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常務理事会から
日本心理学会の財務について
2019年6月より,財務を担当しております金井です。よろしくお願いいたします。担当の財務業務ですが,産業・組織心理学会の会長を1期3年務めた経験があり,学会の財務には多少なりともなじみがあると思っておりましたが,実際に取り組んでみますと,本学会は,①規模が大きい,②公益社団法人である,の二点で特徴的であるため,自分の経験だけでは間に合わない部分も多く,前財務担当常務理事であり,現理事長の坂上先生や,事務局の皆様に現在ご指南いただきながら,鋭意取り組んでいるところです。ここでは,私が今まで勉強してきた財務の状況についてご披露し,今後の課題についていろいろとご意見をいただければと考えております。
まず,規模の大きさですが,会員数は2018年度末で7,882名です。また,昨年度の決算は,2019年度第1回総会で承認された決算書を見てみますと,資産は流動資産と固定資産を合わせて約2億8,867万円,負債は約6,594万円ですから,正味財産は約2億2,272万円となります。経常収益(簡単に言うと収入)の主なものは会員の年度会費(約8,335万円)のほかに,事業収益としての認定心理士資格審査・認定料(約1億5,929万円),学術集会参加費等(約4,635万円)で,その他も含めて約2億9,986万円となります。
一方,経常費用(簡単に言うと支出)は事業費と管理費に分かれており,事業費はまさに学会の活動そのものです。主なものをあげると,学術集会開催経費が約5,389万円,出版物刊行費(心理学研究,Japanese Psychological Research,心理学ワールド)が約5,823万円,公開講演会経費が約1,473万円,資格認定業務費約2,648万円,事業事務経費約1億534万円で,その他も含めて経常費用全体で,約2億9,689万円となりました。
こういったかなり大きな金額が動いているということですが,これらはすべて,公益社団法人として社会的に適切に運用されなければならないということになります。公益社団法人である本学会は,その目的を定款に「心理学の進歩普及を図り,もって我が国の学術の発展に寄与すること」と定めています。公益社団法人は「学術,技芸,慈善その他の公益に関する23種類の事業であって,不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与する」公益目的事業を行うことが求められており,会員は,学会が行う事業を通じて,「不特定かつ多数の者の利益の増進に寄与」しているわけです。具体的には事業費に示されている通り,①研究振興支援事業,②認定心理士資格認定事業,③教育研修啓発事業の三つの事業を柱としています。以上を踏まえ,会員の皆様からお預かりした会費を公益社団法人として適切に事業化するということを常に念頭に置いて活動していきたいと考えております。
いくつかの課題としては,まず,学術大会開催費が大きく膨らみ,参加費等で賄えない状況が生じていることがあります。会場費に加えて,アプリ,投稿,プログラムなどを含む大会受付システム等の電子化,業務委託費用が大きくなっています。こういった傾向は今後も必然と思いますので,学会の最も重要な事業の一つである学術大会をどのように財務的に支えるかが課題です。
もう一つは,本学会の公益目的事業の核である認定心理士資格認定事業の今後です。ご承知のように,心理学界として,初めての国家資格である公認心理師資格がスタートし,このことが認定心理士資格希望者の動向に何らかの影響のある可能性が指摘されていますので,その動向を長期的に見ていく必要があります。なお,認定心理士の資格取得者は2018年度末で59,897名となり,その継続活動団体としての認定心理士の会の会員は4,035名となっています。認定心理士の会の活動は,関係各位のご努力もあり,年々充実していますが,こういった活動を財務的に支えることも重要と考えています。
また,2027年には設立100周年を迎える本学会ですが,その記念の事業として,本学会の会員管理システムとノウハウを活用し,他学会の会員管理システムの支援を検討中です。直近の課題としては,10月1日からの消費税10%にどのように対応するのかといったこともあります。その他,学会として考えていかなければならないことを財務の立場から考えていきたいと思っておりますので,ぜひご意見,ご支援をいただければ幸いです。
(財務担当常務理事・名古屋大学教授 金井篤子)
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