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常務理事会から

認定心理士資格認定の現場より

2021年6月から常務理事を務めております。これまで日本心理学会では教育研究小委員会の委員や広報委員会の委員長などを務めてはいたものの,役員になったのは実質的にはこれが初めてです(代議員ではありましたが,とりたてて仕事はなかった)。それなのにどういう因果かいきなり常務理事になり,さらにはこれまでほぼご縁のなかった資格担当になり,「このコロナ禍に2ヶ月に1回必ず本三(ほんさん、学会所在地の略称)に行かなければならないとかどういうこと!?」と文句を言っていた時期もあるのですが,1年経って,ようやく自分が何をすべきかが見えてきたところです。

資格認定委員会業務風景(2022年4月9日)
資格認定委員会業務風景(2022年4月9日)

資格担当の主たる業務は,だいたい2ヶ月に1回開催される認定心理士資格認定委員会で行われる申請書類の審査を統括することです。認定委員会の任務は,事務局に届いた申請書類を厳格な基準のもとで審査し,認定の可否を決定することです。2ヶ月に1回行われますが,前述のとおり,必ず学会事務局の会議室に参集しなければなりません。申請は電子・郵送のどちらでも受け付けているのですが,書類の内容が多岐にわたり,参考情報としてのシラバスの添付など申請者ごとの個人差も大きいため,また個人情報保護の観点からも,電子申請分も印刷して一箇所に集まって確認することが(少なくとも,今のところ)必要なのです。資格認定委員会のメンバーは機関誌等編集委員会に続く多さの50名おり,そのうち都合のつく方に,たいていは土曜の昼下がりにお集まりいただき,写真のような構図で,向かい合って座る2名がペアになって,判断に迷う点などがあれば話し合いながら審査を進めます。そして,2週間内外のうちに「小委員会」が別途開催され,委員会で「合格」とならなかった(「保留」あるいは「不合格」と判定された)ものを再度検討して,必要があれば結果を変更して,事務局から申請者に結果を通知する,という流れです。

つまり「どういうこと!?」はこういうことだったわけで,「認定心理士」という資格のことをその存在以外はほとんど知らなかった私には衝撃的でした。この様態ですから,コロナ禍,特に東京に緊急事態宣言が発出されている中では委員会を開催することがままならず,申請された方々にはご迷惑をおかけしました。

常務理事の業務は審査を統括することだと申し上げましたが,何も写真を撮った位置から見物しているだけではありません。教育カリキュラムに認定心理士資格取得を組み込んでいる大学からの「カリキュラム検討」要請に応じて,シラバス内容が認定にふさわしいかを精査する必要があります。書類の山を目にするとつい「いやみんなちゃんとした大学なんだから,きっと大丈夫だろう」と手抜きしたくなるところですが,ここが資格の生命線と考えて,ひとつひとつ丁寧に確認することを心がけ,問題点があると思えば遠慮なく指摘しております。

認定心理士資格が誕生したのは1990年。既に30歳を超えて人間であれば壮年にさしかかったことになります。これまでの資格取得者は6万8千人あまり。その間に,社会における心理学へのニーズは(良くも悪くも)大いに高まり,大学には次々に「心理学部」が創設され,また公認心理師という国家資格が誕生したことで,この資格の位置づけも再考の時期が来ているようにも思います。認定心理士でないとできないという仕事はありませんが,かといって「たかが認定心理士」というわけでもありません。この資格をとる意味,つまり心理学を学んだ方々にとっての魅力を高めるために何をすべきか,学会として模索を始めています。常務理事の職務として,審査プロセスをつぶさに知れたことは,そのための手がかりを与えてくれそうです。

(資格担当常務理事/大阪大学教授 三浦麻子)

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