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ここでも活きてる心理学

心理学は薬膳スクール運営のスパイス

ナチュラル薬膳生活カレッジ柏本校サロン オーナー講師

須崎桂子(すざき けいこ)

Profile─須崎桂子
オレゴン大学アジア研究学部(中国研究)卒業。外資系企業での営業職等を経て,2001年,シカゴ大学大学院人文科学科修了。2007年に中国薬膳研究会認定国際薬膳師を,2016年に認定心理士を取得。

薬膳スイーツレッスン中の一コマ(右から2人目が筆者)
薬膳スイーツレッスン中の一コマ(右から2人目が筆者)

10年ほど前にストレスの多い会社勤めを辞めて,夢だった薬膳スクールを個人事業で立ち上げました。心理学は開業後に学び始め,認定資格コースのカリキュラム作りや,認定資格取得者の継続学習システム構築の際に,心理学をスパイスのように活かしています。

薬膳学は中国伝統医学(中医学)の理論を活かした食事療法の学問分野です。そのため生徒さん達は,本人や家族が,心や身体に健康の不安を抱えている場合が多いです。中医学理論では,心の不調が身体の病気すなわち心身症の遠因になりやすいことが知られています。しかし次第に,伝統医学だけで心の不調を分析して,根本的な解決を目指すのに限界を感じ始めました。そこで心と身体の関係を科学的に知ろうと,心理学や現代生理学も学んで,心理学については自営業の傍ら6年かけて認定心理士を取得しました。

薬膳コースカリキュラム作りにおいては,心理学のうちセリエのストレス学説などが参考になりました。そのおかげで,中医学だけでなく心理学と現代生理学の知見も交え,「心身の生理」→「心身の病理とその原因」→「薬膳で出来る範囲の病気予防と治療」の流れでカリキュラムを体系化出来ました。平常心がストレッサーで乱れると,自律神経が失調しやすいこと。その影響が免疫系や内分泌系まで及ぶと,臓腑の本来の機能が低下すること。その結果,身体の調子が悪くなるという心身症のメカニズムが分かったからです。そこで,不眠症や過敏性腸症候群やアトピー性皮膚炎のような心因性とみられる不調を癒す薬膳レシピを指導する課程では,心理学にも触れながら薬膳調理のレッスンを行っています。

また認定心理士となった現在は,マズローの欲求段階説やアルダーファーのERG理論といった50年近く前の心理学研究を,薬膳スクールにおける認定資格取得者のための継続学習システム構築に役立てています。ここ数年,薬膳資格を取得した後も学習意欲が衰えず,ブラッシュアップ研修でさらに高度な知識や技能を学び続ける生徒さん達が増えています。その理由をマズローの欲求段階説で考えました。欲求は最高次の自己実現に達すると,欲求に対する充足感が出てもその強さや重要度は減少せず,逆に増加するとされています。開校以来,薬膳カリキュラムを改善し続けてきた結果,やる気のある生徒さん達がさらなる高みを目指して学ぶようになったのでしょう。そして,マズローの説を発展させたERG理論では,欲求が必ずしも段階を踏むわけでなく,初めから自己実現欲求が起こる可能性があるとしています。そこで,新入生達が,成長欲求が高い先輩の認定資格者から薬膳を学ぶレッスンの機会を設けました。すると,薬膳を教えられるようになった先輩から刺激を受けた後輩の中には,自分もそうなりたいという強い願望や学習意欲が生まれます。やさしい薬膳料理クラスで満足していた生徒さんが,先輩達の活躍を見て認定資格コースに編入したケースもありました。

このように心理学は薬膳の仕事における隠し味になっています。これからも心理学を活かし工夫を重ねながら,健康に役立つ薬膳レッスンを通じて社会貢献を続けたいと思います。

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