公益社団法人 日本心理学会

詳細検索

心理学ワールド 絞込み


号 ~

執筆・投稿の手びき 絞込み

MENU

刊行物

心理学キャンパス

桜美林大学

小関 俊祐
リベラルアーツ学群・健康福祉学群・大学院心理学研究科

小関 俊祐(こせき しゅんすけ)
所在地:町田市常盤町3758
https://www.obirin.ac.jp/

Profile─小関 俊祐
桜美林大学リベラルアーツ学群 准教授。専門は臨床心理学(認知行動療法)。著書に『小学生に対する抑うつ低減プログラムの開発』(単著,風間書房)など。

はじめに

写真1 本学 町田キャンパス
写真1 本学 町田キャンパス

桜美林学園は1921年に,創立者である清水安三が北京市朝陽門外に貧困地域の中国人女子を対象として設立した崇貞(すうてい)平民女子工読学校(後の崇貞学園)を起源とし,2021年には創立100周年を迎えます。1966年に桜美林大学が設立され,現在,リベラルアーツ学群,健康福祉学群を含む6学群と心理学研究科を含む7研究科で構成されています。桜美林学園のモットーは「学而事人(がくじじじん):学びて人に事える(つかえる=仕える)」であり,「学んだことを人のため,社会のために活かす」という精神は,心理学を学ぶ我々にとっても重要な心構えとなっています。

桜美林大学で学ぶ心理学

桜美林大学には,「学群制」により,特定の分野だけではなく,隣接した分野も広く学ぶことができるという特徴があります。学生は,各学群の持つ専門科目の中から興味関心のある科目を選択して,自分の学びの形を作り上げていくことができます。公認心理師の受験資格取得に必要な科目は「リベラルアーツ学群心理学専攻」と「健康福祉学群精神保健福祉専修実践心理コース」の2学群で履修することができます。

また,大学院心理学研究科には,「臨床心理学専攻」と「健康心理学専攻」があり,どちらの専攻でも,公認心理師の受験資格取得に必要な科目を履修することができます。加えて,臨床心理学専攻では臨床心理士取得に必要な要件を,健康心理学専攻では認定健康心理士の資格取得に必要な要件を満たすこともできます。

リベラルアーツ学群心理学専攻

リベラルアーツ学群では,関心に応じて各分野の専門性を深く学ぶと同時に,幅広い学問に触れることによって,ひとつの専門の枠に囚われない自由な学際的思考を身につけることを目指します。そのため,入学時に「人文領域」「社会領域」「自然領域」を選択し,1,2年生では学問の基礎的な方法論を身につけ,大学での学びの足場を築きます。2年生の秋学期には,メジャー(主専攻)とマイナー(副専攻)を選択します。これによって,ひとつの学問分野の知見では解決できないような課題に対し,学際的な思考で取り組んでいきます。たとえば,心理学をメジャー,教育学をマイナーに選択することで,教育分野を専門的に学んだり,心理学をメジャー,経済学をマイナーにして,行動経済学のような学びに発展させたりするような,オリジナリティの高い学修へとつなげることが可能になります。

したがって,心理学を学ぶ学生には,入学以前から,心理学を専門にすることや,公認心理師の取得要件を満たすことに強い意志を持っている学生が多数いますが,入学後に,心理学の基礎的な講義を受講したことを契機に,心理学に対する興味関心が高まり,心理学を専門的に勉強することを決めた学生や,メジャーを心理学以外の学問に設定しつつも,心理学をマイナーとして選択し,心理学の知識を自分の専門に活かそうとする学生も多くいます。

健康福祉学群精神保健福祉専修実践心理コース

健康福祉学群では,メンタルなサポートを含めた健康と福祉に関する専門家を育成しています。精神保健福祉専修,社会福祉専修,健康科学専修,保育専修の4つの専修があり,心理,健康,福祉,スポーツ,保育などの資格取得を特に重視しています。「キャリア開発シンポジウム」を毎年開催し,福祉施設や医療機関のほか,一般企業でも多く活躍している卒業生から体験談やアドバイスを聴く機会を設けるなど,大学卒業後に,専門家として社会に貢献する姿を具体的にイメージしながら,大学生活を送ることができるよう,支援しています。

