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ここでも活きてる心理学

ソフトウェア開発と心理学

パナソニック株式会社 メディアエンターテイメント事業部 商品設計部

宮澤 康臣(みやざわ やすみ)

Profile─宮澤 康臣
1998年,愛知工業大学大学院工学研究科修士課程修了。2007年よりパナソニック株式会社にて放送・業務用映像システムのソフトウェア開発に従事し,2018年より現所属。

開発した商品に触れる時間(とき)が楽しいです。
開発した商品に触れる時間(とき)が楽しいです。

私はメーカーに勤務するソフトウェアの技術者です。ライブスイッチャーと呼ばれる放送局向けの映像機器の商品を開発しており,その中でソフトウェア開発のリーダーとして仕事をしています。

ソフトウェア開発というと一日中パソコンの前に座って仕事をしているイメージがあるかもしれませんが,実は様々な仕事をしています。専門技術であるソフトウェアの要求分析・設計・実装・テストを中心として,プロジェクトの計画と推進・課題解決・部門間の調整といったリーダー業務も行っています。

私の仕事内容がリーダー業務中心となるにつれ,コミュニケーション上の課題が多くなっていき,その解決に心理学が役に立つのでは?と考えるようになりました。そこで一念発起し,2014〜15年に京都橘大学の通信教育課程で心理学を学び,2016年に認定心理士の資格を取得しました。

ソフトウェア開発では部門内のチームワークと他部門との協働が重要です。前者の場合は,ソフトウェア開発は年々大規模化しており,自分ひとりだけではソフトウェアを開発することはできません。私のプロジェクトでは社内外合わせて10数名のメンバーと一緒にチームを形成して開発を行っています。また後者の場合は社内の他の専門技術であるハードウェア開発や営業・SE・企画・サービス・製造・品質保証の各部門があります。このように様々な思考やバックグラウンドを持った人たちと連携をとって仕事を進めています。

そのため私の仕事で役に立っている心理学の分野は社会・産業心理学です。他部門(集団間),およびチーム内(集団内)で発生する様々なプロセス・合意形成やリーダーシップなど,主にコミュニケーションに関する知見です。集団間のコミュニケーションの例として,ある専門用語を使った場合,部門が異なると意味の内容や範囲が異なることがあります。そのためせっかくソフトウェアを開発しても望んだものと違うものができてしまい問題になります。これを防ぐプロセスとして,例えば「なぜそのソフトウェアを作るのか?」「どのような使い方をするのか?」といった目的の共有や,具体的な手順の確認を行います。これはお互いの思い込みや気づいていないこと(透明性錯覚)を明確にするコミュニケーションで,社内では「イメージを合わせる」と呼んでいます。

また集団内のコミュニケーションの例では,私は毎日短時間のFace to Faceのミーティングを開催しています。例えば商品テストを行っている期間は朝の15分間を使って「バグミーティング」を行っています。商品テストを行うとバグ(不具合)が報告されますが,このバグの調査では原因がよく分からないことが多く,心理的に負担が多い作業です。このミーティングでは直接メンバーが顔を合わせることで,バグの犯人探しや押し付け合いをするのではなく,メンバーが自ら積極的にバグの調査を行う,何か困っている場合は他のメンバーが知恵を出す,といったチームの自律・援助行動を促しています。

私は今後も専門技術であるソフトウェア開発と心理学の知識を活かし,職場のコミュニケーションを推進すると共に,メンバーが生き生きと仕事ができるようにサポートしていきたいと考えています。

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