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自著を語る

社会心理学・再入門 ブレークスルーを生んだ12の研究

樋口 匡貴

本書は12の古典研究を取り上げ,それが実施された時代背景とともに詳細に解説した本です。多くの人が一度は聞いたことがある有名な実験も,その細部には様々な工夫がなされています。教科書による概要把握だけでは知ることができないような古典研究の細部を本書は示してくれています。

ただもちろん,それだけならば原典を直接読んだ方が良いでしょう。本書の最大の特徴は,古典研究がその後どのような研究領域を産み出したのかを詳述している点にあります。例えばビブ・ラタネによる巧みな実験によって有名になった援助行動における傍観者効果の現象は,近年社会的アイデンティティという観点から再検討されつつあることなどは知らない人も多いかもしれません。

「社会心理学・再入門」と題された本書は,古典を入り口とし,その領域にまさに再び入門することができる良書と言えるでしょう。

最後に質問です。上記の社会的アイデンティティの観点からの傍観者効果の研究で,実験で利用されたスポーツはさて一体何でしょうか? 答えは本書の12章で!

社会心理学・再入門 ブレークスルーを生んだ12の研究
監訳 樋口匡貴・藤島喜嗣
発行 新曜社
A5判/288頁
定価 本体2,900円+税
発行年月 2017年9月
ひぐち まさたか
上智大学総合人間科学部教授。専門は社会心理学,健康心理学。著書はほかに『恥の発生─対処過程に関する社会心理学的研究』(北大路書房),『自己意識的感情の心理学』(分担執筆,北大路書房),『保健と健康の心理学:ポジティブヘルスの実現』(分担執筆,ナカニシヤ出版)など。

野生チンパンジーの世界 新装版

松沢 哲郎

1986年11月にシカゴで初めてジェーン・グドールさんにお会いした。著書Chimpanzees of Gombe: Patterns of behaviorの出版記念で,チンパンジー研究者が初めて一堂に会した。わたしはチンパンジー・アイの話をした。最前列で聞いていた彼女が,「ところでアイはふだんどうしているの?」とたずねた。今でいう福祉のことを聞いているのだ。「勉強が終わると仲間と一緒に運動場で暮らしています」と答えた。にっこりとほほ笑んでくれた。同年2月にギニアのボッソウに行って野生チンパンジーの暮らしを見た。それから毎年,アフリカの野外調査と日本の認知研究を並行して進めている。雑誌『発達』に長期連載しているご縁があってこの大著を翻訳することにした。原題は「ゴンベのチンパンジー:行動パターン」とつつましいが,これ以上のものはないほどに,野生チンパンジーのことなら何でも書いてある。原著出版から30年たってもまったく色あせない。このたび,彼女のコスモス賞の受賞に合わせて新装再刊された。ぜひ多くの方に手に取ってほしい本である。

野生チンパンジーの世界 新装版
監訳 杉山幸丸・松沢哲郎
発行 ミネルヴァ書房
B5判/658頁
定価 本体9,000円+税
発行年月 2017年12月
まつざわ てつろう
京都大学高等研究院特別教授。専門は霊長類学,心理学,比較認知科学。著書はほかに『想像するちから:チンパンジーが教えてくれた人間の心』(岩波書店),『おかあさんになったアイ』(講談社学術文庫),『進化の隣人ヒトとチンパンジー』(岩波新書),『チンパンジーの心』(岩波現代文庫),『チンパンジーはちんぱんじん』(岩波ジュニア新書)など。

火星からの侵略 パニックの心理学的研究

高橋 祥友

1938年10月30日のハロウィーンの晩に,名優オーソン・ウェルズ主演のラジオ劇が放送された。その内容は,火星人が米国ニュージャージー州に攻めてきたが,軍隊はまったく歯が立たず,多くの犠牲者が出ているというものだった。この番組の描写があまりにもありありとしていたため,現実の事件と信じこんだ多くの人々がパニックに陥った。

事件直後から,若き社会心理学者ハドリー・キャントリルが調査し,1940年に本書の初版が出版された。そして,この本はコミュニケーション学や社会心理学の古典となった。そして,原著者の息子アルバート・H・キャントリルが新たに解説を付け加えて,2008年に再出版したのが本書である。

この事件が起きた1930年代後半にはラジオが比較的新しいメディアとして登場していた。さて,本書の知見は,ラジオ以外にもテレビやインターネットなどのメディアが発達した現代においても十分に応用可能である。一方的に与えられた情報をどのように確認し,適切な判断を下すべきかについて多くの示唆が与えられている。

火星からの侵略 パニックの心理学的研究
訳  高橋祥友
発行 金剛出版
四六判/250頁
定価 本体2,200円+税
発行年月 2017年11月
たかはし よしとも
筑波大学医学医療系災害・地域精神医学教授。専門は精神医学。著書はほかに『自殺の危険:臨床的評価と危機介入 第3版』(金剛出版),『医療者が知っておきたい自殺のリスクマネジメント 第2版』(医学書院),『自殺予防』(岩波新書),『ソシオパスの告白』(訳,金剛出版),『精神科初回面接』(監訳,医学書院),『災害精神医学入門』(共編,金剛出版)など。

日常と非日常からみるこころと脳の科学

山田 祐樹

本書は「自分でくすぐってもくすぐったくない」といった日常生活でお馴染みの経験,また「人工的に体外離脱を起こす」といった特殊条件下での不思議な体験を手がかりに,「こころ」とそれを織り成す「脳」に関する科学的知見を紹介している。計27のトピックからなり,心理学や神経科学で定番の知見だけでなく,最新の知見も多く収録している。またそのうち半数以上は原著論文の著者自身が執筆している。

読者層としては,初学者レベルの大学生を中心に想定しているが,同時に,大学院生以上の読者にとって定番知見の復習や最新知見のチェックに役立つことも目指した。そのため,図解,引用文献とキーワード,さらには詳細な用語集も取り揃えている。本書は授業のテキストとして用いることもでき,1回の授業の中で一つのトピックをじっくり深めたり,関連するトピックを組み合わせたりできる。大学院での本格的な研究指導のイントロダクションに使用してもよいだろう。様々な読者が,それぞれの楽しみ方で本書を利用してくれることを期待する。

日常と非日常からみるこころと脳の科学
編著 宮崎真・阿部匡樹・山田祐樹ほか
発行 コロナ社
A5判/206頁
定価 本体2,600円+税
発行年月 2017年10月
やまだ ゆうき
九州大学基幹教育院准教授。専門は認知心理学,知覚心理学。著書はほかに『感性認知:アイステーシスの心理学』(分担執筆,北大路書房),Awareness shaping or shaped by prediction and postdiction(共編,Frontiers Media)など。

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