公認心理師の資格取得を目指すことができる実践心理コースは,2018年4月に誕生した,新しいコースです。学群の特色である健康と福祉に関する科目とあわせて,赤ちゃんからお年寄りまで,あらゆる人を対象とした対人援助に役立つ実践的な心理学を学ぶことができるという特徴があります。ストレス社会といわれる現代において,人々が心や社会の諸問題によりよく対処し,身体的,精神的,社会的に良好な状態を維持し,充実した生活を営むための心理学的な支援アプローチを実践的に学修していきます。

大学院心理学研究科臨床心理学専攻

写真2 中学校での集団認知行動療法介入の様子
写真2 中学校での集団認知行動療法介入の様子

臨床心理学専攻では,保健医療,福祉,教育,司法・犯罪,産業・労働の各領域で活躍できる公認心理師および臨床心理士の育成を目的としています。また,臨床心理士養成の第1種指定大学院の認可も受けており,附属の臨床心理センターでは,臨床心理学専攻学生のセンターにおける臨床心理学に関する実習教育を行うとともに,学外の来談者の心理・教育的問題に対する臨床心理相談活動も行っています。教育課程の特徴として,「認知行動療法特論」に代表される各心理学の専門領域の講義に加え,実践的な心理技法や心理検査法,「インテーク面接」「精神科面接ロールプレイ」などの講義・演習があることが挙げられます。私の研究室では,大学院生が中心となり,毎年,中高生を対象とした集団介入を実践する取り組みも行っています。

修了生は医療(精神科,心療内科など)・教育(学校,児童相談所,教育相談所など)・産業(企業相談室・EAP),福祉(子育て支援センター,障がい者対象の福祉施設など)の各領域の心理職として活躍しています。ほかに,地方および国家公務員(厚生労働省,法務省),あるいは大学教員として常勤職に就いている修了者もいます。年に一度,「公認心理師・臨床心理士の仕事を知ろう」という公開授業を開催し,大学院を修了し,現場で活躍されている修了生の職務について具体的な話を伺う機会や,修了生が一堂に会する機会を設け,臨床心理学専攻に在籍していた方々とのつながりを大切にしています。

大学院心理学研究科健康心理学専攻

健康心理学専攻では,心とからだの「健康」に直接関わる専門科目の充実を図るとともに,選択必修科目として「ライフスタイル特論」「地域リハビリテーション医学特論」「食生活特論」など,隣接分野や学際的分野の科目を配置しています。また,2013年には,欧米で急速に発展しているコーチング心理学の大学院科目を日本で初めて設置しました。このように,人々が心身の健康の維持・増進を図り,健康寿命を延ばして充実した人生を送るうえで,エビデンスに基づく心理学的実践を担う専門家の必要性が高まっていることを踏まえ,様々な領域で活躍できる高度な心理専門職や実務家,および研究者の育成を行っています。

健康心理学専攻の大学院生は,広く新卒者,社会人,留学生を対象としているため,修了生の進路も多様です。学部からの進学者では公務員,施設職員,NPO職員などの心理福祉領域で多くの修了生が活躍しています。社会人では,新たな職場への転職,同じ組織であっても健康管理部署への異動など,大学院での学びを活かしたキャリアを形成しています。学部からの新卒者だけでなく社会人の博士後期課程への進学者も多く,教育研究職に就いている修了生も数多くいます。留学生では,日本国内で就職したり,母国に戻り病院の心理職や人材育成会社に就職したりしています。地域のリーダーなど新たな活躍の場へのステップを踏み出す社会人の方も多くおられます。

また,年に一度,大学院生が運営する「健康心理学フェア」を開催しています。ストレスに関する体験型の講義や心身をリラックスさせるヨガ療法,院生のポスター発表,アロマとお茶で癒やされながら心理測定やゲームが楽しめるリラクセーションルームなど,健康心理学という学問を楽しく学べる盛りだくさんのプログラムを用意し,一般の方々にも広く体験していただき,心理学を身近に感じていただく機会としています。

おわりに

桜美林大学では,学生のニーズにあわせて,様々な形で心理学を学ぶことが可能です。リベラルアーツ学群では,幅広い教養を学ぶ中でスタンダードな心理学関連科目を中心に学ぶのに対して,健康福祉学群の実践心理コースでは人をサポートすることに関連した実践的な心理学を中心に学ぶという特徴があります。大学院でも,公認心理師の資格取得に必要な要件を満たすことができるという点は,両専攻で共通していますが,プラスアルファの資格の取得や,将来の専門性では,それぞれの特徴があります。

PDFをダウンロード

1