在外研究を振り返る
宮崎 慧(みやざき けい)
Profile─宮崎 慧
2010年,東京大学博士課程総合文化研究科広域科学専攻修了。博士(学術)。日本学術振興会特別研究員(DC1,PD),関西大学商学部助教を経て,2013年より現職。専門はマーケティング・サイエンス,心理統計。論文は「商品カテゴリー購買と複数ブランド購買の段階型同時分析モデル」(共著,行動計量学)など。
2017年9月から1年間,サバティカルでノースウエスタン大学ケロッグスクールに滞在しました。簡単ではありますが,研修前から主な事柄を順に書いていきたいと思います。
私は出身研究室の先輩であり,共同研究もさせて頂いている慶応義塾大学の星野崇宏先生に仲介頂き,心理統計学・マーケティングリサーチを専門とされているUlf Bockenholt先生に受け入れのお願いをしました。時期としては2016年の11月頃に星野先生と共に研究報告のためにBockenholt先生を訪問し,2017年3月頃に直した論文を送ると同時にメールで研究員受け入れの依頼をしました。
ビザ取得については,まず2017年5月頃にinvitation letterと,身分や所得,保険などを記入する書類を先方から送ってもらいました。これらを一通り揃えればアメリカのビザ取得に必要なDS2019を発行してもらえますが,私は特に保険に関する書類の準備が大変でした。勤務先から紹介された保険会社は,受入先の大学の提示条件を満たしておらず使えませんでした。また日本で売っている保険を利用するには在外先の保険免除の証書(waiver form)を用意する必要があります。その書類は見たこともない単語だらけで,最初は意味もよく分かりませんでした。ただその書類に「大学で用意している保険に入る」という項目があり,そこで初めて受入先の大学が保険を提供していることを知りました。担当者に連絡したところ保険加入のためのクレジットカード情報を入力するURLを紹介されました。金額は25万円くらいだったと思います。結局DS2019を取得したのは7月上旬頃でした。後は大使館に行きビザ本体をもらうだけです。面接は勤務先と受入先の大学を聞かれた程度で,ごく簡単に終わりました。
次に出発までの2ヵ月間で下宿先を決め,航空チケットを手配しました。下宿先は研修開始前に現地に行って決める,開始後ホテルをある程度の期間予約しその間に決める,など幾つか方法があると思いますが,私は現地の日本人ブローカーの方に依頼し,下見なども代行してもらいました。手数料はかかりますがこの方法が最も簡単かと思います。航空チケットも研究者用の代行業者を勤務先の大学事務の方から教えてもらい,それを利用しました。
研修開始後10月初旬には星野先生と院生の方々がBockenholt先生との共同研究の提案のために訪問してくださいました。基本的には私は家と大学とスーパーの間を移動するだけの単調な生活を送っていたため非常に助かりました。ところが11月下旬に地下鉄で財布を盗まれました。間抜けなことにクレジットカードや大学の入校証など大事なカードを全て一緒に入れており,いっぺんに失くしました。当然すぐに利用停止し新しいカードの発行手続きを行いましたが,カードは下宿先に直接送付できず,カード会社に登録している日本国内の住所に送付されてしまいます。結局ETSで他の荷物にカードを紛れ込ませて送るよう家族に頼み,何とか解決しました。治安はやはり日本と同じ感覚ではいけないと痛感しました。
冬のシカゴは毎年摂氏マイナス20度になる週が一度はあり,かなり大変でした。また日照時間が少ないので多少暗い気分になってしまいました。ただ誘惑が少ないので研究に集中はできたと思います。一方で夏は非常に素晴らしい気候で,毎日気持ち良く過ごせました。
以上,在外研修に関する主だった事件を記しました。今後在外研修に行かれる先生方の参考になれば幸いです。在外研修は機会があればなるべく早く行かれることをお勧めします。私は研修前の面倒な手続きに正直うんざりしたこともありましたが,現地の先生の研究スタイルなどを見て色々と刺激を受け,帰国後は行って良かったと思えました。
最後に,Bockenholt先生の紹介および仲介をして頂きました星野崇宏先生に心より感謝いたします。
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