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広報誌としての『心理学ワールド』─「社内報」および「社外報」として

青山 謙二郎
87号~95号 編集委員長 同志社大学心理学部 教授

青山 謙二郎(あおやま けんじろう)

Profile─青山 謙二郎
専門は学習心理学,行動分析学,食行動の心理学。2009年より現職。近著(分担執筆)に『ようこそ,心理学部へ』(ちくまプリマー新書)。

新型コロナ感染症の感染拡大が生じたのは『心理学ワールド』編集委員長の任期のちょうど中頃でした。コロナ禍で編集の仕事を進める中で,広報誌としての本誌の役割について考え込んでしまいました。

編集委員長の仕事は気軽に引き受けました。編集委員は以前に務めたことがあったのですが随分以前のことであり,編集委員長の役目が回ってきたときには具体的にどのように編集していたのかほとんど忘れていました。ただ漠然と「仲良く編集する楽しい委員会だった」とだけ記憶していました。幸いなことに編集委員の半数は2期目の皆さんで編集の実務に慣れており頼もしく,新しく編集委員になってくださった皆さんも活発にアイデアを出してくださったので,委員長の仕事は楽でした。会議の司会をして,原稿の確認をするだけでした。原稿の確認は,出版前に新しい原稿を読むことができてトクな気分になる楽しい作業でした。しかし,他のあらゆることと同様に,2020年の春先から状況が変わりました。

新型コロナ感染症の感染拡大に伴い,編集委員会でも困難な状況において何ができるかが議論されました。その結果,過去の記事の中からコロナ禍において一般の人にも有益な記事を選んで,それらを紹介する特設ページをホームページ上に設けることになりました。そのための記事を選ぶ作業の中で考え込んでしまったのが,本誌の位置づけです。『心理学ワールド』は日本心理学会において広報誌として位置づけられています。ただし,誰に対する広報かといえば,学会の会員と認定心理士の方々が主なターゲットになっていたと思います。つまり,「社内報」的な広報誌でした。そのため,記事は心理学について少なくとも学部卒業程度の知識を有していることを前提に書かれているものが多く,それ以外の一般の方々が読むには難しい記事がほとんどだと感じました。

日本心理学会の社会に対する責任を考えると,「社外報」的な広報も重要なことは明らかです。そのため,本誌内のいくつかのコーナーを,日本心理学会員以外の方々が読んでも理解しやすいものに変更することにしました。何回もの編集委員会での議論を経て,97号(2022年)から新しく誕生したコーナーが「あなたの周りの心理学」「Psychology for U-18 高校生に伝えたい○○の心理学」です。前者では日常的で一般の人々にとって興味深いトピックに関する心理学的な知見をわかりやすく紹介することを目的としています。後者はその名前の通り高校生に読んでもらうことを目的としたコーナーです。ちょうど,2022年度からの学習指導要領の改訂により,公民科「倫理」の中に心理学の内容が今まで以上に導入されたことに合わせての開始となりました。また同時期にスタートした「Keeping fresh eyes 心理学研究最先端」もこの流れの中で「日本心理学会若手の会」の皆さんに依頼して誕生したコーナーです。以前からあった「私の出前授業」も,ここしばらくは日本心理学会が各地で開催していた「高校生のための心理学講座」の報告が続いていたのですが,高校への出前授業が得意な先生方による実際の出前授業の紹介に戻りました。このコーナーも心理学の面白さをわかりやすく伝える役割を果たしてくれると思います。これらの新コーナーの大筋だけ決めて,後は片山現編集委員長にお任せしました。

自分が編集委員長でなくなってからも『心理学ワールド』は楽しみにしています。中でもこれらの新しいコーナーは真っ先に読んでいます。これはいいな,これは楽しいな,という記事がたくさんあります。せっかくの楽しく有益な記事ですので,ぜひ高校生をはじめ心理学に興味をもつ多くの「社外」の皆さんに届いてほしいと思います。

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