視覚実験研究ガイドブック
市原 茂
最近の視覚実験では,実験の実施や実験データの解析にコンピュータは欠かせない道具になっています。また,視覚研究で扱うテーマは非常に広く,視覚実験では様々な視覚刺激が用いられ,それらを提示する方法や,反応の測定方法には伝統的な手法や最近発達してきた手法を含めて様々なものがあります。
本書は,これから視覚実験を行おうとする方々に直接役立つような実践的な研究のノウハウを解説したものです。その内容は,実験計画法,心理物理学的測定法,実験環境と装置,様々な視覚刺激の作成・提示法,視覚実験制御用ソフトウェア,反応時間測定法,生体情報・行動計測法,モデリングとシミュレーションなどの解説に加えて,視覚実験の応用事例の紹介,研究成果のまとめ方や国内外での発表の仕方,特許の取得や研究倫理の問題など,実験の計画から成果の発表まで,やらなくてはならないものがすべて含まれているといっても過言ではないものといえます。視覚研究の初学者からベテランまで,多くの方々に利用していただけたら幸いです。
心理学からみた食べる行動 基礎から臨床までを科学する
青山謙二郎
どうして食べ過ぎてしまうのだろうか。なぜ高級レストランの料理はおいしいのだろうか。食行動の異常はなぜ生じるのだろうか。本書ではこれらの食行動の諸問題における「心理学的なメカニズム」を,専門家以外の人にも分かるよう解説しています。
ただし,本書の狙いは心理的要因に関する知見を網羅的に解説することではありません。むしろ,それらの知見を導き出したプロセスの理解を重視しています。そのため,本書では解説するトピックを絞り込み,実験や研究の方法やデータを具体的に紹介することに紙数をさきました。これが,本書の最大の特徴です。
第Ⅰ部は基礎的な研究を紹介しています。脳の働きや学習の要因,社会的な影響,さらには食品に関する消費者行動研究まで幅広い話題を扱いました。第Ⅱ部は臨床に関する研究を紹介しています。科学的な根拠のある心理学的介入法を解説するだけでなく,とくに行動分析学に基づく新しい取り組みを積極的に紹介しました。意欲的な研究がまさに進行していくさまを感じていただけるでしょう。
はじめてまなぶ行動療法
三田村 仰
「行動主義は目に見える行動だけを扱う古い心理学である。認知行動療法が登場し,行動療法は過去のものとなった」――修士までの私はそう思っていました。しかしこれは大きな間違いでした。
ここ最近の「マインドフルネス」ブームを陰で支えているのは,明らかに行動療法だといえるでしょう。その行動療法は「第3世代の行動療法」「認知行動療法の文脈的アプローチ」などと呼ばれ,実証データに基づく最先端の理論,洗練された哲学,そして柔軟な介入技法を提案しています(今や時代はポスト・スキナー!)。
そして,私は博士後期課程以降で勉強し直し,あることを発見しました。行動療法は実は一つではなく,もう一つあったのです!確かにある行動療法は古典となったけれども,実は,もう一つの行動療法は依然その輝きを失っておらず,むしろ新しい可能性を秘めていました。
本書では,この「もう一つの行動療法」について,その歴史・原理・応用・哲学を初学者でもわかるよう体系的にまとめています。
セルフ・コントロールの心理学 自己制御の基礎と教育・医療・矯正への応用
高橋 雅治
欲望をコントロールできる子供ほど人生に適応できる。実験者が戻るまで待てたら好きなお菓子がもらえ,待てなかったら好きでないお菓子しかもらえないという有名なマシュマロ実験の結果である。この実験で待つことができなかった幼児ほど青年期の学力や社会的適応度が低くなることが追跡調査により示されている。
欲望をコントロールする力が人生を左右するのは大人でも同様である。健康診断で生活習慣の改善を指導されても,全ての人がすんなりと改善できるわけではない。
この本では欲望のコントロールについての心理学的研究をセルフ・コントロールという用語でくくり,基礎・教育・経済・医療・矯正・脳神経などにわたる幅広い分野の研究者が最新の知見を分かりやすく解説した。
セルフ・コントロールの不足は,学業不振,非行,多重債務,依存症,生活習慣病などのさまざまな臨床的問題の一因であると考えられる。この本が,心理学,教育学,経済学,医学,看護学などに関わる学生,研究者,実務家に役立つことを願ってやまない。