常務理事会から
認定心理士の現況と課題
2017年6月から資格担当の常務理事を拝命しました。認定心理士資格認定委員会等を開催し,資格認定をすることが中心的な業務ですが,この制度そのものについて,また,2016年4月に設立された「認定心理士の会」について業務を担当しています。私自身は,2007年から2期4年間,資格認定委員会の委員を務めた経験はありましたが,それ以降に,2017年度から認定心理士(心理調査)の資格が新設され,2018年度には公認心理師制度も開始され,この変化のなかでとまどいを禁じえない1年間でした。2年任期の中間点として,認定心理士とそれを取り巻く状況について現況と課題をご報告いたします。
認定心理士
1990年度に82名の資格取得者を出してから順調にその数を伸ばし,2005年度以降は,毎年3,000人から3,000人半ばの資格取得者を出してきました。この2017年度末で資格取得者の累計は56,313人になりました。
現在,認定の作業は,62名の委員で構成される資格認定委員会を年6回,その前後に,保留や再審査等の案件の検討を行う小委員会を年に12回程度開催することによって行われています。この作業では,各申請者が履修した科目のシラバスのチェックを行ったり,不足の資料を取り寄せたりするなど,時間をかけて膨大な書類を処理しています。すべて,日本心理学会の会員のなかから委嘱された委員がボランティアで行っています。委員の先生方に感謝申し上げます。認定基準として,申請者本人の選択によって,旧基準(2007年版)か新基準(2014年版)が適用されていますが,旧基準の適用は,2018年度末までの申請で終わることになります。
認定心理士(心理調査)
認定心理士の資格要件に加えて,とくに心理調査領域の専門的知識を得た人を,認定心理士(心理調査)に認定する制度が,2017年度 から始まりました。この資格を取得するためには,あらかじめ大学等が申請して,自分の大学等のカリキュラムがその要件を満たしていることの認定を受けなければなりません。2017年度は,62校が認定を受け,51人がこの資格を取得しました。また,2018年度は,57校が認定を受け,現在53人が審査を受けていますが,申請者がこれ以上増える見込みはありません。当初,年間600人の資格取得者を見込んで開始した制度ですので,現在,常務理事会,資格認定委員会,また,後述する「認定心理士の会運営委員会」等で,この資格の申請方法や認定基準,認定方法等の見直しについて議論を開始したところです。
公認心理師制度への対応
公認心理師の受験資格取得のために設置することが求められている科目およびその名称は,従来の心理学の典型的な科目およびその名称に,必ずしも一対一に対応していません。そこで,日本心理学会では,資格認定委員会を中心に検討し,各大学が公認心理師に対応して設置する科目を,認定心理士の科目に読み替えて申請できるよう,「公認心理師省令科目の認定心理士科目各領域への対応(案)」を学会ホームページで公開しました。また,常務理事会を中心に検討し,認定心理士を意識した「公認心理師大学カリキュラム 標準シラバス(案)」も公開しています。心理学に関連したさまざまな資格があるなかで,認定心理士および認定心理士(心理調査)がどのようにあるべきか,その意義と役割についての検討が求められています。
認定心理士の会
認定心理士の資格取得者の相互の連携を密にし,資質と技能の向上をはかるとともに,人びとの心の健康・福祉の増資に寄与することを目的として,2016年4月に「認定心理士の会」が設立され,その会員数は,3,627人になりました。この会には,認定心理士登録番号(認定番号)を持っていれば,誰でも登録できます。
2017年9月には,この会の活動を本格化するために,日本心理学会の常置委員会として「認定心理士の会運営委員会」を設置し,認定心理士の会の幹事会と各地方支部会の役員の方々のご尽力により,ニューズレターの発行,北海道から沖縄まで全国で年間10件以上のシンポジウム,セミナー,講演会,研修会,ネット会議等を主催・共催しています。多くの会員が参加し,認定心理士の資質・技術の向上のための研鑽に励むとともに,さまざまな立場の認定心理士の方々の間で活発な情報交換を行っています。
(資格担当常務理事・日本大学教授 岡隆)
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