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アムステルダムで研究法を学んだ一年間

国里愛彦
専修大学人間科学部心理学科 准教授

国里愛彦(くにさと よしひこ)

Profile─国里愛彦
2011年,広島大学大学院医歯薬学総合研究科創生医科学専攻修了。博士(医学)。2015年より現職。専門は臨床心理学,認知行動療法。著書は『計算論的精神医学:情報処理過程から読み解く精神障害』(共著,勁草書房),『認知行動療法事典』(分担執筆,丸善出版)など。

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2019年度に,専修大学の特別研究員(特例)制度を活用して,Amsterdam大学のPsychological Methodsに1年間滞在してきました。Psychological Methodsは,心理学研究法に関する学科で,私の受け入れ先でもあるベイズ統計学のEric-Jan Wagenmakers教授(周囲からはEJと呼ばれています),心理学的ネットワーク分析のDenny Borsboom教授を筆頭に,心理学研究法や心理統計学に特化しています。私は,ベイズ統計学や数理心理学を中心に学びつつ,主に恐怖条件づけにおける再発現象を説明する潜在因果モデルに取り組みました。また,Dennyのラボを中心に広がってきている心理学的ネットワーク分析の盛り上がりを間近に感じて,そのサマースクールに参加したり,EJの紹介でSociety for the Improvement of Psychological ScienceやOpen Science Community Amsterdamのイベントに参加しました。元々オープンサイエンスや再現可能性に関心を持っていましたが,オランダの雰囲気を肌で感じ,日本でも何かできないかと思い,Japanese Community for Open and Reproducible Scienceを立ち上げました(https://osf.io/z4cgu/)。EJが推進しているベイズ統計学のソフトであるJASPの開発チームと交流し,バグ取り用のテスターも経験しました。JASPチームはアムステルダム大学内にありますが,企業のような感じで開発をしており,テスターを通してそのプロセスを見ることができたのは貴重な経験でした。JASPの日本語化にも関わることができ,これをお読みの頃には日本語版JASPが出ているかもしれません。

研究に関することをまとめて書きましたが,まさか自分がOver Seasを書くことになるとは思いませんでした。私は語学が非常に苦手で,オランダ語はもちろん,英語もできない部類に入ります。Over Seasを読むと語学堪能な心理学者が海外で活躍してきた話が多いので,私が書くものじゃないかなと思っていました。そんな人間ですが,なんとか家族を連れての海外生活を無事終えられました。そこで感じたTipsめいたものを以下に書きます。これから在外研究に挑戦しようかなと思っておられる方の参考になればと思います。①滞在許可に関する書類は早めに準備する(国によって違うので準備に時間がかかります),②遠隔での家探しは大変なので現地の日本人業者を利用する(張り切らず金で解決する),③家族のためにも日本人が多いところに暮らす(せっかく海外だからと張り切らない),④英語が苦手な人間は別の言語は諦める(オランダ語のメールやドキュメントは来ますが機械翻訳で十分対応できます,1年くらいの滞在だと英語でごまかすスキルを伸ばすほうがいいです),⑤英会話が苦手ならミーティングに書いたものを持っていくとかメールで補足する(学生みたいですが,私はそうしていました),⑥家族で問題解決する(妻がいろんな人と仲良くなれるのですごく助けられました)。私でも十分研究に取り組めましたし,海外滞在につきものの苦労もなく帰国できました(やたら風邪ひいたり,新型コロナで帰国には苦労しましたが……)。

オランダは,心理学研究が盛んですし,生産性も非常に高いのでとてもオススメです。また,オランダの方は率直な言い方をしますが,語学が苦手な人間にとってはかえって分かりやすいですし,非常に気さくで親切な方が多いです。あと,子どもにすごく優しいので(オランダ以外の国にも行きましたがオランダは特別に子どもに優しいです),小さいお子さんがおられる方も楽しくリラックスして過ごせるかと思います。Cheers!

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