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ここでも活きてる心理学

心を科学する会社

株式会社イデアラボ 代表取締役

澤井大樹(さわい だいき)

Profile─澤井大樹
筑波大学大学院人間総合科学研究科心理学専攻博士後期課程単位取得満期退学。2010年に株式会社イデアラボを設立。事業内容は人間の行動・感性の計測・分析にまつわるコンサルテーション。

学会発表や大学での講義など学術活動も行っています。
学会発表や大学での講義など学術活動も行っています。

「心理学をやっている会社です。」と言うと少し怪しい雰囲気の会社に聞こえますが,イデアラボは学術的な心理学の方法論を駆使して産業場面の問題解決をお手伝いする会社です。2010年に設立され,創立7年となりました。これもひとえに日頃からご支援くださる皆様のおかげと感謝しております。

心理学の方法論と言いましても,実験,調査,観察など様々ですが,イデアラボは単一の方法論にはこだわりません。ある特定の方法論を提供することが目的ではなく,クライアントが直面している,あるいは長期的に抱えている問題を解決することが目的だと考えているからです。しかし,真の問題解決に近づくために特別難しいことをしているわけではありません。クライアントの持つテーマについて,一般的な研究の流れに沿ってプロジェクトを遂行していきます。

どんな案件でも,まずはクライアントの問題についてヒアリングするところから始まります。クライアントが抱える問題は,「30代の女性に自社の商品を使用してもらい,この尺度を用いて評価する調査をしたいのだが,このスケジュールと予算で現実的に実施可能か」という具体的なレベルに落とし込まれているものから「森林浴をしたときに感じるような心地よさについて科学的に調べたい」といった非常に漠然としたものまで多岐にわたります。

ヒアリングの結果,すでにある程度具体的なレベルに達している場合は使用する尺度やクライアントが想定している研究パラダイムを検討するために,まだ抽象的な場合はクライアントの調べたいことに近い心理現象を検討するために,先行研究調査を行います。それから,スケジュールや予算,その他のリソースを踏まえて,研究計画を具体化していきます。ここでのディスカッションがプロジェクトの核となるため,何度も検討と議論を繰り返します。多くの場合,スケジュールの制約もあるため1〜2ヵ月程度で研究計画が完成しますが,このフェーズだけで10ヵ月近い時間を要するプロジェクトもありました。このように,弊社ではクライアントと一緒に妥協せず考え抜いて研究に臨むことを大事にしています。

研究計画が完成すれば実際に調査や実験を実施していきます。Web上のアンケート調査であれば,早ければ調査票の入稿から7日程度でローデータを納品することが可能です。一方,大掛かりな実験では,データ取得に数ヵ月かかる場合もあります。実際に,弊社が行ったある実験では,都内のレンタルオフィスを2ヵ月間借りきって実験室とし,弊社メンバーが連日入れ替わり立ち替わりで,脳波や眼球運動などの生理指標の測定を行いました。データ取得後は分析と考察,レポーティングとなります。このフェーズでも何度も検討と議論を繰り返し,クライアントが理解し,納得できるまで打ち合わせを行います。

このように,改めて弊社が遂行している研究の流れを見ると,心理学の(心理学に限らず,人文・自然科学の)研究者からすればなんてことはないように感じるかもしれません。まさにその通りで,先ほども申し上げたように特別難しいことは何もしていません。しかし,産業場面において実際にヒトの心について調べるときに,この流れがおざなりにされていることが非常に多いと感じています。学術的な心理学の知見や手法が産業場面でも適用され「活きる」形となるよう,イデアラボはその応用と普及に努めてまいります。

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