公益社団法人 日本心理学会

詳細検索

心理学ワールド 絞込み


号 ~

執筆・投稿の手びき 絞込み

MENU

刊行物

  1. HOME
  2. 刊行物のご案内
  3. 心理学ワールド
  4. 82号 老い
  5. 高校生のための心理学講座in徳島

私の出前授業

高校生のための心理学講座in徳島

小倉 正義
鳴門教育大学大学院学校教育研究科 准教授

小倉 正義(おぐら まさよし)

Profile─小倉 正義
名古屋大学大学院教育発達科学研究科博士課程後期課程中退。名古屋大学発達心理精神科学教育研究センター特任研究員,鳴門教育大学大学院学校教育研究科講師を経て,現職。臨床心理士。専門は発達臨床心理学。著書は『「ギフテッド」天才の育て方』(共著,学研教育出版),『ワードマップ認知的個性:違いが活きる学びと支援』(共編著,新曜社),『小学生 学習が気になる子どもを支える(心の発達支援シリーズ3)』(分担執筆,明石書店)など。

みなさん,徳島県のことをどのくらいご存知でしょうか。徳島といえば,すだち,鳴門金時,鳴門鯛,わかめなどの海の幸・山の幸,そして何よりも阿波おどりが有名です。私自身も徳島に来て9年目になり,(県出身の方からすればまだまだかと思いますが)県外でお話をするときには徳島のことがそれなりに語れるようになってきました。そんな徳島ですが,心理学は県内の4大学(徳島大学,徳島文理大学,四国大学,鳴門教育大学)で学ぶことができ,それぞれの大学間の交流も積極的に行われています。心理学を学ぶ環境としても整っているのではないかと自負?しております。

昨年(2017年)の11月11日・12日に中国四国心理学会(会場:徳島大学)が開かれました。その中国四国心理学会の開催と合わせて,徳島県臨床心理士会との共催で一般市民への公開講座と高校生向けのセミナーとして,「高校生のための心理学講座」が開催されました。今回の「私の出前授業」は,この「高校生のための心理学講座」の中で私が徳島県臨床心理士会の広報担当理事として企画運営を担当させていただいた11月12日のお話をさせていただきます。当日,徳島県や淡路島から50名以上の高校生たちが参加してくださって,盛況でした。ここでは「高校生のための心理学講座」と書かせていただいておりますが,一般向け公開講座としても広報をさせていただきましたので,高校生に加えて,心理職を含めた対人援助職の方など様々な方も参加してくださいました。

このセミナーは13時〜16時半までの時間で行われ,全体会と分科会で構成されていました。全体会は「新しい国家資格と心理のお仕事」というテーマで行い,分科会では,高校生のための体験授業を2コース設置し,別にシンポジウム「現代社会の問題に心理学はどんな貢献ができるか?」も行いました。

全体会の講演では,鳴門教育大学の葛西真記子先生と吉井健治先生に登壇していただき,私(小倉)の司会のもと,トークセッション方式で行いました。当日は公認心理師法が施行されたばかりの時期で,心理職に就く者としては伝えたい内容であると同時に,語ることが難しい内容でもありました。いろいろと講演の進め方を演者の先生方とも相談したのですが,一方的にお話をする講演よりは,高校生を中心とした参加者のみなさまに心理学をより身近に感じてもらえるように,トークセッション方式を選びました。

具体的には,司会から,下記のような質問を演者の先生方にさせていただき,答えてもらいました。先生方には,個人の経験や気持ちをあえてたくさん入れてもらうようにお願いしました。

問1
「心理のお仕事」とは,率直にどのような仕事なのですか? ご自身の経験から具体的にお話ししてください。
問2
心理の資格が国家資格になったことは,どんな意味があるのでしょうか? 国家資格になったことをどのように受け止めればよいですか?
問3
会場には高校生の方がたくさんいらっしゃいますが,これから心理のお仕事をしたい,心理職を目指したいという方にメッセージをください。

司会をさせていただきながら,私もお二人の先生方の思いが伝わってくるように感じていました。心理の仕事を選択し,続けてこられてきた演者のお二人が,どのように考えて歩んでこられたのか,参加された高校生たちにも実感をもって伝わったのではないかなと思っています。

全体会が終了した後,体験授業を受ける高校生たちは,それぞれ大学の講義室に移動し,2コースに分かれて授業を受けました。

体験授業のコースの一つは,認知心理学と臨床心理学の二つの授業で,認知心理学を徳島大学の佐藤裕先生,臨床心理学(精神分析理論)を鳴門教育大学の葛西真記子先生に担当していただきました。もう一つのコースは,臨床心理学(コラージュ療法体験)と発達心理学の授業で,臨床心理学を徳島文理大学の東知幸先生,発達心理学を四国大学の下坂剛先生に担当していただきました。心理学を大学で学びたいと思っている高校生たちにとっては,徳島大学というキャンパスで,地元の4大学の教員が担当している授業を選択して受けることができることは,進路選択から考えても非常に貴重な経験になったのではないかなと思います。

本当はお一人お一人がどのような授業をされていたかを詳しく紹介したいのですが,誌面の関係でここでは省略させていただきます。

もう一つの分科会のシンポジウム「現代社会の問題に心理学はどんな貢献ができるか?」については,高校生の参加は少なかったですが,一部の高校生とその他の一般参加のみなさまが参加してくださいました。テーマ的には,心理学に携わっている人もそうでない人にも興味をもってもらえる内容になるように工夫しました。

高芝朋子先生(徳島赤十字病院・臨床心理士)の司会のもと,話題提供として,鳴門教育大学の内田香奈子先生には,『学校教育に心理学が貢献できること〜“こころ”を大切にして,充実した学校生活を送ろう〜』というテーマで,同じく鳴門教育大学の古川洋和先生には,『生活習慣病対策に心理学が貢献できること〜やめられない・止まらない振る舞い対策としての学習心理学〜』というテーマで,徳島大学の福森崇貴先生には,『がん医療で心理学が貢献できること〜がん医療従事者を支えるために〜』というテーマでそれぞれお話ししていただきました。そのうえで,徳島大学の佐藤健二先生,鳴門教育大学の吉井健治先生に指定討論をしていただき,フロアのみなさまと一緒に議論を深めていきました。シンポジウムを通して,ライフステージ的にも,領域的にも,様々な場面で心理学が活かされていることが伝わったと考えています。

私は,全体をコーディネートする立場だったので,それぞれの教室を駆け回って,様子をみさせていただきました。本当に高校生のみなさん(もちろん,他の参加者のみなさまも)が熱心に取り組んでいらっしゃったのが印象的でした。ちょっと贅沢に盛り込みすぎたくらいの濃厚な内容で,徳島で学べる心理学総集編のような感じの講座が企画できました。できれば,何年かに1回はこのような企画を行い,未来の心理学者たちに心理学の面白さを知ってもらったり,たくさんの人に心理学が貢献できることを知ってもらったりという活動を続けていきたいと思っています。

PDFをダウンロード

1