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常務理事会から
広報委員会および公認心理師関係の活動
●広報委員会の活動
広報委員会では,新しい試みとしてYouTubeライブを開催しました(参加費無料・一般公開)。2021年7月には,機関誌等編集委員会との合同で,「話題の論文について著者と語る」と題し,心理学研究92巻に掲載されて注目を集めた吉田寿夫・村井潤一郎(2021)「心理学的研究における重回帰分析の適用に関わる諸問題」を取りあげました。重回帰分析という心理学者にとってなじみ深い統計分析手法について批判的に論じた論文です。ライブイベントでは,責任著者である吉田寿夫氏に当該論文に込めた思いを語っていただき,それを受けて,樋口匡貴氏と小塩真司氏からそれぞれの論文で論点となった部分についてご自身のコメントをいただきました。さらに心理統計学者の岡田謙介氏に心理学者が重回帰分析や因果推論とどう付き合うべきかについてご意見をいただきました。たいへん多くの方々に関心を持っていただき,ライブでは1,800名弱の方に参加登録いただきました。翌日から2か月の間,公開したアーカイブの総再生回数は6,710回でした。2022年以降もこうしたライブイベントを企画していく予定です。
●公認心理師関係の活動
日本心理学会は,公認心理師養成大学教員連絡協議会(公大協)と連携して,公認心理師制度の充実に向けた活動をおこなっています。
コアカリキュラム案の作成公認心理師の養成は2018年から本格的に始まり,4年が経過しました。公大協は,新たに「公認心理師教育コアカリキュラム案」を作成しました。コアカリキュラムとは,専門職の養成において,全大学で共通する「コア」の部分を抽出し,体系的に整理したもので,医師,歯科医師,看護師,薬剤師,教師などに関して作成されています。
公大協は,これまでの活動をもとにして,2021年6月から各委員会で検討を始め,2022年3月の年報で中間報告を公表しました。コアカリキュラム案については,日本学術会議心理学・教育学委員会の5つの分科会(公認心理師の専門性と社会貢献検討分科会,健康・医療と心理学分科会,法と心理学分科会,心の総合基礎分科会,心の研究将来構想分科会)から後援をいただきました。
2022年5月には,パブリックコメントを募集し,それに答える形で,2022年9月には,「公大協 公認心理師教育コアカリキュラム案:パブリックコメントによる修正版」を公開しました。
コアカリキュラムを作ることには以下のような利点があります。①公認心理師の能力(コンピテンシー)を明らかにし,それを「到達目標」として,知識と技能の獲得を体系化することができること,②大学および大学院・実務経験プログラムの各段階の養成機関の到達目標とカリキュラムを整理することで,公認心理師養成の全体像を明らかにできること,③学生にとって,各段階の学修の道筋と意義が理解でき,学修の動機づけが高まり,キャリアパスの展望を持つことができること,④各養成機関にとって,養成の「コア」となる標準的なコアカリキュラムが作られることによって,具体的なカリキュラム作成のモデルとすることができること,などです。
公認心理師制度の厚生労働省ヒアリング公認心理師法附則第5条に定められた対応,いわゆる「5年後の見直し」の方針が,2022年5月に厚生労働省のウェブサイトで発表され,いくつかの団体の意見を聞くためのヒアリングがおこなわれることになりました。公大協もヒアリングの対象団体として選ばれました。公大協は,前述のコアカリキュラム案をもとにして回答文書を作成し,8月31日のヒアリングで意見を述べました。回答文書の内容は公大協のウェブサイトで公開しています。こうしたヒアリングの成果を生かし,他の専門資格に劣らない立派な資格となるように努力していきたいと思います。
(公認心理師担当/広報担当常務理事・東京大学名誉教授 丹野義彦)
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