造が自己効力感とどのような非線形関係を示すのかを明らかにすることを目的とした。日本の小学5・6年生373名を対象に,目標構造の知覚,目標志向性,自己効力感を測定する質問紙調査を実施した。応答曲面分析の結果,目標構造と目標志向性の一致効果は,自己効力感の有意な予測因子とはならなかった。一方で,熟達目標においては,熟達目標構造と熟達目標志向性のいずれもが高い場合に,自己効力感が高まる相加的効果が認められた。遂行目標においては,交互作用の傾向が示され,遂行接近目標志向性が高い児童は,遂行目標構造を強く知覚しているときに自己効力感も高くなる傾向を示した。さらに,重回帰分析の結果,熟達目標構造,遂行目標構造のいずれにおいても,自己効力感との間に逆U字型の非線形関係が存在することが明らかとなった。これらの結果は,目標構造の効果が一律ではなく,その強さや児童の動機づけ特性によって変化することを示しており,学習者の多様性に応じた柔軟な教室環境の設計の重要性を示唆している。
キーワード 目標構造,目標志向性,自己効力感,非線形関係,応答曲面分析
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal97-5#25004
種類 原著論文
タイトル 早押しクイズにおけるメタ認知的判断――基準逓減モデルに基づく検討――
著者 後藤 早智・伊藤 友一
要約 他者との競争やボタン押し判断を求められる早押しクイズにおいて,クイズプレイヤーは「わかりそう」という予感,すなわちメタ認知に基づいてボタンを押すことが指摘されている。知識を求められる問題に解答する場合,確信度と解答時間の間に負の相関が見られるが,これは時間の経過に伴い,課題に対する認知的努力の投入を停止する基準を低く設定するという基準逓減モデルで説明される。本研究では,早押しクイズの解答者が,ボタン押し判断に至るまでの認知過程について,熟達度と自己認識の観点から検討した。実験の結果,確信度と解答時間の間に負の相関が見られ,基準逓減モデルが,早押しクイズにも当てはまることが示された。さらに,熟達者は,初心者よりも停止基準の妥協が遅く,クイズプレイヤーは「5秒間のシンキングタイムがある」という課題の特性(メタ認知的知識)を利用していることを明らかにした。また,クイズプレイヤーは,自己認識を考慮した情報蓄積(不確実性の逓減)を経てボタン押しを行っていることが示唆された。
キーワード 早押しクイズ,メタ認知,基準逓減モデル,熟達,自己認識
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal97-5#25007
種類 原著論文
タイトル 識別力母数を含むDeep-IRTモデルの等化頑健性
著者 川端 一光・堤 瑛美子
要約 本研究では,Deep-IRTモデル(Tsutsumi et al.,2021)のテスト等化における頑健性を継承しつつ,このモデルを識別力母数を含む形へと拡張した。提案手法では能力母数,識別力母数,困難度母数を互いに独立した3層のネットワークの出力として表現した。シミュレーション実験(研究1)の結果,能力分布が極端に非正規で,かつテストフォームの間に共通項目が無いといった状況でも,IRTによる推定結果と比較して提案手法は頑健に母数推定することが示された。またPISA 2009(OECD,2012)の大規模項目反応データに対して提案手法を適用し,従来のIRTによる推定結果との比較を行ったところ,研究1の結果が再現された(研究2)。
キーワード 項目反応理論(IRT),2母数ロジスティックモデル,テスト等化,深層学習,Deep-IRT
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal97-5#25008
種類 原著論文 [方法・開発]
タイトル 日本語版パートナーからの応答性知覚・非応答性知覚尺度の作成と信頼性・妥当性の検討
著者 谷 千聖・小國 龍治・下司 忠大・樋口 穂乃佳・三田村 仰
要約 パートナーからの応答性知覚とは,パートナーからの理解・承認・思いやりを感じられることを意味し,良好なカップル・夫婦関係を築くうえで核となる要素である。本研究の目的は日本語版パートナーからの応答性知覚・非応答性知覚尺度 (PRIS-J) を作成し,信頼性と妥当性を検証することであった。配偶者を有する者および未婚かつ交際相手を有する者からデータを収集した。確認的因子分析の結果,PRIS-Jは原版と同様の2因子構造を有することが示唆された。PRIS-Jは十分な内的整合性および再検査信頼性を示した。PRIS-Jとその妥当性指標となる変数との関連から,十分な構成概念妥当性を有することが示された。PRIS-Jはパートナーからの反応に対してカップル満足度や親密性を超えた説明力を持つことから,増分妥当性が示された。本研究の結果より,PRIS-Jは十分な信頼性と妥当性を有することが示された。
キーワード パートナーからの応答性知覚,パートナーからの非応答性知覚,カップル・夫婦,尺度開発,応答性知覚・非応答性知覚尺度
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal97-5#25905
種類 原著論文 [方法・開発]
タイトル Relational Abilities Index 日本語版の開発と再現研究
著者 朝倉 智大・ 佐藤 寛
要約 本研究は,関係フレーム理論に基づく関係反応を評価する課題であるRelational Abilities Index (RAI) の日本語版を開発し,Colbert et al. (2017) の知見について日本の大学生を対象に再現を試み,その妥当化の初期的証拠を提示することを目的として実施された。順翻訳と逆翻訳を通して開発されたRAI日本語版は,事前登録された仮説のもと,36名の日本人大学生を対象に実施された。67項目版と128項目版のRAIはいずれも点推定で許容可能なクロンバックのα係数と再検査信頼性を示した。妥当性に関しては,両方のRAIでWAIS-IVの全尺度IQスコアと有意な正の相関,Japanese Adult Reading Testの誤答数と有意な負の相関,およびRey Auditory Verbal Learning Testの合計正答数と有意な正の相関を示した。Trail Making Test B-Aは有意ではないが負の相関を示し,Cognitive Failures Questionnaireとの有意な相関が認められなかった。これらの結果は事前登録された仮説と概ね整合し,Colbert et al. (2017) の知見を部分的に再現したものと考えられる。しかしながら,サンプルサイズが小さいことによる推定精度の観点からは慎重な解釈が必要であるため,今後更なる検証が求められる。
キーワード 関係フレーム理論,関係反応,知能指数,再現研究,事前登録
個別URL https://psych.or.jp/publication/journal97-5#25030