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ここでも活きてる心理学

営業と蚕と心理学

株式会社 関東マツダ

綱島茉有子(つなしま まゆこ)

Profile─綱島茉有子
2014年,実践女子大学人間社会学部粟津ゼミ卒業。同年より株式会社関東マツダに勤務。同志社大学の高野祐治先生,東京農工大学の横山岳先生とともに,蚕の学習に関する心理学の研究発表を行っている。

ショールームにて,新型CX-5と。
ショールームにて,新型CX-5と。

ここでも活きてる心理学,というコーナーですが,私の仕事と研究とは,実はあまり関係がありません。

営業職として働きながら心理学の研究をしているというと,消費者心理学や社会心理学が思い浮かぶかと思いますが,私は動物,それも昆虫である蚕の学習に関する研究をしています。

大学時代に実験心理学を専攻していたこと,今も研究を続けていることなどを上司に伝えると「もっと心理学的に考えてお客様の心を揺さぶって売って」と大真面目に言われます。一般的な世の中の心理学のイメージは心をコントロールすることのようです。

営業の仕事をしていると,ドアインザフェイス効果,フットインザドア効果,メラビアンの法則,単純接触効果など学生時代に心理学の授業で学んだことのある言葉を聞く機会が多くあります。営業の戦略としての話ではなく,主に取引先の損害保険会社さんからのモチベーションアップのためのネタとして使われている気がします。

なぜ働きながら蚕の研究をしているかというと,卒業論文を発表した際に大学の先生に学会でポスター発表をしてみないかと提案され,やってみたいと答えたことがきっかけでした。こんなに一生懸命卒業論文を書いたのに学内の人に発表するだけということを悔しく感じていたこと,また漠然と学会発表という言葉に対する憧れ,また,世の中に蚕という面白い昆虫がいるということを知って欲しかったこともあり,是非発表してみたいと答えました。

就職も決まっていてあとは卒業するだけという時期だったので,学会発表が入社後になり卒業後も研究を続ける形になり,今に至ります。

実際に学会でポスター発表を行うにあたって実験の手順も見直し,卒業論文の実験の再試を何度か行っています。学生の頃行っていた実験のスケジュールは最短で4日,準備もあるので5日はかかる計算になります。仕事とは全く関係のない研究なので休みも貰い辛いです。ただ幸運なことに自動車販売会社の休みは曜日ごとのシフト制なので,大学が空いている平日に実験を行っていました。また,指導していただいていた大学の先生方や,興味を持っていただいていた先輩方にも実験を手伝っていただき,場所もお借りしていました。

第78回,第79回の日本心理学会大会と2度学会発表をさせていただき,多くの方々に声をかけていただきました。

先回りしながらお客様のご要望にお応えし,車を1台でも多く売るために走り回る営業と,仮説を立て実験を繰り返す研究は対極にあるようですが,私にとってどちらも楽しいことだと感じています。今の営業職もいいのですが,そのまま進学して研究と関わる職に就けばよかった,今からでも遅くないのではないかとも感じています。

自動車販売の営業マンには,営業用のマニュアルという,車のスペックだけでなくメーカーの開発者の熱意や開発に関わる実験などを紹介している冊子が配られます。それを見ながら,おそらく同じ場所で働く営業マンの誰よりも熱心に開発者の熱意や実験方法を読んでいると思います。

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