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心理学キャンパス

京都橘大学

永野 光朗
健康科学部心理学科

永野 光朗(ながの みつろう)
所在地:京都市山科区大宅山田町34
http://www.tachibana-u.ac.jp/faculty/health_science/psych/

Profile─永野 光朗
京都橘大学健康科学部心理学科教授・通信教育課程主任。専門は産業心理学。著書は『新・消費者理解のための心理学』(共著,福村出版),『産業・組織心理学』(分担執筆,北大路書房)など。

はじめに

京都橘大学は1902年に京都市上京区に開校された京都女子手藝学校を起源としますが,1962年開校の橘女子大学を2005年に共学化したものが現在の大学となっています。京都市山科区に位置し6学部および大学院5研究科を擁し約4300名の学生が在籍する総合大学となりました。

本学の心理学科は健康科学部に含まれています。本学部は2012年にスタートした開設6年目の新しい学部です。開設当初は心理学科と理学療法学科の2学科でスタートし,その後,他学部にあった救急救命学科を統合し,さらに2018年4月に新設した臨床検査学科と作業療法学科の2学科を加えて5 学科体制となります。

また2016年より大学院健康科学研究科を開設しました。健康科学専攻に心理学,臨床心理学,理学療法学の3コースを配置しています。

写真1 健康科学部棟・優心館
写真1 健康科学部棟・優心館

本学心理学科の特徴

図1 カリキュラムのイメージ
図1 カリキュラムのイメージ

心理学科は医療系学科と同一の学部にあるため「こころとからだ」をコンセプトとして,学科間で相互に良い影響力を与えながら教育を推進しています。同様の考え方から大学院も1専攻としています。

また心理学科は同一カリキュラムをもつ通学課程と通信教育課程を擁しており,多様な学生が学べる教育環境を整備していることも特徴です。学科に所属する21名の教員の大半が二つの課程の科目を担当しており,学生からみれば非常に多くの教員の授業を受けることができる環境があるといえます。

本学科ではこの特徴を活かして,幅広く心理学を学ぶことが可能なカリキュラムをつくっています。具体的には「行動神経科学」,「臨床心理学」,「発達・教育心理学」,「社会・産業心理学」の4分野に健康科学部の特色を活かした「医療と心理」領域を加えたカリキュラムを形成しています(図1)。以下では特に通学課程(定員90名)の教育内容を中心にして説明します。

共通領域には「心理学概論」,「心理学研究法」,「心理学統計法」,「心理学史」など心理学の理論や方法論を習得するための科目を,認定心理士および社会調査士の養成科目を基準として配置しています。また3・4年次の「卒業研究」(いわゆるゼミ)もここに含まれます(すべて2018年度からの新カリキュラムにおける科目名で記載)。

また本学科特有の科目として1年次必修科目「自己表現研究」があります。これは15名程度の小人数クラスを,臨床心理学を専門とする教員が担当するというものです。担当教員は学生のアドバイザー(担任)を兼ねており,グループワークやカウンセリングの技法も取り入れてコミュニケーションの促進によるグループ形成や,個々の学生へのサポートなどを行い大学生活への適応をすすめます。

さらに共通領域科目の中で特色があるものとして,2年次前期必修科目「心理学特殊講義」があげられます。これは心理学系の大学・大学院で学んだ人々がその知識・能力をどのように活かして業務をしているのかを知るための科目です。各分野の実務経験者(ゲストスピーカー10 名+専任教員4名)が多岐にわたるテーマについて授業を行うという興味深い内容です。

具体的には,「企業のマーケティング業務と心理学」,「犯罪捜査と心理学」,「調査(リサーチ)会社の仕事と心理学」,「スクールカウンセラーの仕事」,「子どもの福祉と心理学」,「広告と心理学」などのテーマがあります。臨床の現場から企業活動にわたる多様な内容について第一線で実務を担当されている方にお話しいただくことで,心理学を学ぶことの意義や将来的な進路を考える機会を提供できる科目といえます。

写真2 新入生合宿の様子
写真2 新入生合宿の様子

進路の多様性を考慮した教育

2年次以降は前述した四つの応用的分野に多数の科目が配置されています。各分野を固定したコース制ではなく,学生が自身の興味にしたがい,将来的な進路を考えながら科目を履修する形をとっています。心理学という学問自体とそれを活用した業務が多様化し,学生の進路やニーズが多様化していることへの対応です。

応用的分野の特徴は「臨床心理学分野」の充実と同時に「社会・産業心理学分野」の科目を多く配置していることです。講義科目としては社会心理学系科目に加えて「産業・組織心理学」,「消費者行動論」,「広告心理学」,「消費者コミュニケーション論」などがあります。

また3年次後期配当の演習科目として「マーケティング調査演習」を開講しています。この科目は来店者調査などを学生が行い,そのデータを分析して報告書を作成し,最終報告のためのプレゼンテーションを行うというものです。2017年度は滋賀県の草津市役所と草津まちづくり会社のご協力を得て,JR草津駅東口近辺の4店舗に来られたお客様計237名を対象にした面接調査を行いました。

この授業を通して3年次前期までに学んだ研究法や統計法などの知識や技術を,社会の問題解決や将来の職業に活かすことが可能になります。同時に心理学を学ぶことの意義を認識することで,その後の勉学を促進し,卒業論文制作や卒業後の職務遂行にプラスの効果をもつ科目であると考えています。

写真3 来店者調査の様子
写真3 来店者調査の様子

通信教育課程について

通学課程に併設されている通信教育課程(愛称「たちばなエクール」)では,インターネットで動画を配信する「メディア授業」,大学キャンパス内において行われる「スクーリング授業」,担当者の指示にしたがって教科書や資料を熟読してレポートなどを提出する「テキスト授業」の三つの類型があります。ひとつの科目の中でこれらを組み合わせたものも含めて,多様な授業展開が試みられています。

在学生の多くは看護師,福祉の実務担当者,教員,会社員などの職業人であり,業務の中で心理学の必要性を感じて勉学を成就すべく入学された方ばかりです。遠方に居住されている方も多く,業務に従事しながらの勉学はさまざまな制約条件があります。勉学環境を整備し,学習のモチベーションを高めるための工夫と支援を教職員一丸となって行っています。

教育効果を高めるための取り組みとして,授業内容に関する質問にメールで即時に対応できる「先生に質問」というシステムの導入や,大学への帰属意識を高め学生-教職員間および学生間の関係性を構築するための交流会の開催,同窓会組織「たちばな優心会」の立ち上げなどがあげられます。

おわりに

京都橘大学心理学科はまだ新しい学科であり,試行錯誤を続けながら,公認心理師育成の教育システムの整備を含めて,さまざまな取り組みをすすめていきます。

また当面の課題として,本年6月23・24日に開催される日本健康心理学会第31回大会・日本ヒューマンケア心理学会学術集会第20回大会の合同大会を完遂しなければなりません。教員と学生が一体となって準備・運営に取り組み,参加者の皆様に満足していただけることを願っております。本学へのご来校を心からお待ちしております。

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